
今季のフェラーリは、首位を直走るマクラーレンと比べて、思うようにパフォーマンスを上げられていない。そんな状況では2025年用の開発を早々に終了させ、新レギュレーションが導入される2026年に向けて、リソースを振り分けるべきなのだろうか?
スペインGPは、2025年シーズンのF1において重要なレース……フェラーリにとっては特にそうなるはずであった。
このレースでフェラーリは、コンストラクターズランキング2番手に浮上した。しかし期待されたような躍進を遂げられたわけではない。
スペインGPでフェラーリは、3位シャルル・ルクレール、6位ルイス・ハミルトンと、2台のマシンをいずれもトップ6圏内でフィニッシュさせることに成功した。一方でメルセデスは、アンドレア・キミ・アントネッリがマシントラブルによりリタイアしたため、フィニッシュに辿り着くことができなかった。またレッドブルは、角田裕毅が大苦戦してしまったため、マックス・フェルスタッペンだけがフィニッシュ……しかもフェルスタッペンもペナルティを受けて10位に降着したため、獲得ポイントを伸ばすことができなかった。
これによりフェラーリは、ランキング上では打倒マクラーレンを目指す急先鋒となったわけだ。しかしデータを詳しく見ていくと、フェラーリのスタッフが満足できるような理由はほとんど見られない。
スペインGPからは、フロントウイングのフレキシブル性に関する車検が厳格化。このことによりフェラーリは、マクラーレンとのパフォーマンス差を縮められるはずだった。しかしそんな期待は露と消えた。マクラーレンはエミリア・ロマーニャGPで対策用のウイングを先行投入しており、検査が厳格化されてもパフォーマンスにほとんど影響を及ぼさず……差は縮まらなかったのだ。
ルクレールは予選を犠牲にしてでも、決勝レースにミディアムタイヤを新品のまま2セット残すことを選んだ。しかしこの選択は報われなかった。レース終盤にセーフティカーが出なければ、フェルスタッペンの後ろでフィニッシュするのが精一杯だっただろう。
現代のF1はコース上でのオーバーテイクが難しくなっており、トラックポジション重視の傾向がより強まっている。そのためルクレールは、予選結果を犠牲にする戦略は誤りだったと認めている。
そんなフェラーリは次のカナダGPに、新しいフロアとリヤサスペンションを投入予定。チームも今季マシンSF-25は失敗作であると認めているが、このアップデートでその事前の”期待”が裏切られることを願っている。しかし、マクラーレンを凌駕するようなパフォーマンス向上を望むのは、酷であろう。
2025年型マシンはそもそも、大きな開発ポテンシャルを持っているはずだった。しかし空力面のアップデートは遅々として進まず、アイデアも枯渇してるようにすら見える。前回のアップデートは満足いくものではなかったため、このSF-25が歴史に残るようなマシンではないだろうという認識が、チーム内でも広がっているのかもしれない。
こうした苦境により、今季から加入したハミルトンとの良好な関係にも、亀裂が入り始めている。ハミルトンは、アップデートが投入されてもシーズンの流れを変えることができないことを受け、全てのリソースを来季マシンの開発に割いた方が良いと繰り返し主張している。
しかしその一方で、フレデリック・バスール代表だけが、今季マシンに大きな信頼を寄せている。
フェラーリは近いうちに、重大な決断を下さなければならない。ランキング2番手争いは依然として混戦模様ではあるが、2026年にレギュレーションが大変更されるのを前に、SF-25にさらなる投資を行なうことに、果たして意味があるのだろうか?
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