新ジャンル「FFライトウェイトスポーツ」を開拓
3世代にわたって生産されたホンダ「CR-X」は、それぞれの年代で正式車名が異なるという珍しい車種です。1983年に発売された初代は「バラードスポーツCR-X」、1987年発売の2代目は「CR-X」。そして1992年発売の3代目には「CR-Xデルソル」と名付けられました。パワーがなくても楽しめる、軽量コンパクトな車体がもたらす走行性能。それを、「FFライトウェイトスポーツ」と表現し、ホンダは新しいジャンルを1980年代前半に提案したのでした。今回は、バラードスポーツCR-Xに乗る“よかろうもん”さんに話を聞きました。
Siグレードは、VTECの元祖となった1600ccのZC型搭載
2024年10月6日(日)に福岡県にあるあまぎ水の文化村で開催された「九州テンロク・ミーティング」で、大宮ナンバーのホンダ「バラードスポーツCR-X」を発見した。1000km以上もの距離を本当にこのクルマで走ってきたのか? いやいや、きっとフェリーだろう。オーナーは一体どんな方なのだろう……という興味があって声をかけたのが、“よかろうもん”さんだった。
「今は埼玉に住んでいますが、福岡県久留米市の出身なのです。今回こういうイベントがあると聞いて、里帰りと仕事も兼ねて埼玉から自走でやって来ました。出発は4日(金)のお昼前で、ちょっと寄り道をしたり、休憩をしながら土曜日の朝にこちらに到着しました。この会場付近にはよくドライブに来ていたので、懐かしいですね」
じつは、埼玉で自動車関連の仕事を営んでいることもあり、ホンダ車に関しての知識は豊富。若かりし頃に久留米駅前のロータリーから走り去るバラードスポーツCR-Xを見て、カッコいい! と思ったことが、その後ホンダベルノ店へ就職することになったきっかけでもあったというほど、ホンダ車とは縁が深い人生なのだ。
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歴代オーナーの仕様のままで、今を楽しむ
“よかろうもん”さんがこの個体を入手したのは、約1年ほど前。駅前ロータリーで見かけたあの時のクルマと同じ色の黒いバラードスポーツCR-Xだったということもあり、即決したという。入手後から今に至るまで、交換したのはハンドルとオーディオのみ。ハンドルは、もともと装着されていたナルディがボロボロだったため、同型で程度の良いものに交換。オーディオも日常使用のためにスマホとナビが使える1DINタイプに変更している。それ以外は、歴代オーナーが変更したと思われる状態で、そのまま乗り続けている。
興味深いのは、“よかろうもん”さんの愛車は後期型だが、フロントが前期仕様になっていることだ。前期型のライトは、本体そのものは固定されているが、上蓋が開閉するセミリトラクタブルで、ライトの位置がちょっと奥にある。一方の後期型は、輸出仕様と同じセミリトラ機構を排除した完全固定式。マニアの間では奥目と言われる前期型が人気なので、このクルマもそのように仕様変更されたのだろう。
「セミリトラ用のモーターもスイッチも装備されてなくて、ヘッドライトだけが交換されたようですね。でも、これだと車検が通りやすいので楽でいいです。後ろもバンパーは後期のままで、無限のマフラーは前期用が装着されているので、じつはちょっと位置が合ってないんですよね。歴代オーナーさんの好みで、少しずつ変わっていったんでしょう」
この愛車で、再び自走での帰路についた“よかろうもん”さん。取材後の様子をSNSでチェックさせてもらったが、無事埼玉に到着。エアコンレスでのロングランの燃費は約20km/Lに達した模様。生産から38年が経っても、当時から優れた燃費性能は健在だった。
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