近年新たなエギングフィールドとして人気のイカダ。場所取りの必要もなく、1人でも仲間同士でものんびり楽しめるのが魅力だ。今回はそんなイカダエギングの魅力や攻略法を、週刊つりニュース中部版APC東川久美子さん親子に同行し、迫間浦釣行の様子を交えて紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
迫間浦のイカダでエギング釣行
今回の釣行先に選んだのは、三重県・南伊勢町の迫間浦。迫間浦のイカダといえばクロダイのカカリ釣りのメッカだが、ここ10年ほどはアオリイカの好場としても知られるようになった。
お世話になったのは老舗の宝成渡船。迫間浦で長年イカダへの渡船を営んでおり、当然ながらクロダイの実績はピカイチ。だが近年はこの時期、アオリイカ狙いで訪れるエギングアングラーも多いようだ。
今年は開幕が遅れ気味
今年の迫間浦のアオリイカだが、例年に比べて半月~1カ月ほど遅れている感じだ。五ケ所湾内やその沖のティップランでは、9月半ばから釣果が聞かれていたが、イカダでは今ひとつの状況が続いていた。
だが宝成渡船で行われていたAKIO杯が9月いっぱいで終了し、それを待っていたかのように釣果が上がりだした。例年であれば、9月半ばにはそこそこの釣果が聞かれるはずなのだが、今年はそれがなく船長もやきもきしていたようだ。
全天候型の釣り場
迫間浦の特徴だが、南伊勢町の海岸線はリアス式で、その一角を担う五ケ所湾の奥に位置している。周囲を山々に囲まれており、海上は常に穏やかで全天候型の釣り場といってもいい。
ただし山々のせいで風が回って、吹いてくる方向がコロコロ変わるため釣りにくい一面も。

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親子女性アングラーが初挑戦
釣行日は10月12日。今回同行させてもらった東川さんは、普段若狭湾や越前方面に釣行することが多く、ほとんどが陸っぱり。本紙に何度も釣行記を掲載しているが、アオリイカだけではなくケンサキイカやヤリイカなども陸っぱりで釣果を上げている腕きき女性エギンガーだ。ただし、イカダは初挑戦。陸っぱりでのメソッドが通用するのかが見どころだ。
娘の姫璃歌(きりか)さんは、以前は陸っぱりに毎週同行していたそうなのだが、仕事の都合でここ2年はご無沙汰。もちろんイカダは初めてだが、それ以前に久しぶりの釣りに心を躍らせているようだ。
陸っぱりとの違い
イカダエギングの最大の魅力は、やはり陸っぱりからは狙えないポイントをダイレクトに攻められること。毎日のようにエギを見せられている堤防周りのイカと違ってスレておらず、素直にエギに反応してくれる。前文の通り場所取りの必要もなく、仲間内で自由に楽しめることも大きい。
ただし、陸っぱりとの相違点も多い。沖に向かって投げる陸っぱりと違い、岸に向かって投げるので、エギの着水点が最浅部になる。そこからシャクってくれば、エギが手前に寄ってくるほど深くなるのだ。
タックルは陸っぱり用をそのまま流用
出船は午前5時半。タックルを船に積み込み、10分もかからずにイカダに到着した。荷物を下ろして早々に準備に取りかかる2人。タックルは陸っぱりで使っているものを、そのまま流用する。
ボートエギングではティップランが全盛だが、専用のタックルが必要となる。イカダではキャスティングメインなので、飛距離が出る陸っぱりタックルが最適なのだ。
期待満載の朝マヅメはまさかの空振り
イカダに渡った時点ではまだ薄暗かったが、タックルの準備を終わるころには白々と夜が明けてきた。いよいよ最大のチャンスである朝マヅメの始まりだ。
イカダでは、渡った直後が最大のチャンスとなる。アオリイカのフィーディングタイムであることに加え、エギを見慣れていないウブなアオリイカがいれば、何のためらいもなくエギを抱きにくる。
そして2人並んで陸に向けてフルキャスト。東川さんも姫璃歌さんもエギは2.5号だ。しっかりボトムまでエギを沈めた後、ややストロークの大きめのシャクリを入れて誘っていく。

だが、一向にアタリはない。当日は朝イチこそ冷え込んだものの、晴天微風で絶好の釣り日和。スルスルと海中に引き込まれていくPEラインを凝視する2人。アタリがあれば必ず分かるはずだが、ヒットコールは上がらないまま周囲は完全に明るくなった。

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秘密兵器は塩漬けのササミ
期待の朝の時合いに無反応だったことで、一気に雲行きが怪しくなってきたが、ここで東川さんの秘密兵器が登場。取り出したのは、なんと鶏のササミの塩漬けだ。見せてもらうと、ほんのりと覚えのある香り。
「コレ、ニンニク入ってます?」と聞くと、「ハイ!」と笑顔の東川さん。このササミをエギにワイヤーで巻きつけるのだそうだ。いや、イカのエサにするより人間が食べた方が…と思うほどうまそうなにおいだ。よくヤリイカやスルメイカのイカメタルで、エサ巻きスッテにササミを巻く人は多いが、アオリイカにも効くのだろうか…。
この疑問をぶつけてみると、今年の春にキロアップをこのササミ巻きのエギで仕留めたらしい。それ以外でもアオリイカの実績は十分で、もちろんヤリイカやケンサキにも有効とのこと。

