今回MOBILA編集部は日本ミシュランタイヤが新たに世に送り出した次世代の夏タイヤ、「MICHELIN Pilot Sport 5 energy(パイロット スポーツ ファイブ エナジー)」および「MICHELIN Primacy 5 energy(プライマシー ファイブ エナジー)」を栃木の広大なテストコースでインプレッションする機会を得たのでここにレポートする。ミシュランが提示する次世代プレミアムタイヤの実力を徹底的に検証したい。
今年初頭の発表以来、自動車業界から熱い視線を集めているこの両モデル。日本自動車タイヤ協会(JATMA)のラベリング制度において転がり抵抗性能の最高グレードである「AAA」を獲得し、驚異的な低燃費・低電費性能を誇りながらも、本来相反する要素であるスポーツ性能やプレミアムコンフォート性能を極限まで高めているというのは過去のMOBILA記事でも触れた通り折り紙付きだ。しかし今回は公道の速度域をはるかに超えるハイスピードでの性能が試される、完全クローズドコースでのテスト。果たしてミシュランの次世代プレミアムタイヤの実力は本物なのだろうか。
環境性能は「差別化要因」から「市場参入案件」へ
試乗の前に、まずはミシュランが今回の「energy」シリーズに込めた確固たる哲学に触れておきたい。現在、自動車業界は100年に1度ともいわれるの大変革期を迎えており、電動化(BEV化)の波とともに、すべてのモビリティ製品において地球環境への配慮が急務となっている。現代のタイヤ市場において、環境性能はもはや他社製品と比べるための「差別化要因」ではない。とくに環境先進国とも呼ばれるEU諸国ではビジネスを成立させ、現代の社会要請に応えるための絶対的な「市場参入案件」へとフェーズが移行しているのである。このような環境のなかミシュランが掲げているのが、製品のライフサイクル全体で環境負荷を捉え、サステナビリティを実践するという確固たるビジョンだ。原材料の調達から製造、使用、そして廃棄・リサイクルに至るまで、すべての過程において資源、二酸化炭素排出量の削減と環境負荷の低減を追求している。
しかし、それは決してタイヤとしての基本性能を犠牲にするものではない。安全性、走行性能、耐久性、環境性能の全てを高い次元で実現すること。これこそが、ミシュランが提唱する「トータルパフォーマンス」という考え方である。彼らのタイヤづくりの根底には、「環境も、走りも、妥協しない」という一切の妥協を排した開発プロセスが存在するのだ。そもそも、サステナビリティ、耐摩耗性能とロングライフはミシュランのDNAとも呼べるものである。長く安全に使い続けられるタイヤをつくること自体が、廃棄されるタイヤの数を減らし、資源の無駄を省き、結果として地球環境を守ることにつながる。環境負荷の低減と、ドライバーが求める走りの歓びを両立させるこの真摯な姿勢こそ、次世代を担うトップタイヤメーカーの使命と言えるだろう。
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次世代を担う電動車とのマッチングを試す4つの走行メニュー
今回のテスト車両として用意されたのは、トヨタのハイブリッドカーを代表する「プリウス」と、同社のバッテリーEV(BEV)である「bZ4X」の2車種である。どちらも優れた環境性能と高い静粛性を持ち、力強いモーター駆動によるトルクフルな走りが特徴の最新モビリティだ。しかし、実はこれらの電動車はバッテリーを搭載することで車重が増加し、タイヤにかかる負荷が大きく、さらにはエンジンノイズがないためロードノイズが目立ちやすいという側面も。これらは、最新低燃費タイヤのポテンシャルを丸裸にするための最適な試金石とも言える。
今回用意されたテストプログラムは多岐にわたった。高速度域で高負荷を与え、応答性や安定性を試す「高速スラローム」、タイヤの剛性や高速巡航時の安定性が問われる「バンク走行」、そしてミシュランがとくに自信を見せる「ウェットハンドリング」および「ウェットブレーキング」という4つのセクションが待ち受けている。
今回は高速度域でのウェット走行などを徹底的にテストする。
今回のテスト車両であるbZ4Xとプリウス。
重量・パワーがあるHEVやBEVが普及し、タイヤに求められる性能は年々上がっている。「ドライ路面のような不安感のない走行感覚」に驚愕
重量・パワーがあるHEVやBEVが普及し、タイヤに求められる性能は年々上がっている。「ドライ路面のような不安感のない走行感覚」に驚愕
ドライ路面のスラロームや高速走行はステアリングを切ったときの応答性能やピタリとロールが止まる、電動車とのマッチングに舌を巻いた。しかし我々MOBILA編集部が最も感心したのはスプリンクラーによって路面を水浸しにしたウェット路面でのテスト結果だった。
まず、ウェットハンドリングのセクションでは、ステアリングを握る手が驚きに包まれた。水膜が張った路面に車両を飛び込ませ、コーナーへ進入していく際も、まるでドライ路面のような不安感のない走行感覚が得られたのだ。通常、転がり抵抗性能が「AAA」のエコタイヤと呼ばれるカテゴリーの製品は、省燃費性能に優れる反面、転がり抵抗を低減させるためにコンパウンドが硬めになりがちで、濡れた路面でのグリップや接地感に不安を覚えることが多い。しかし、この「Pilot Sport 5 energy」と「Primacy 5 energy」はともに、路面をしっかりと掴む豊かな接地感としなやかさを備えており、ドライバーが狙ったラインを正確にトレースすることができた。ステアリングから伝わるインフォメーションもドライ路面と遜色ない感覚で、安心感を持ってアクセルを踏み込むことが可能であった。大容量バッテリーを搭載し重量がありながら、強大なトルクを持つ電動車でも一切滑り出すような感覚がなく走行できたのは驚きだ。
続くウェットブレーキングテストでは、その優位性がさらに明確なデータとして表れた。比較用に用意された参考タイヤに比べ、圧倒的に短い制動距離でピタリと停車できたのである。80km/hからのフルブレーキングにおいて、ブレーキペダルを踏み込んだ瞬間にタイヤが路面に食いつき、力強く減速していくフィーリングは頼もしさそのものであった。
ウェット路面をハイペースで振り回しても安定した走行ができ、不安が無かった。
こうした環境で気にせず思いっきりタイヤの性能を試せるのはクローズドコースならでは。
わざとコーナーの立ち上がりでアクセルを踏み込むような事をしても滑り出すことは一切無かった。摩耗しても落ちない性能=真のサステナビリティ
さらに驚かされたのは、あらかじめトレッド面を削り、摩耗状態を再現したタイヤでのテストだ。通常、溝が減ったタイヤは排水性が著しく低下し、制動距離は新品時と比べて大幅に伸びてしまうのが物理的な常識だ。しかし今回のテストでは、摩耗後のタイヤであっても、新品時と大きく遜色がない性能を得られたのである。これは、摩耗が進んでも排水のための溝の面積が維持される独自のトレッドパターン設計や、最新世代のコンパウンド技術が遺憾なく効果を発揮している証拠である。ミシュランが謳う「最後まで続く性能」が、単なるカタログスペックの文言ではなく、現実の路面における明確な事実であることが証明された瞬間であった。安全性が長く続くということは、タイヤを本来の寿命までしっかりと使い切れるということであり、これこそがユーザーにとって最も身近な環境貢献活動となる。
ほとんどスリップサインが露出した状態に加工されたPrimacy 5 energy
ハイスピードでウェット路面に突入する
しっかりとグリップし、新品と遜色ない距離で停車できたから驚きだ。サステナビリティは我慢ではなく、より良い選択を可能にする価値


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