今年もトンボの季節がやって来た。トンボといっても赤とんぼやオニヤンマの話ではない。トンボマグロ(標準和名ビンナガ)のことだ。一般的にはビンチョウの名で知れ渡っているが、胸ビレが長く水中で泳ぐ姿がトンボに見えることから、トンボと呼ばれることも多い。このトンボをジギングで狙うからトンジギ。今回はこのトンジギについて解説したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
トンジギ(トンボジギング)
数年前から人気に火がついたトンジギ。ターゲットはマグロ類でも比較的釣りやすいとされているビンチョウ(ビンナガ)だ。回転寿司で見かけるビントロがそれ。クロマグロやメバチに比べて安価で、スーパーでもリーズナブルな値段で売られている。

このビンチョウをジギングで狙うわけだが、マグロを釣るというと何やら敷居が高いと感じてしまう人も多いだろう。ところがどっこい、意外にお手軽に釣れてしまうのだ。
タックルはブリを想定したもので十分だし、キハダに比べればパワーもスピードも数段劣る。専用品として用意するとすれば、ジグだろうか。回遊レンジが深ければ150mを超えることもあることに加え、船をドテラ流しにするため、300g以上の重量級のジグとそれに合わせるフックが必要になるぐらいだ。

このビンチョウだが、10kg前後の小型を小トン、15kg前後を中トン、20kg前後になって繁殖能力が備わってくる個体をタネトンと呼ぶ。
主なフィールドは三重県・志摩沖をはじめとする熊野灘一帯。愛知、三重の各港から遊漁船が出ているが、愛知県の知多半島からでフィールドまで2時間以上。三重県・鳥羽エリアからで1時間~1時間半。南伊勢エリアからで1時間といったところが目安だろう。
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トンジギのシーズン
トンジギのシーズンは11月終わりごろから始まる。シーズン初期、絶対数は少ないもののくればタネトン、小さくても中トン以上が望める。だが一日シャクり続けてもカスリもしないことも多く、ギャンブル性の高い釣りといえる。
年が明けると、10kg前後の小トンの群れが大挙して回遊し、小型ながら数釣りが楽しめる。小型といっても10kg前後のマグロなので、50リッタークーラーなら2匹も釣れば満タンになってしまう。いい日に当たれば1人で2ケタ釣果なんてこともある。
この数釣りシーズンは4月半ばごろまで続き、下旬にはシーズン終了を迎える。
今季の展望
ビンチョウは回遊魚だけに、年によるムラが激しいのは避けられない。今季に限っていえば、あまり芳しくない状況が続いている。初期はギャンブル性が高いとはいえ、船中完全ボウズといった日も多く、絶対数の少なさがうかがえた。

実は年が明けて正月2日に志摩沖へ出撃したのだが、これまた船中で誰もカスリもしない完全試合を達成。昨年の正月にはすでに小トンが多く上がっていたことを考えれば、遅れているのか、はたまたハズレ年なのか。まだ判断はできないが、2月に入れば状況が上向くと信じたい。
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トンジギのタックル
前述の通り、青物タックルの流用が効く。ブリを想定したジギングロッドだが、ベイトタックルがお勧めだ。理由は使うジグが300g以上の重量級であることと、この釣りに速い誘いが必要ないことが挙げられる。もちろんスピニングタックルでもいいが、体にかかる負担がベイトタックルよりもはるかにきつい。

リール
ベイトならシマノ2000番以上。PEライン3号を300m以上負けることが必須条件だ。スピニングならパワーギアタイプで、シマノ8000番クラス。いずれもPEライン4号を300m巻ける。
リーダー
フロロカーボンラインかナイロンライン60~80lb。号数でいえば15~20号。長さは6~7m。PEラインとリーダーは、FGノットなど摩擦系ノットでしっかり締め込んで結束しておこう。
ジグ
前述した通り300g以上の重量級を使用する。主に使われているのは、セミロングやロングジグ。なぜロングかと聞かれたら、引き重りしないから。正直ビンチョウという魚、あまりジグを選ぶ方ではない。

