フレッシュな布陣で開幕戦へ
シリーズで唯一学生クラスが設けられている東北660耐久レースには、福島県にキャンパスを構える日本大学工学部の自動車部が、2015年12月13日の初開催からほとんど欠かさず参戦しています。年を追うごとにドライバーも代替わりして、2025年の初戦には川井柚、井戸川隼人、高岡威の3名が出場。東北660シリーズは耐久レースに限らず若い世代の参加が多いことで知られていますが、今回の日大チームは全員が19歳と20歳という、ひときわフレッシュな顔ぶれでほかの参加者たちを驚かせました。
まさかのクラッシュ=全損!同型のボディが見つかり箱替えで復活
福島県にキャンパスを置く日本大学工学部の自動車部のマシンは以前からスズキHA23「アルト」を使用しているが、じつは2024年の最終戦は前日にクラッシュしてリタイヤ。年式が年式だけに程度のいい中古車は激減しており、ダイハツ「ミラ」などに箱替えもやむなしかと思われた。ところが偶然にも3ドアのボディを手に入れることができた。
今回の車両でHA23型アルトの部車は3台目ということで、スペアパーツはそこそこ持っているし、整備の経験も豊富。今後は運転やメンテナンスの練習台として、主に新入部員が使用することになるそうだ。
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シェイクダウンとは思えぬ快走スタート
では、当日のレースを振り返ってみよう。朝イチの練習走行では、シェイクダウンとは思えないペースで走行し、ベストラップは1分22秒501。なんと学生クラスの最速タイムだった。ドライバーのひとりである高岡はカートの経験が豊富らしく、2024年の東北660耐久レース・第2戦で鮮烈なデビューを飾り、2025年はスプリントの東北660選手権でも好成績を収めている。
予選では、東北660シリーズの常連が名を連ねる山形大学の自動車部にトップを譲ったが、1分21秒506とタイムはさらに短縮し、決勝レースでの逆転を虎視眈々と狙える2番手に付けた。とはいえ耐久レースはひとりのドライバーが速いだけでは勝てず、作戦やピット作業を含めたチームの総合力が非常に重要だ。その点も、今回はじつに上手く歯車が噛み合っていたようで、高岡だけじゃなく川井と井戸川も安定したラップを刻む。
クリーンな走りで若きドライバーが魅せた
もうひとつ感心したのは、クリーンな走りだ。舞台であるエビスサーキット東コースには、この冬に舗装のランオフエリアが作られた。もちろん本来の目的はコースアウトによる大きな事故を防ぐためだが、そこまで使ってラインを取ればコーナーのボトムスピードが上がり、結果としてタイムアップし、レースの結果に大きな影響を与えてしまう。ランオフエリアへのはみ出しは走路外走行として、いつも以上に厳しくチェックしてペナルティを取ったが、彼らは一度もペナルティを受けずにフィニッシュした。
惜しくもポールポジションの山形大学に優勝は譲ったものの、若手だけの編成かつシェイクダウンで準優勝は凄い。余談だが、決勝レース中のベストラップは1分20秒994と、予選のタイムから約0.5秒も短縮させることに成功した。ドライバーにしろマシンにしろ、伸びしろが残されている証拠だろう。
なお、東北660耐久レースの第2戦は7月20日に、福島県のリンクサーキットで開催される予定。決勝はシリーズで最長の5時間となり、登録できるドライバー数も増える。今回と同じく若手のみで戦い抜くのか、経験豊富な先輩たちが力を貸すのか?
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