2025.6.15

黄色い跳ね馬、フェラーリ83号車が総合優勝! ポルシェがフェラーリの表彰台独占阻む|ル・マン24時間

 世界耐久選手権(WEC)第4戦として開催された第93回ル・マン24時間レースは、AFコルセのフェラーリ83号車(ロバート・クビサ/イェ・イーフェイ/フィリップ・ハンソン組)が総合優勝を飾った。

 今回のル・マン24時間レースは大きなアクシデントが少ないまま進み、レース残り6時間を切った時点で、72台のうちリタイアは10台のみ。ハイパーカークラスは10台がリードラップに残っていた。

 首位はフェラーリ51号車。2番手にはAFコルセの黄色いフェラーリ、83号車が続き、フェラーリ50号車も3番手につけてフェラーリ499Pがトップ3を独占するという状態だった。

 ただ、フェラーリ勢が独走しているというわけではなく、1スティント13周とライバルよりも1周多く走る燃費重視の戦略でマイペースを守るポルシェ6号車が4番手、ここまでほぼノーミスで追い上げてきたトヨタ8号車が5番手に食らいついた。

 レース前半にピットレーンのスピード違反でペナルティを受けたトヨタ7号車は8~10番手付近を走行した。

 LMP2クラスは、インターユーロポール43号車がリード。LMGT3クラスはマンタイ・ファースト・フォーム92号車ポルシェがレース中盤のセーフティカー出動後から首位をキープした。

 夜が明けてから各車がフィニッシュまでの周回数を計算しながらエネルギーをマネジメントしていたが、戦略の目処が立ったのかペースを上げていく。燃費走行していたポルシェ6号車も、1スティント12周の走行に切り替えてペースを上げていき、スローゾーンができたタイミングで早めにピットインしたため、上位陣のピット戦略がほぼ揃う形となった。

 残り5時間を切ろうかというタイミングで、アコーディスASPチーム78号車レクサスがポルシェカーブでコースオフし、右側面からバリアにクラッシュ。FCY(フルコースイエロー)が出された。

 FCY中は短時間の緊急給油しか許されず、ここでピットに入ったフェラーリ51号車は後退を強いられた。ドライバーのアレッサンドロ・ピエール・グイディは挽回しようとして焦ったか、改めてピットへ向かった際に、ピットロードで挙動を乱してスピン。3番手まで後退した。

 代わって首位に立ったのは、黄色いフェラーリ83号車。フェラーリ50号車に20秒弱の差をつけてレースをリードした。

 残り時間4時間10分ごろ、ここまでミス無く来ていたトヨタ8号車がピットアウトした直後にトラブルに見舞われた。ダンロップシケインの手前で左フロントのホイールナットが脱落。すぐにタイヤもパンクし、後にホイールも外れてしまった。

 3輪状態で全長13.626kmのサルト・サーキットを丸1周スロー走行することになったトヨタ8号車の平川亮は、なんとかダメージを最小限にしてピットに戻ってきたものの、この時点で首位のフェラーリ83号車から3周遅れ。ピットで足回りの交換作業も行ない、勝負権を失うことになった。その後8号車は8周遅れ、総合19番手でコースに戻った。

 フェラーリ83号車が15秒ほどのリードを築く中、2位争いはフェラーリの51&50号車とポルシェ6号車の三つ巴に。使い込んだタイヤを履く51号車がニュータイヤを履く50号車をしばらく抑え込んだが、50号車のニクラス・ニールセンが路肩を走りながらオーバーテイク。2番手に浮上し首位の83号車を追った。

 クビサのドライブでフェラーリ83号車は首位を快走。最終盤に向けていつタイヤを交換するのか、チームと無線交信をしながらフィニッシュに向けてひた走った。

 タイヤ状況の違いで各車のペースが変動する中、残り2時間を前にポルシェ6号車が51号車をパス。フェラーリのトップ3独占を崩すと、勢いそのままに50号車にも接近。2台が同時にピットインしたが、50号車がタイヤを変えた一方、タイヤを交換しなかった6号車が実質的な2番手に浮上した。

 タイヤ交換のタイミングをずらして揺さぶりをかけるポルシェ6号車と、その真後ろにつけたフェラーリ50号車、燃料に余裕があり最後に給油時間を短くできるフェラーリ51号車が最後までどうなるか分からない2位争いが続くのを尻目に、フェラーリ83号車は30秒までリードを拡大し、最後の1時間を迎えた。

 燃料的に10秒ほどアドバンテージを持っていたフェラーリ51号車に何らかのトラブルが発生しペースダウンを強いられる中、ポルシェ6号車とフェラーリ50号車はほぼテール・トゥ・ノーズのまま走行を続けた。

 残り40分、首位を走るAFコルセは最後までクビサにフェラーリ83号車を託した。後続との差が30秒以上あることから4輪のタイヤを交換し、万全の状態でチームはクビサを送り出した。

 2位を争うポルシェ6号車とフェラーリ50号車のラストピットは同タイミング。こちらはタイヤを換えなかったが、50号車にはあわやクラッシュかというコースオフがあり、2台の差が開いてしまった。

 このミスもあって、残り25分でラストピットを済ませたフェラーリ51号車が僚機である50号車の目の前でコースに復帰することに。チーム内で表彰台最後の一席を争うことになった。

 抜きつ抜かれつのバトルを演じた2台に対し、チームはたまらずキープポジションの指示。これでトップ4の大勢は決した。

 フェラーリ83号車は、2位のポルシェ6号車に14秒差をつけてトップチェッカー。ドライバー3人にとって嬉しい、初めてのル・マン総合優勝を達成した。

 トヨタ7号車は、小林可夢偉が終盤に猛プッシュ。ポールシッターのハーツ・チームJOTAの12号車キャデラックを追い立てたが、FCY中の手順違反でドライブスルーペナルティを受けたこともあって攻略には至らず、6位でフィニッシュとなった。トラブルに見舞われた8号車は最終的に総合16位でレースを終えた。

 LMP2クラスは、レース中盤から首位を譲らなかったインターユーロポール43号車が、終盤にドライブスルーペナルティを受けて2番手に後退したものの、トラブルを抱えるライバルをコース上で抜き返してクラス優勝を果たした。

 LMGT3はマンタイ・ファースト・フォーム92号車ポルシェが後続に30秒以上の差をつけてクラス優勝。木村武史が乗るケッセル・レーシング57号車フェラーリはLMGT3クラス8位、佐藤万璃音を擁するユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレンは序盤6時間を前にトラブルでレースを終えた。

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出典: https://jp.motorsport.com/lemans/news/2025-lemans-24h-finish-report/10733124/
この記事を書いた人 松本 和己

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