5月25日、8日間にわたる熱戦を繰り広げてきた「NTN presents ツアー・オブ・ジャパン2025」は、東京都品川区大井埠頭周回コースで最終第8ステージ、SPEEDチャンネル 東京ステージを迎えた。集団スプリントとなったレースは、リアム・ウォルシュ(シーキャッシュ・ボディラップ、オーストラリア)が見事なスプリントでステージ優勝。個人総合時間賞はアレッサンドロ・ファンチェル(JCLチーム右京、イタリア)が獲得し、初の総合優勝、チームとしては個人総合4連覇に輝いた。
大井埠頭で最終決戦、序盤からポイント賞争いが白熱
大会最終日、会場となった大井埠頭には多くの観客が詰めかけ、選手たちの最後の力走に声援を送った。朝まで雨が降ったもののスタート前にはあがり、レースは1周7.0kmの平坦な周回コースを16周する112.0km(パレード区間8.0km含む)で争われた。スタート時の気温は25℃、湿度60%と、比較的過ごしやすいコンディションとなった。
個人総合時間賞リーダージャージのアレッサンドロ・ファンチェル(JCLチーム右京、イタリア)を中心に、各賞ジャージ着用選手がスタートライン最前列に並んだ。ポイント賞は前日のAMANO相模原ステージでステージ優勝し、ポイント賞ジャージを獲得したベンジャミ・プラデス(VC福岡、スペイン)、山岳賞はニコロ・ガリッボ(JCLチーム右京、イタリア)、新人賞はマクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ、ベルギー)がそれぞれ着用。
パレード走行の後、リアルスタートが切られると、最大の注目は個人総合ポイント賞争い。前日終了時点でトップのプラデスを、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)が3ポイント差、マーク・スチュワート(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス)が5ポイント差で追う大接戦となっていた。また、総合3位のベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア)と総合4位のスチュワートのタイム差は13秒と、総合表彰台争いも熾烈を極めた。
この日は3周目、8周目、12周目に中間スプリントポイントが設定。1回目の中間スプリントは岡が1着で通過し、ポイントリーダーに浮上。2回目の中間スプリントは、ダイボールの総合3位を守りたいヴィクトワール広島の孫崎大樹が1着、スチュワートが2着、岡が3着で通過。
逃げと追走の攻防、そして集団スプリントへ
レース中盤、12周目に集団から今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)、渡辺一気(日本ナショナルチーム)、ホセビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ、スペイン)、宇田川塁(愛三工業レーシングチーム)、ウィル・ヒース(シーキャッシュ・ボディラップ)の5名がアタック。一時10秒強ほどのタイム差がついたが、この周の終わりには中間スプリントが控えていたこともあり、集団が吸収。
残り4周となった12周目完了時の中間スプリントポイントは、再び孫崎が1着、スチュワートが2着、岡が3着で通過。岡がポイント賞獲得を決定的なものとした。
14周目に入るところで集団から織田聖(マトリックスパワータグ)、山田拓海(シマノレーシング)、レオン・ピカール(チームブッファーズ・ジェスチョンドパトリモワンヌ、フランス)、ディラン・ホプキンス(ルージャイ・インシュアランス、オーストラリア)、アラステア・クリスティージョンストン(シーキャッシュ・ボディラップ、オーストラリア)の5名がアタック。クリスティージョンストンはチームに強力なスプリンターがいるためローテーションには加わらない。集団とのタイム差は10秒ほどで進んだ。ファイナルラップに入る手前でホプキンスがアタックするも、ファイナルラップで吸収された。
吸収後には金子宗平(日本ナショナルチーム)のアタックなどもあったが、全て吸収し、勝負は大集団でのゴールスプリントへ。
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ウォルシュがスプリント制す!JCLファンチェルが初の総合V
最終ストレート、窪木一茂(愛三工業レーシングチーム)のリードアウトから残り250mで岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が発射。その後ろに中井唯晶(シマノレーシング)が付ける。そして、残り150mでリアム・ウォルシュ(シーキャッシュ・ボディラップ、オーストラリア)が中井の後ろから発射。力強いスプリントでそのまま後続を寄せ付けず、見事なステージ優勝を飾った。
オーストラリア・ブリスベン出身のウォルシュは23歳。トラック競技でも活躍し、昨年はスクラッチとオムニアムのオーストラリアチャンピオンに輝いている。2023年にチームブリッジレーンに加入し、オセアニア選手権ロードレースで優勝。2024年にはパリ〜トロアで優勝。チームブリッジレーン解散後、今シーズンよりシーキャッシュ・ボディラップに加入した。来週末、伊豆ベロドロームで行われるジャパントラックカップにも出場予定だ。
2位にはチームメイトのキャメロン・スコット(オーストラリア)が入り、シーキャッシュ・ボディラップがワンツーフィニッシュを達成。3位にはアンドレア・ダマト(JCLチーム右京、イタリア)が入った。
個人総合時間賞は、メイン集団でフィニッシュしたファンチェルが守り抜き、初の総合優勝に輝いた。
各賞ジャージの行方と選手コメント
