20㎏を超えるビンナガ(ビンチョウ)や数十kgのキハダにも出会えるトンジギ。夢はあるが、重量級のジグを果てしなくシャクるため体力と根気が欠かせない。そんな問題をすべて解決してくれるのが電動ジギング。今回、この釣り方にフォーカスし、三重県熊野灘での実釣と現地の船長が教えてくれた虎の巻について紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版編集部・五井)
トンジギやマグロジギングはハード
夢は大きいが肉体的な負担も大きいトンジギをはじめとしたマグロジギング。すでに楽しんでいる皆さんは痛感していることだが、これから始める人のために、必要な覚悟について少し触れたい。

ジグが重い
トンジギの本場、熊野灘を例に挙げると200~600gのジグが使われ、メインは400g。状況が許せば200~250gも使うが、風と潮流が強烈な日は500~600gが必要になる。
ジャークする距離が長い
水深50~130mぐらいの中層を狙う釣りであり、このうち垂直幅で30~40mの範囲を船長のアドバイスに基づいて探るが、船が流れてラインが斜めになると、実際は80mくらいの距離をジャークすることになる。
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回収が疲れる
タナボケやジグがアクションしにくくなるのを防ぐため、200m超までラインが出たら回収するのが適切。400gのジグを引きずってこの距離を巻くだけでもしんどいが、これを日に何十回とくり返すので覚悟しなければならない。
船酔い対策は万全に
外洋の波長の長いウネリは酔いやすい。加えてジグがタナから外れないようラインのマーカーを逐一チェックしながらジグを沈め、ジャークすることになる。
揺れる船上で手元をじっと見ていると…はい、酔います。寝不足と暴飲暴食はやめよう。

何だか大変そうだが、その山を越えた先にはエキサイティングな世界が待っている。年にもよるが、10kg前後がレギュラーサイズで、ビッグなキハダや脂ノリノリのでっかいカツオがきたりする。
電動リールによる電動ジギング
しんどいトンジギのオイシイ部分だけゲットできる方法がある。それが、電動リールを使った電動ジギング。実際にトンジギを何年もやっている人には電動ユーザーも多い。それでは、そのメリットについて実釣を踏まえ紹介していこう。

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志摩半島沖で電動トンジギ実釣
熊野灘を訪れたのは2月の下旬。乗船したのは三重県志摩市の浜島から出船しているフィッシングビレッジりなちゃん。

電動リールのバッテリー
実釣を担当するのは電動リール用バッテリーでお馴染みのビーエムオージャパンの浦野さん。電動リールはビーストマスターEJの2000番。
ハードな釣りゆえ、リールの電源には同社が誇るパワーゲーム用バッテリー「リチウムイオンバッテリー13.2Ah」を用いた。
なお、ジグはクレイジーオーシャンの「トンボジグ 400g」をメインに使用し、フックはシーズンフックの「天TEN 合金ジギングフック #2」を使用した。

開始早々ビンナガをキャッチ!
ジグは400gでスタート。「僚船でタナ100mで食った」と船長からアナウンスが入った直後、ファーストヒットが浦野さんに。
「糸出し110mまで落として、3回目のジャークで来ました」と、ロッドをホールドしながら浦野さんが応える。まさにタナを狙い撃ってのヒットだ。
即座にファイトに入ったが、電動リールはリフトも速い。残り20mほどで相手はドラグを滑らせ抵抗したが、労せずにネットインとなった。キャッチしたのは8kgほどの本命。あっという間にファーストフィッシュのビンナガをゲットした。

電動リールのファイト優位性
電動=ファイトが楽なだけではない。大型回遊魚とのファイトでは、重圧に負けて脇挟みのままのされてしまうと、ロッドの柔軟性を活かせずに首を振られてバラしたり、いいように走られてファイトが長引き、ハリ穴が広がってサヨナラという事態が起こる。
巻く作業はリールに任せ、ファイト中はロッド操作に集中でき、かつ負荷には両手で対応できる電動ジギングは、バラシ防止の面でも非常に有効だ。

巻きアワセでバラシ対策
ファーストフィッシュが上がったあと、船中でパタパタとヒットしたが、いずれもフックアウト。大きくラインが出た状態ではアワセが効きにくい。
同船の井口船長が言うには、ラインが大きく払い出している状態で食ったら、そのままアワセるのではなく即座に巻いてラインを張り、鋭くアワセるようにすべしとのこと。
ちなみに、電動リールならば、レバーをグイっとやるだけで鋭い巻きアワセができ、あとは追いアワセを入れれば完璧だ。

