
世界耐久選手権(WEC)ハイパーカークラスに参戦するプジョーは、シリーズへの長期的なコミットメントの一環として、新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)を開発することを目指しているようだ。
プジョーは2022年シーズン後半からWECハイパーカークラスに参戦。グラウンドエフェクトカーの要素を取り入れ、直線スピード向上を意識してリヤウイングを取り払うという攻めたデザインを持つLMHマシン“9X8”を投入し話題を呼んだ。しかしそのマシンコンセプトが好結果に繋がることはなく、プジョーは2024年に9X8の大規模改修に踏み切り、リヤウイングを搭載し、ホイールの幅も変更した。
ただ、プジョーの親会社であるステランティス・グループのトップが、当面はWECハイパーカークラスへの参戦を継続すると強調したことで、ブランドの新型LMH計画の存在説が浮上。プジョーは後継マシンについて、WECレギュレーション策定を行なうFIA及びフランス西部自動車クラブ(ACO)と対話を開始したと言われている。
ステランティス・グループのモータースポーツ部門を率いるジャン-マルク・フィノは、プジョーの現在のコミットメントが2026年末まで続くことを認めた上で、「(WEC参戦を)続ける可能性は高い」と説明。プジョーの新CEOであるアラン・フェイヴィーも、同ブランドが「長期的に」WECへ参戦すると主張した。
ル・マン24時間レースで3度の総合優勝などスポーツカーレースで豊かな歴史を持つプジョーにとって、”長期的な取り組み”が何を意味するのか、フェイヴィーCEOは詳細な説明を避けた。
「我々は長期にわたってブランドの強さを示すためにここにいる」とフェイヴィーCEOは言う。
「我々は成功に繋がる一歩一歩の向上を求めている。自分たちの期待に沿うようなパフォーマンスに達するまで、シリーズにとどまることが我々の望みだ」
これまでのところ、プジョーはWECで勝利を挙げることができていない。表彰台に登ったのは前期型の9X8で手にした2023年モンツァ戦と、9X8 2024と呼ばれる後期型での2024年バーレーン戦の2回のみだ。
プジョーはLMHの開発を制限しコストを抑えることを目的としたエボ・ジョーカー・レギュレーションを通じて、9X8に大幅な変更を加えた。これらのアップデートは、ルールメーカーの承認を得る必要があるが、仮にプジョーが現行LMHレギュレーション中に新型マシン開発する許可を得る条項を行使したいのであれば、同様に承認が必要になる。
しかしプジョーが長期的な計画として、現行のハイパーカーレギュレーションのサイクル延長を利用して新型LMHを開発する可能性があるかどうかについては、明言が避けられている。
現行ハイパーカーレギュレーションは昨年、2年間延長されることが発表され、2029年末まで使用されることが確定している。しかしル・マン24時間レース前夜に行なわれる恒例のACO記者会見では、さらなるレギュレーション延長が発表される可能性が高そうだ。
プジョー・スポールでテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは、次のように語った。
「技術戦略については話したくない。ある時点で変動するレギュレーションに大きく左右されるからね」
しかしジャンソニーは現行9X8のパフォーマンスがまだ向上していると指摘。ル・マンを前にしたプジョーの記者会見で「上昇軌道」に乗っていると説明した。
ただステランティスのフィノ代表は、ハイパーカークラスにおける“第2のルート”として2020年1月に発表されたLMDhとの統合に伴うレギュレーション変更によって、9X8が設計段階で妥協を強いられたままだということを示唆した。
「マシンを適応させる可能性があればフェアだろう」とフィノ代表は言う。
「当初設計されたマシンと2026年や2027年にエントリーするニューカマーと比較すると、我々が適応させなければならなかったレギュレーションよりも、凍結されたレギュレーションの方がマシンを設計しやすいんだ。もしレギュレーション変更の変更を全て覚えているのであれば……ね」
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