
F1第7戦エミリア・ロマーニャGPからジャック・ドゥーハンに代わってアルピーヌのマシンをドライブしているフランコ・コラピント。アルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーであり、現在暫定的にチームの代表を務めているフラビオ・ブリアトーレは以前、コラピントが出場するレースの数に「明確な上限はない」と語っていたが、ここまで3戦を消化した段階でその言葉は曖昧なものになってしまっている。
アルピーヌは近年、不安定なチーム状況が続いている。幹部クラスのチームスタッフが雇用されては離脱しており、オフィスに書かれた名前のインクが乾かぬうちに別の名前に書き換えられる……そんな印象だ。
この不安定さはドライバー人事にも波及しており、ルーキーのドゥーハンはわずか6戦を走ったのみでコラピントにシートを明け渡すことになった。
公式発表では、コラピントはひとまず5戦限定の起用とされていたが、アドバイザーのブリアトーレはこれを否定。その数字は誰かが勝手に言い出したものであり、明確なリミットは存在しないと発言したことで、状況はより一層混乱した。
スペインGPでのチーム代表記者会見の中で、ブリアトーレはこう述べていた。
「私は5戦だ、3戦だ、4戦だの、そういったことは言っていない」
「コラピントが結果を出せば彼が乗ることになるし、そうでない場合は様子を見ることになる」
このコメントからは明らかに、コラピントに対して圧力をかけるようなニュアンスが含まれていた。というのもコラピントは、昨年ローガン・サージェントの代役としてウイリアムズから9レースに出走した際の悪い癖ばかりが顔を出し、武器だったはずの速さが影を潜めているからだ。
ウイリアムズからF1デビューを果たしたコラピントは初戦から速さを見せてインパクトを残したが、アルピーヌではそうなっていない。
初戦となったイモラのレースでは、Q1で赤旗が出た後に無線の指示を誤解し、再開時間が発表される前にピットレーンのファストレーンに入ってしまったことでグリッド降格ペナルティを受けた。さらにはその直後にタンブレロの出口でミスをしてクラッシュを喫した。
モナコでは予選Q1で敗退し、レースでは13位でフィニッシュ。彼はスタートタイヤにハードを選んだ戦略を非難したが、実際には後方からのスタートになったこと、前方のレーシングブルズやウイリアムズがペースコントロールをしたことがレース展開の大多数を決した。
スペインでは後にギヤボックス交換に繋がるドライブトレインのトラブルが発生。ラストアタックができず、再びQ1敗退となった。レースでは終盤にセーフティカー出場もあったが、挽回ならず15位だった。
レース後にコラピントは「(次戦の)カナダに集中しないといけない」と語ったが、この言葉は本心から出たものなのかもしれない。既に噂は広がりつつある。
一部報道ではセルジオ・ペレスがコラピントの代役として起用される可能性が取り沙汰されたが、これはブリアトーレが金銭に貪欲だという評判に基づいた直感的な推測だと考えられている。確かにペレスには潤沢なスポンサーマネーがあるが、彼は来季キャデラックからの復帰に集中しているとされ、現状中団チームからシーズン途中に乗るメリットは少ない。より現実的なのは、昨年F2でランキング3位となったテストドライバーのポール・アロンの起用か、あるいは今もリザーブとして待機しているドゥーハンの再登板だ。
ブリアトーレは時に冷酷な判断を下すことがある。特にコラピントの起用期間について曖昧な態度を見せたことからも、かつてベネトン/ルノー時代に辣腕を振るってきた彼のそういった一面が顔を出すかもしれない。
スペインでの記者会見で、彼はこう締めくくっている。
「現時点でフランコがこのままシーズンを走るかどうかは分からない。パフォーマンス次第だ。我々が見るのはパフォーマンス、それ以外には何もない」
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