熱狂の渦に包まれたイモラサーキット
ドイツ在住でモータースポーツを取材している池ノ内みどりさんは、WEC(FIA世界耐久選⼿権)の取材のためイタリアのイモラサーキットへ! 現地で体感した地元ファンの熱気や裏舞台など、レースの様子をお届けします。
地元ファンの熱気に圧倒
WEC(FIA世界耐久選⼿権)の取材で、久しぶりにイタリア・イモラへやって来ました。地元フェラーリと、イタリアが誇る大ヒーロー、バレンティーノ・ロッシの大応援の熱気に包まれていて、圧倒されてしまいます。私は決勝レースが始まるまではやることが多すぎて、周囲の景色を楽しむ余裕があまりありませんでした。でも、レースがスタートするとようやくひと息つけるという感じです。自分の席で遅めのランチを食べてコースサイドにも出て、最後の2時間にはピットレーンタバードを予約していたので、やっとピットレーンに出ることができました。
私がコースへ出ている間に随分と雲行きが怪しくなっていて、天気予報では午後5時あたりに雨が降るかもしれないということでした。ぽつぽつと雨が降り始め、急に各ピットが慌ただしくなってきました。レース展開がシャッフルする可能性があるので雨が激しくなるのか気になりましたが、残念ながらすぐに雨は止んでしまいました。
ロッシ、優勝目前で痛恨ペナルティ
残り時間も少なくなったころ、優勝が目の前に迫っていたバレンティーノ・ロッシが、フェラーリ「296」をコース外に押し出してしまい、ペナルティを受けて大きく順位を落としてしまいました。最終スティントを担ったチームメイトのケルビン・ファン・デル・リンデが必死の追い上げを見せましたが、目の前を走るマンタイ・レーシングのポルシェをギリギリで追い抜けず、2位での入賞となりました。
ハイパーカークラスでは、ポールポジションを獲得した50号車のフェラーリが見事優勝を果たし、地元ファンが大いに沸きました。感動のゴールシーンの後、グランドスタンドで応援していたファンの方々が表彰式のためにコース上へ入場するのですが、その人数の多さには驚かされます。そして、みなさん本当に嬉しそう。早朝からサーキットに足を運び、6時間もの長いレースを観戦していたというのに、まるで疲れを感じさせません。
優勝したフェラーリの表彰式での国歌斉唱では、数えきれないほどのイタリアファンによる大合唱が響き渡り、フェラーリのドライバーたちは思わずウルウルしてしまったのではないでしょうか。まさに鳥肌ものの、印象深い表彰式でした。続いて行われたLM GT3クラスの表彰式では、惜しくも優勝を逃し2位に入賞したロッシが登壇。自国イタリアでの表彰台ということで、ファンの方々の喜びもひとしおだったはずです。
メディアセンターの絶品ラザニアに舌鼓
表彰式でドライバーたちから受け取ったシャンパンを、チーム関係者はみんなで仲良く回し飲みしてお祝いムード満点ですが、そのすぐ横ではすでに撤収作業がはじまっていました。この日のうちに撤収を完了しなければならないため、疲労困憊のチーム関係者たちはレースが終わっても息つく間もなく、大引っ越し作業に追われます。
イモラのメディアセンターでは、最終日の決勝レース後だけ温かい食事が提供されます。毎年恒例のラザニアがとんでもなく美味しいのです。空腹だったこともあり、みんなでしっかりおかわりもいただいてから民泊のお宿へ戻ってきました。
2024年はイモラ中心地の民泊にお世話になり、サーキットにも近かったため、2025年もお願いしたかったのですが家主さんの体調悪化により廃業されていて、残念ながら再訪は叶いませんでした。ただ街中だったこともあり、一晩で2回も愛車のセキュリティアラームが鳴り響き、夜中にパジャマのまま駐車場まで飛び起きて走るという事態が発生。「さすがイタリア……」と少し怖くなったのも事実です。
今回は約30km離れた小さな集落に滞在したため、そのようなことは一度もなくぐっすり眠ることができました。そういえば、事前にメディア関係者向けに「車上荒らしに注意」というメールも届いていました。大半のイタリア人は悪いことをする人ではないと思いますが、世界中どこでも、危機感を持って行動しなければならないとあらためて感じました。私の友人・知人の中にも、イタリアに限らず海外で車上荒らしに遭い、すべての荷物を盗まれてしまった人が何人もいます。