
6月27日に、映画『F1/エフワン』が日本でも公開される。この映画の制作には、F1が全面的に協力。ゆえにF1の関係者も、様々な立場で映画制作をサポートした。
ピレリのモータースポーツ・ディレクターであるマリオ・イゾラも、そのひとりだった。ピレリは映画撮影用のタイヤを準備し、通常のレーシングスピードよりも低い速度で走るAPXGPのマシンの走行を可能とし、撮影を支えたのだった。
「2年前、バーレーンでのプレシーズンテストで、彼らに初めて会った時のことを覚えている」
イゾラはmotorsport.comを含む複数のメディアに対してそう語った。
「彼らはこの秘密のプロジェクトについて話してきて、『タイヤが必要なんだ』と言った」
「しかし彼らは、映画の撮影にF1マシンを使うつもりはなかった。いわばF2に近い、別のタイヤが必要だったんだ」
映画に登場するAPXGPのマシンは、メルセデスがF2マシンをベースに開発したものだ。しかしそのマシンを走らせる上で、ある問題が生じた。タイヤの温度である。撮影の際には通常よりもはるかに低速で走行するため、タイヤが発熱せず、グリップレベルが上がらなかったのだ。
「ひとつの懸念事項は、低速で撮影するということだった。F1タイヤでグリップ力を高めるには、より速く走って、タイヤにエネルギーを入れる必要があることは周知の事実だ。そこで最初のアイデアは、非常に柔らかいコンパウンドを使ったタイヤを製作し、サイドウォールに白、黄、赤と異なるラベルをつけるということだった」
「最初はこういう風にスタートした。しかしその後、通常のタイヤ、つまりF2用に近いタイヤでの問題がないことに気付いた。様々なシーンに様々なタイヤを提供したが、彼らは可能な限りリアルな映像を求めたので、良い協力関係を築くことができた」
これらのタイヤ製造は、ハリウッド映画の限界に挑戦しつつも、映画のリアリティを保つ上で重要だった。イゾラも、映画の出来に満足しているようだ。
「モナコで初めて映画を観た。その時彼らからは『これはハリウッド映画だ。ドキュメンタリーではないことを忘れないで欲しい』と言われた」
そうイゾラは語った。
「しかし個人的にはすごく気に入っている。リアルなストーリーで、背景にも素敵なストーリーがある。多くの人を惹きつける、良い方法だと思う」
今のF1人気は、Netflixのドキュメンタリー『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』が火付け役になったのは言うまでもない。そして今回の映画『F1/エフワン』により、F1人気がさらに加速することを、多くの人が期待している。
「Netflixが『Drive to Survive』を配信してくれたことが、特にアメリカでどれほど重要だったのか、我々は理解している。あの番組は、アメリカの人々のF1に対する認識を一変させた。F1は常にアメリカに浸透させることを願ってきたが、それは実現しなかった。しかし今では、SNSや新しいツールなどを通して、人々はドライバーたちと深く繋がっている」
イゾラはそう続けた。
「舞台裏を見せるのは、非常に重要だ。インスタグラムに、例えば機械でグリップレベルを測るということを投稿した。それはごく普通のことで、馬鹿げたことでもなんでもないんだけどね。でも、インスタグラムにその短い動画を投稿しただけで、数日で100万人もの視聴者を集めることができる。一体どうやってそんなことが実現できたのだろうか」
「人々は、舞台裏で何が起きているのかを知りたがっている。Netflixのおかげで、ドライバーのこと、そして何が起きているか……ドライバーだけでなく、他の人たちのこともより深く知ることができるようになった」
「レースのために遠征した際、ドライバーや有名人などとは程遠い私や他の人たちのことも認識してくれるなんて、F1にとって素晴らしいことだ」
「そしてこの映画はきっと、その方向へのさらなる後押しになるだろう」
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