ステージ優勝のウォルシュは、「本当に大きな意味のある勝利だ。チームとして今週ずっとハードワークしてきたし、何度も惜しい場面があった。最終日にチームのために仕事をこなし、それを実現できたことは素晴らしいし、とても嬉しい」と喜びを爆発させた。
個人総合時間賞を獲得したファンチェルは、「最高の気分だ。ハードな1週間だったし、今日が最終ステージ。とにかくありがとう。このジャージを着ることができて本当に幸せだ」と、安堵の表情を見せた。
ポイント賞は岡が獲得。「8日間激しい戦いで、京都ステージでステージ優勝することができた。その後、総合では遅れてしまったが、ポイント賞に望みを託して今日まで戦ってきた。最終日に宇都宮からもバスツアーでたくさんのサポーターが応援に来てくれている中で、こうして表彰台に立つことができて本当に嬉しい」と、ファンへの感謝を述べた。
山岳賞はガリッボが獲得。「このレースで勝つために日本に来た。最終日にこの赤いジャージを着ることができて最高だ。特別な気持ちだ」と語った。
新人賞はプラスが獲得。「昨日はかなり激しく落車して、レースを続けられるか分からなかった。でも、ジャージを持っているからには、それを守るために全力を尽くしたかった。痛みはあったが、より深くペダルを踏むことができた。このジャージを獲得できて本当に嬉しい」と、苦難を乗り越えての受賞を喜んだ。
団体総合時間賞はJCLチーム右京が獲得。RTA賞(将来有望なU23日本人選手に贈られる賞)は、ステージ12位に入った望月蓮(チームブッファーズ・ジェスチョンドパトリモワンヌ)が受賞した。浅田顕プロジェクトマネージャーは、「望月選手はまだ18歳。京都ステージで落車し、タイムアウトぎりぎりで完走し、8日間走り切った。プロを目指し単身フランスのクラブチームに所属している。異国の地で言葉も食事も違う環境に順応し、3年目でようやく成績が出始める。その長い道のりを選び、まっすぐに進んでいる彼にこの賞を与えたい」と、その挑戦を称えた。
そして、今大会新設された日本人最優秀ライダー賞は、総合10位に入った金子宗平(日本ナショナルチーム)が獲得。「初めての8日間ステージレースだったが、疲れていく反面、調子は上がっていった。チームも日に日にチーム力が増し、サポートのおかげで目標としていた総合10位以内を守ることができて嬉しい。今年の目標の一つは来月の全日本選手権。昨年ロード2位で優勝を逃したので、今年は優勝を目指して頑張りたい」と、今後の目標を語った。
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ツアー・オブ・ジャパン2025閉幕、熱戦の記憶は未来へ
8日間にわたる熱戦を繰り広げてきたツアー・オブ・ジャパン2025は、この東京ステージをもって閉幕。JCLチーム右京の圧倒的な強さが際立った大会となったが、各ステージで繰り広げられたドラマ、そして若手選手たちの活躍は、日本のサイクルロードレース界の未来への期待を抱かせるものとなった。
第8ステージ リザルト
1位 リアム・ウォルシュ(シーキャッシュ・ボディラップ、オーストラリア) 2h07m40s
2位 キャメロン・スコット(シーキャッシュ・ボディラップ、オーストラリア)
3位 アンドレア・ダマト(JCLチーム右京、イタリア)
4位 岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
5位 中井唯晶(シマノレーシング)
6位 ベンジャミ・プラデス(VC福岡、スペイン)
7位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
8位 メワエル・ギルマイ(ワンティ・NIPPO・リユーズ、エリトリア)
9位 ジョルジェ・ジュリッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、セルビア)
10位 ジャーメイン・ツェムケ(レンベ・ラド・ネット、ドイツ)
個人総合成績
1位 アレッサンドロ・ファンチェル(JCLチーム右京、イタリア) 18h39m57s
2位 シモーネ・ラッカーニ(JCLチーム右京、イタリア) +21s
3位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) +1m09s
4位 マーク・スチュワート(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス) +1m21s
5位 マティアス・ブレンホイ(トレンガヌサイクリングチーム、デンマーク) +1m54s
6位 レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島、ベネズエラ) +2m07s
7位 ヨハネス・アダミエツ(レンベ・ラド・ネット、ドイツ) +2m46s
8位 アドネ・ファンエンヘレン(トレンガヌサイクリングチーム、オランダ) +2m51s
9位 マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ、ベルギー) +3m04s
10位 金子宗平(日本ナショナルチーム) +3m25s
ポイント賞(ブルージャージ)
岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
山岳賞(レッドジャージ)
ニコロ・ガリッボ(JCLチーム右京、イタリア)
新人賞(ホワイトジャージ)
マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ、ベルギー)
団体総合時間賞
JCLチーム右京
RTA賞
望月蓮(チームブッファーズ・ジェスチョンドパトリモワンヌ)
日本人最優秀ライダー賞
金子宗平(日本ナショナルチーム)
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