言い方を変えればジグは、ビンチョウの泳層に届けられれば何でもいいと言ってもいい。そして重量級だからこそ、長時間シャクっていられる引き重りのしないロングジグなのだ。
もちろん同じ300g以上のスロー系やショート系でも、十分釣果は見込める。だが実際海中に投じてみれば分かるが、その引き重りたるやハンパではない。
フック
フロントに1本か2本が基本。シャクっているときに、ジグ本体を抱かないことが絶対条件だ。上げるたびにフックがジグを抱いていれば、ジグとフックのバランスが悪いということ。どちらかを替えるようにしよう。

テールにフックを付ける人も多いが、フロントに掛かった場合、テールフックが顔や胴に刺さってジグが横向きになり、抵抗で強烈に重くなる。魚が大きくなればなおさら負担が増えるため、フックはフロントだけにしておきたい。
フックは自作もできるが、完成品が多く販売されているのでそれを使えば間違いない。商品名を上げると、ヴァンフックのジゲングリッピー7/0、カルティバのミディアムブルーチェイサー9/0、ステキ針のファイター幻アシストシングル4/0など。
ドテラ流し
さて実践編だが、トンジギでは船をドテラ流しにする。ドテラ流しとはタイラバやティップランにも用いられる流し方で、船を風や潮に任せて横流しにするためアングラーは風上側の片舷に並んで釣るのが一般的だ。
アングラーからすれば船は背中方向に流れていくため、ジグを投下すればラインは前方に払い出されていく。この払い出される角度によって、ジグの重さを決める。風が強ければ400~450g、逆に風がなければ200~250gまで落とすこともある。

ドテラ流しの利点としては、何といっても広範囲を探れること。根に着く魚をピンポイントに狙うわけではなく、広大な大海原を常に泳ぎ続けるビンチョウを狙うにはコレしかないという流し方なのだ。
魚探に反応があれば、船長から「何m~何mの間を狙ってください」というアナウンスがあるので、そのレンジまでPEラインラインのカラーを見ながらジグを落とす。ただし、ラインが斜めに払い出されているので、実際出したライン長よりも多めに出す。例えば100mまで落としたいのであれば、ラインの角度にもよるが130mぐらいはラインを出したい。
誘いから取り込みまで
誘いのアクションは、青物のようにガシガシとしゃかりきにシャクる必要はない。ゆったりと持ち上げてわずかにフォールを入れるような感覚で十分。ビンチョウは鼻先をジグが通れば、高確率で食ってくる。

任意のレンジを探ったら再びジグを落とすが、最初よりも深く落としてもいいし、浅いレンジで止めて誘い直してもいい。魚は常に動いている。同じレンジだけではなく、横にも縦にも広く探ることを心がけよう。
アタリはドスンとロッドが止められる。しっかりアワセを入れて、リフトを開始しよう。小トン程度であればさほど走らないし、ラインを出されても止まればゴリゴリ巻いてくればいい。中トン以上になると、テンションを抜かないようにポンピングで浮かせてくる。

魚が浮いてくれば、船長がタモと入れるかギャフを打ってくれる。その後、船によっては船長がエラと内蔵を抜いて氷間と呼ばれる船の収納スペースか、各自のクーラーボックスか船の氷間に入れてくれる。エラワタ抜きは自分で行う船もあるので、事前に確認して場合によってはナイフや包丁を持参しよう。
アフターフィッシングも魅力
マグロ類の中では、ツナ缶の材料にもされ比較的格下の部類に入るビンチョウだが、どうしてどうして、その味がなかなかのもの。しっかり寝かせればねっとりした甘味が増し、刺し身は抜群のうまさ。フライやマグロカツなどの揚げ物にしてもおいしい。

身質が柔らかいため、ユッケなんかにしても最高にうまい。脂分が少ないと言われるが、10kgを超えるとしっかりとトロの部分も味わえる。豪快なパワーファイトだけでなく、アフターフィッシングもしっかり楽しんでほしい。
最後に
ここ数年で一気に人気が出たトンジギ。ビンチョウ自体は昔から水揚げがあったので、多くいたのだろうが、ようやく釣りとして確立してきた感じだ。小さくてもマグロはマグロ、近海ビッグゲームというべきトンジギにぜひ挑戦してほしい。

<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
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