
2025年のル・マン24時間レースに参戦する注目のルーキーのひとりが、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの4号車を駆るパスカル・ウェーレイン。彼はこの過酷なレースへのデビューに向けて十分な準備ができていると感じているようだ。
元F1ドライバーで、かつてはDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)でチャンピオンを獲得、さらには昨シーズンのフォーミュラEで王座を手にしたウェーレインは、今季耐久レースの世界にも足を踏み入れている。年初のデイトナ24時間でポルシェ963を駆り6位に入ると、同じく963に乗りWEC(世界耐久選手権)第3戦スパにエントリー。ここでは6号車のドライバーとして9位に入った。
そして今回のル・マンではIMSA枠でエントリーする4号車のドライバーとして、フェリペ・ナッセとニック・タンディと共に24時間を戦う。ウェーレインはテストデーを経てマシンの感触に自信を深めている。
ル・マンで走らせるハイパーカークラスの車両(963は厳密にはLMDh)は、フォーミュラEの車両とは全くの別物と言える。ただウェーレインは、むしろ2台が別物だからこそ、乗り換えても簡単に順応できるのだと説明した。
2週間前にフォーミュラEの上海E-Prixを戦ったばかりのウェーレインは、こう語る。
「もちろん、これまで多くのカテゴリーを走ってきたから、クルマを速く走らせるために何が必要かはよく理解している」
「僕はプロトタイプ・ツーリングカーであるDTMや、大きなダウンフォースがあるF1、そしてフォーミュラEに乗ったし、今はLMDhに乗っている。自分の中にもドライビングスタイルの引き出しがかなりあると思うし、それによって早く適応することができる」
「フォーミュラEからこのクルマ(LMDh)へ乗り換えるのはすごく簡単に感じた。というのも、そもそも“間違った比較”をする必要がないからなんだ。2台はまったく別物だから、フォーミュラEの感覚を持ち込んで『あのクルマではこうだったのに……』みたいになることが全くない。完全に違うマシンだからね」
「例えば、10年前に戻ってDTMのマシンに乗った後にこのクルマに乗ったとしたら、『DTMはこうだったけど、今のクルマは……』みたいに色々考えてしまったと思う。でも今は比べるものがないから、スムーズに移行できるんだ」
ちなみにル・マン初参加となるウェーレインのチームメイト、ナッセとタンディは、それぞれ6回目、13回目の出場となるベテラン。特にタンディは2015年に総合優勝した経験もある。そのためウェーレインにとっても彼から学ぶことは多いようだ。
motorsport.comがタンディからどんなアドバイスを受けたか尋ねると、彼はこう答えた。
「本当にたくさんだよ。レポートに書ききれないくらい!」
「フェリペもニックも、チーム全体がすごくサポートしてくれている。スパで組んだローレンス(ヴァントール)やケビン(エストレ)もそう。みんなにたくさん質問している」
「というのも、ルーキーとして犯しがちなミスや失敗が多いことは分かっているから、それを避けたいんだ。そのステップの先に行って、最初から万全に臨みたいと思っている」
「特に重要なのは手順の部分だ。ルール、レギュレーション、スローゾーンとかだね。ここではひとつのペナルティが本当に痛手になる」
「乗って速く走ること自体は問題じゃない。それよりも手順だったり、トラフィックをいかにうまく処理してタイムロスを防ぐかが重要なんだ」
「例えば、コーナーの手前でLMP2やGT3を抜こうかという場面で、『ここで全開で抜くべきか? それとも無理そうだから燃費走行をした方がいいか?』といった判断が求められる。少し違った考え方が必要だ」
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