2023.4.18

「止まる」をつかさどる重要保安部品・カーライフ知っ得ゼミ『クルマのブレーキ学』

ブレーキはクルマの隠れた主役

「走る・曲がる・止まる」というクルマの基本性能において、「止まる」をつかさどるブレーキ。その制動装置は、重要保安部品に位置づけられている。

 ブレーキとひと言で言っても、装置や手段はさまざまだ。代表的なところでは、まず現在の制動装置で主流となっている「ディスクブレーキ」。ローターと呼ばれる金属プレートをパッドで挟み込み、その摩擦で制動するブレーキシステムで、ほとんどのクルマで前輪に採用されている。
「ドラムブレーキ」は、円筒形のドラムの内側にあるライニングにシューを押し付けて止めるブレーキシステム。ディスクブレーキよりも安価なためコンパクトカーや軽自動車の後輪に採用されることが多く、制動力が高いことから大型車での採用率も高い。
 また、よく耳にするのが「エンジンブレーキ」と「回生ブレーキ」だ。エンジンブレーキとは、アクセルを抜くことで駆動抵抗が生じて得られるブレーキ効果のことを言う。回生ブレーキはエンジンブレーキと同様の効果で、ハイブリッド車やEV(電気自動車)のモーターを減速時に発電するときの発電抵抗がブレーキになることだ。
 メインとしての制動装置はディスクブレーキとドラムブレーキであり、エンジンブレーキと回生ブレーキは補助的なブレーキとして速度をコントロールするものだ。だが、フットブレーキを使い続けると、発生した摩擦熱によってブレーキフルードが沸騰し、ブレーキペダル操作での油圧がかからなくなってブレーキが効かなくなってしまうこともある。実際、急勾配の下り坂でフットブレーキを多用し続け、ブレーキが効かないことによる事故が多い。エンジンブレーキや回生ブレーキを使うことで、安全な走行ができるのだ。

ABS&自動ブレーキで事故が減少。それでも過信は禁物

 いまではほとんどの車両で標準装備されているABS(アンチロック・ブレーキ・システム)。ドライバーの代わりにコンピューターがブレーキのポンピング操作を行い、雨天時や積雪、路面凍結時、および急ブレーキにおけるタイヤのロックを抑え、安定した制動力を確保して危険を回避しやすくなるシステムだ。
 そして、ブレーキはさらに進化した。衝突被害軽減ブレーキ、通称「自動ブレーキ」が登場した。カメラやレーダーで前方を監視、自動車や歩行者を検知して追突の危険性が高まると、まずは音や警告灯でドライバーにブレーキ操作を促し、それでもブレーキが操作されない場合は自動的にブレーキが作動する。2021年11月以降の新型車では、自動ブレーキの標準装備が義務化された。
 ABS、自動ブレーキによって、事故の発生率は減少した。しかし、いずれもアシスト機能であり、過信は禁物。安全運転の心がけが重要なことに変わりはない。


急ブレーキなどでタイヤがロックすると、スリップしてハンドル操作が効かなくなる。ABS装着車では制動と解除を自動に繰り返すことでタイヤのロックを抑制し、ハンドル操作が可能になって危険回避につながる。

 


ブレーキの主要部品は消耗品。定期的な点検と交換がマスト

 ブレーキの主要部品は、定期交換を要する消耗品。ディスクブレーキではブレーキパッドとディスクローター、ドラムブレーキならブレーキシュー。いずれも走行距離に応じて摩耗が進む定期交換部品だ。
 交換目安は車種や走行状況で変わるが、ブレーキパッドは残量が2mmほどになる前に交換するのが望ましいとされている。ディスクローターはパッドより摩耗の進行は遅いが、摩擦熱などによってディスク表面の厚みが不均一になるため、その際は研磨して厚みを均一にする必要がある。
 また、ブレーキペダルの操作を油圧で伝える役割を担うブレーキフルードも消耗品。交換目安は2年ごとで、劣化が進むと液の色が茶色に濁ってくる。劣化したフルードは油圧がかからなくなり非常に危険だ。なお、ブレーキフルードはパッドが摩耗すると液のレベルが下がるので、パッドの減りを示すサインにもなる。フルード少なすぎると空気が混ざり、やはり油圧がかからなくなるので、残量と色は定期的に確認しよう。

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この記事を書いた人 カーグッズマガジン編集部

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