待望の300gアオリイカ登場
東川さんはササミ巻き、姫璃歌さんは通常のエギでキャストを続ける。そして待望のファーストヒットは姫璃歌さん。回収してきたエギの後ろに、待望のアオリイカの姿が見えた。
すかさずフォール&ステイ。すると一気にエギをひったくった同時にロッドが弧を描いた。抜き上げられたのは、目測300g級のアオリイカ。久しぶりのアオリイカに姫璃歌さんは大喜び。だが釣れ方からすると、かなり活性は高いはずだ。

アオリイカ連打
そんなことを考えていると、10分後に東川さんに待望のヒット。ゆっくりと抜き上げたのは、ほんの少しサイズアップの400g級。ようやくのヒットに胸をなでおろした瞬間だった。

エギのレンジキープに苦戦
今がチャンスとばかりに追加を狙って、2人ともマシンガンキャスト。だがどうにも後が続かない。見ていると、やはり陸っぱりエギングとの違いにかなり苦労しているようだ。
前述したが、陸に向かって投げるイカダではシャクって手前にエギが寄るほど水深は深くなる。着水点が水深3mだとすると、3段シャクリを入れてフォールさせると、そこは水深5mになっている。
シャクった後はラインを出さずに長めにカーブフォールさせるか、ある程度カーブフォールさせた後ラインを出して、再び底を取るのがセオリー。活性が高いときはイカも中層以浅まで浮いてエギを活発に追うが、基本的にヒットレンジは底から3m以内と考えていい。
この3m以内にエギをキープさせることが、釣果を上げるキモといえるだろう。風もなく潮も緩い状態であれば、ノーマルのエギでも十分だが、少しでも風があったりしてラインがフケるようであれば、イトオモリやマスクシンカーなどでしっかりウェイトアップさせて、確実に底を取れるようにしておきたい。

コツをつかんで連発
このことを2人に伝えると、コツをつかんだ東川さんがしっかり応えてくれて300g級をキャッチ。ここからイカパンチのみやアワせ損ねもあったが、9時までに5匹のアオリイカがスカリに入った。
サイズは300~400gで、この時期のアベレージサイズといったところだろう。秋が深まればサイズアップし、昨年は11月にはキロアップの釣果もちらほら聞かれたので、これからが楽しみだ。
足元で久々のヒット
ここで羽根船長から電話があり、「イカダ変わってみるか」と提案があった。アタリが止まったこともあり、2つ返事でOKし荷物をまとめる。エギングは荷物がコンパクトなのがいい。
次に渡ったさらに湾奥のイカダでは、以外にも反応が薄い。開幕が遅れていただけに、まだ湾の奥までイカが入っていないかもしれない。
それでも1匹を追加した後は、再び移動。お次は隣に釣り堀があるイカダだ。近くの露岩近くのブレイクを丹念に攻めるが、全く反応ない。
そんなとき、手前まできたエギを底まで沈めて何気なくリフト&フォールで探っていた姫璃歌さんのロッドが曲がった。ここまで沈黙が続いていた姫璃歌さんだが、久しぶりのヒットに真剣な表情で抜き上げる。ややサイズダウンしたが、立派なアオリイカだ。
そう、イカダでは足元も見逃せない好ポイントとなる。ブレイクからエギを追ってきたヤツか、元々着いていたヤツかは不明だが、手前までエギが来てもすぐに回収せずに、いったん足元まで沈めて丹念に探ってみると思わぬヒットを得られることもあるのだ。

ササミ巻きは不発に
さてここで東川さんの秘密兵器のササミ巻きの効果について。結果から言えばこの日、ササミ巻きへのヒットはなかった。というのも、フグやカワハギなどの歯のある邪魔者がかなり多かったようで、ササミがすぐにボロボロにされてしまうのだ。中にはワイヤーを切っていくツワモノもいたほど。
実績は十分あるだけに今後水温が下がってきて邪魔者が少なくなってくれば、効果を発揮すると思われる。
感覚の違いに戸惑いも
そして午後1時にロッドオフ。釣果は2人でアオリイカ8匹と、まずまずだった。東川さんに感想を聞いてみると、「やはり陸っぱりとの感覚の違いが大きかったです。頭では分かっているけどいつの間にかエギが浮き上がっちゃって…」とのこと。とはいえイカダ初挑戦で、この釣果は十分すぎるといえるだろう。
日本海が閉幕する11月からは、五ケ所湾近辺のアオリイカは最盛期を迎える。数型ともに期待十分のイカダエギング、陸っぱりエギンガーの皆さんは、ぜひ一度挑戦してみてほしい。

<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
宝成渡船
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