
キック・ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグは、F1イギリスGP決勝で3位フィニッシュ。F1キャリア15年目にして初の表彰台を掴んだ。
また、来季からアウディとしてF1グリッドに並ぶこととなるザウバーとしても、2012年日本GPで小林可夢偉が3位に登って以来の表彰台。チーム代表のジョナサン・ウィートリーは、ワークス化に向けたプロジェクトが結果として徐々に実ってきたと考えている。
2022年にアウディは、新テクニカルレギュレーションが導入される2026年シーズンからの新規F1参戦を発表。スイス・ヒンウィルに拠点を置くザウバーを買収し、ドイツ・ノイブルクで独自パワーユニット開発に勤しんできた。
プロジェクト主任としてかつてフェラーリで指揮を執ったマッティア・ビノットを獲得し、チーム代表にはレッドブルでスポーティングディレクターを務めたウィートリーを引き入れた。カタールからの“オイルマネー”も獲得し、最近ではイギリス・ビスターに新たな拠点を構え、さらなる人材獲得を目指すなど体制強化を進めてきた。
ただ、母体となるザウバーは昨年、コンストラクターズランキング最下位。現行レギュレーションで後方をひた走っていたという事実はアウディのF1プロジェクトにとっての大きな懸念点であり、F1での成功において懐疑的な見方もあった。
ヒュルケンベルグとルーキーのガブリエル・ボルトレトという新しい布陣で臨んだ2025年シーズン前半も、ザウバーは開幕戦オーストラリアGPでヒュルケンベルグが雨の混乱に乗じて7位入賞を掴んだ以外、モナコGPまでポイントに手が届かない状況が続いた。
しかしスペインGPで大型アップデートを投入すると、ザウバーを取り巻く状況は一変。3戦連続入賞と好調を維持したままイギリスGPを迎え、ヒュルケンベルグが表彰台を届けたことで、ザウバーは一気にコンストラクターズランキング6番手に浮上した。
アウディのF1プロジェクトにおいて、今回の表彰台獲得が持つ意味を尋ねられたウィートリー代表は、チームの勢いを強調した上で、努力が形として表れつつあると答えた。
「チームにとって勢いがいかに重要かということは、これまでも話してきた通りだ」
「私が今回分かったのは、みんなが我々を信じ始めたということだ。我々は勢いに乗っているし、続けてパフォーマンスを発揮している。僕がチームに加わる前から、マッティアなどが注いできたハードワークが形になったと言える」
「チームとしてあるべき姿に近づくには、とても長い道のりがあるというのも事実だ。しかし、これは我々のプロジェクトにおいて大きな足がかりだ」
またウィートリー代表は、ヒュルケンベルグの好走とチームの判断力が3位表彰台を手繰り寄せたと称賛した。
雨が降ったり止んだりというシルバーストンらしい天候の下行なわれたイギリスGP決勝で、ザウバーはピット戦略を外すことなく、インターミディエイトタイヤで19番手からスタートしたヒュルケンベルグに早い段階から2セット目のインターミディエイトタイヤを投入し、上位まで押し上げることに成功した。
その後ヒュルケンベルグはコース上でアストンマーティンのランス・ストロールを交わし3番手に浮上すると、後方から迫るフェラーリのルイス・ハミルトンを引き離して3位を守りきった。レース後半、インターミディエイトタイヤからスリックタイヤへの交換をハミルトンから1周遅らせるという判断も、この結果に大きな影響を及ぼした。
「今回のニコのレースは、私がシルバーストンで見た中でも最高のモノだったし、これまで見たどのドライバーよりも素晴らしかった。表彰台を祝うというのは信じられないことだ。彼はキャリアを通して表彰台を獲得できていたはずのドライバーで、史上最も遅い初表彰台記録だと思う。彼は今回、自身の実力を見せつけ、何ひとつミスをしなかった」とウィートリー代表は言う。
「またチームはストラテジーで全ての正しい判断を下した。ステイアウトすべき時にステイアウトし、適切なタイミングでミディアムタイヤへと切り替えた。みんなをとても誇りに思う」
そして、アウディに乗るヒュルケンベルグの初F1優勝は目前だと思うか? という質問に対してウィートリー代表はその実力に太鼓判を押した。
「今回、ニコは彼に何ができるのかを示したと思う。適切なマシン、適切な状況が揃えば、勝利を掴む能力があると思う」
「彼がレースで勝てるということは間違いない」
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