2025.7.8

TRDの現場で社員でさえ「クルマのこんな動き、見たことない」と語るラリーマシンの走り

TRDの現場で社員でさえ「クルマのこんな動き、見たことない」と語るラリーマシンの走り

“リアルTRD”を体感!社内留学でレース現場に密着

TRD(Toyota Racing Development)が開発したトヨタ「ハイラックス」をベースにした競技車両「TRD Hilux MSB」で、アジアクロスカントリーラリー(AXCR)に参戦を続けている新田正直選手。その練習現場に、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD)の社員が見学する社内留学が実施されたので、今回その様子を取材することができました。

TRDの“今”を肌で感じる社内体験

モータースポーツやクルマ好きであれば、TRDの名前を聞いて説明は不要でしょう。トヨタ車のレーシングカー開発を担い、SUPER GTをはじめとするレース活動に参加しているほか、TRDブランドのカスタムパーツ企画・開発も行っています。

TRDというブランドは1976年8月に誕生しましたが、これは会社名ではありません。もともとは1954年に設立されたトヨタテクノクラフトの一部門としてスタートし、現在はTCDのひとつの部門として位置づけられています。

TCDは、トヨタテクノクラフトとモデリスタ用品の企画・販売などを行っていたトヨタモデリスタインターナショナル(1997年設立)、輸出車両向けの用品架装や特装を担っていたジェータックス(2001年設立)の3社が合併し、2018年4月1日に誕生しました。現在のTCDは規模が大きくなり、レースやラリーに直接関わったことのない社員はけっして少なくありません。

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AXCR訓練現場に“本部内留学”として参加

こうした背景もあり、今回TCDでは「本部内留学」として、AXCR参戦に向けた実践練習を見学する機会を設けました。AXCRは、タイを中心としたアジア各国を横断しながら、1週間以上、悪路を走り抜けるラリーレイド競技です。

AXCR参戦に向けた実践練習はオフロードコースで実施されます。取材した本部内留学では、ドライバーたちの本格的な走行を社員が見学・同乗体験。クロスカントリー車両の性能を体感するだけでなく、本来持つ走破性を実感する貴重な内容です。

さらに実践練習では、新田正直選手の運転する車両の助手席にTCDシニアテクニカルアドバイザーである福岡孝延氏が同乗し、実戦向けのドライビング指導を行っていました。じつは福岡氏は約40年にわたりランドクルーザーの開発に携わってきたテストドライバーで、膨大なオフロード経験と知見を持つ人物なんです。

実践練習では、ハイラックスやランドクルーザーを使い、泥地や起伏の激しい地形を走る走行練習が繰り返されました。その迫力に、見学したTCDの3人の社員たちからは驚きの声が多く上がっていました。

「泥のなかでもがく車両を間近で見て、普段のクルマの使い方とはまったく違っていて衝撃的でした。まさか自分の会社でこんなことをやっているとは……」

という声もあり、日常業務とのギャップに驚く社員も多かったようです。

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業務が異なる社員たちが語る“初TRD体験”

今回参加したTCD国内営業部特装営業室の大神田彩絵さんと上野奈都子さんは、トヨタテクノクラフトに入社して、現在は救急車の営業を担当しています。

「TRDの活動に関わったことはなく、今回は“オフロード車に乗れる”と聞いて『乗りたいです!』と即決でした。自分たちの業務とはまったく違いますが、とにかく楽しくて、ジェットコースターよりスリリングでした」

と、興奮冷めやらぬ様子で話してくれました。

2018年入社で、現在は国内用品の販促に携わるTCD国内営業部営業支援室・企画販促グループの安孫子滉司さんは

「面白そうなら何でもやってみたい」

と留学に応募して、今後はAXCR本戦への帯同やワークスチューニング(メーカー直系の4社による合同試乗会)にも参加する予定だといいます。

「じつは以前、先行試作でセルロースナノファイバーの素材開発に関わったことがありました。今回、ラリー車両に直接触れることで“あの素材がボンネットなど、こう使われていたのか”と実感できて、仕事のつながりを改めて感じました」

「もともとレースにはあまり興味がなかったので、TRDにもよく知らなかったんです。入社後に“そういう部署があるんだ”と思った程度でした。でも今回、クルマがこんな動きをするのか、こんな道を走るのかと目の当たりにして、本当にすごかった。ただそのひと言に尽きます」

そう語る安孫子さんの表情には、TRDの世界を初めて体験した新鮮な驚きと感動がにじんでいました。

社内の“知らない世界”が、新しい気づきに変わる

モータースポーツに興味がある人からすれば

「TRDを知らないなんてもったいない!」

と思うかもしれません。しかし、関心がなければその存在すら知らない、というのもリアルな話です。

だからこそ、今回のような“少し変わった留学”をきっかけに、社員同士が異なる業務への理解を深め、新たな視点を得られるとしたら、それは企業にとって大きな財産となるでしょう。

そして何より、安孫子さんのように、まったく異なる部門からTRDの世界に一歩踏み込んだ社員が今後どのように成長していくのか——その姿を見守るのが楽しみです。

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出典: https://www.automesseweb.jp/2025/07/09/1843178
この記事を書いた人 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)

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