風波強くなり船酔い続出
釣りも中盤に差し掛かったころ、風が強くなりウネリも出てきた。船が流れるのも速くなり、あっという間に200mくらいラインが出ていく。
井口船長は、「ラインの放出角が45°なら1.4倍、60°なら2倍で計算してタナを通してくださいね」とピタゴラスの定理をもとに丁寧なアドバイスをくれる。
「ありがたや……」とマーカーを凝視しながら暗算で対応していくアングラーたち。しかし、ここに思わぬ落とし穴が……。ラインのマーカーを凝視していると、やってきたのが船酔い。高くなった波も加勢し、一人また一人と船上に横たわっていく。ついでに私もちょっと気持ち悪い……。
タナボケ&船酔い対策に
多くのPEラインのマーカーの色は50mで一周するが、例えば「3回目の青色で100m、4回目で150m」と覚えていても、巻いては出しをくり返すうちに、何回目なのかわからなくなってくる。
一方、電動リールならディスプレイを見れば一目瞭然。マーカーを凝視する必要もないので船酔いのリスクも低減できる。これって結構すごいアドバンテージだ。

ハードな中でも本命手中!
さて、半数の戦士たちが戦場、いや船上に伏すなか、一人元気な浦野さん。朝から400gをシャクリ続けて依然集中力を維持している。
そして、沈滞ムードを打ち破ったのもやっぱり元気な人だった。「140m出したところできました」と浦野さん。電動リールでグイグイ寄せ、巧みなロッドワークで揺れを吸収している。今度の獲物もスマートに捕獲。会心の一撃を船長とハイタッチで祝った。

トンジギは根気と体力がものを言うが、浦野さんはまさにこれを体現してくれた。加えて言うと、ラインの放出角度とジグの位置を数値で適切に把握し、当日一番実績のあった水深100mラインを正確に攻め続けた結果だ。

ハードな釣りには高性能バッテリー
さて、トンジギにおける電動リールの有用性を実感してもらえたと思うが、電動ジギングでは消費電力量が大きく、緩急激しい回転をリールに強いることになる。

高性能のリールに本来の力を発揮させるには、電気を送り出すバッテリーの性能が問われる。ゆえに、瞬時にしてモーターを高回転させる放電能力、高い電圧を最後まで維持できる持久力に優れたリチウムイオンバッテリーが好適となる。
ファイト時の巻き上げ力はもちろん、ジャークや先述の「鋭い巻きアワセ」はリチウムタイプの特権だ。

ちなみに、安価な鉛バッテリーは電池残量が減ってくると発揮できる電圧が急低下してリールが本来の回転力を発揮できなくなる。それに重い!3.5kgくらいある。

ジグも重いしどこまで筋トレ⁉と思ったアナタ、今回使用したリチウムイオンバッテリー13.2Ahは1.5kg。持ち運びに便利&海水から本体を守るリチウムイオンバッテリーバッグ(S)も別途販売されていて使い勝手も良好だ。
なお、リチウムイオンバッテリーについて詳しく解説した記事もあるのでぜひ参考に。

船長から聞いたトンジギのキモ
さて、最後になったが、取材を通して船長から現場発信のトンジギのキモについて聞いてきた。
ラインの巻き込み量に注意
まず、リールへのラインの巻き込み量。大型ベイトリールがメインで使用されるが、メインラインの巻き量はスプールのキャパ8分目くらいまでが良いとのこと。
大型のベイトリールにはレベルワインドが無いので、アングラーが自力でラインを均一に巻くのだが、ジャークやファイトに集中していると知らぬ間にラインが偏って巻けてしまう。
極端に偏ると盛り上がったラインとリールのフレームが接触し、巻けなくなったりファイト中に擦れて切れたりする。
「そんなおバカな話があるの?」と思うかもしれないが、こういった状況に陥る人をシーズン中に何度か見ると船長は言っていた。

ロッドの弾性を使い分ける
トンジギでは柔軟な低弾性ロッドと張りのある高弾性ロッドが用いられる。前者はジャークもファイトも楽なのが利点。
一方で、ジャークは疲れるが、高弾性のロッドによる誘いにヒットが集中する日があると井口船長は言う。低弾性ロッドと高弾性ロッドの二刀流で挑むのがベストだ。
電動リールがトンジギの強い味方
以上のようなキモがあるのだが、これらをカバーしてくれるのも電動リール。レベルワインドが装備されており、ラインの巻取りを気にせずファイトやジャークに集中できる。
また、高弾性のロッドに辛さを感じたら、巻く作業はリールに任せ両手でシャクることも可能だ。
こうしてフォーカスしてみると、電動ジギングはメリットだらけ。実際、トンジギを経験したアングラーの多くが電動リールを導入している。
さて、トンジギをマスターしたその先には、さらにエキサイティングな世界が待っている。場数を踏んで腕を磨き、ビッグな夢をつかみに行こう。

<五井貴矢/週刊つりニュース中部版編集部>
フィッシングビレッジりなちゃん/大伸丸渡船

三重県 伊勢志摩の海の魅力が満喫できる釣り船&レンタルボート店です。ほかに一泊2000円~で素泊まりできる「釣り人の宿」や、磯渡しや筏&カセも営業しており、釣り人の皆さんのニーズをトータルサポート。このほか、レンタルタックルや大型魚の入る発泡ケース(有料)もご用意しているので、手ぶら釣行も可能です。
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