
F1モナコGPでのフェラーリは、シャルル・ルクレールが2位、ルイス・ハミルトンが5位と、スプリントを除けば今季最高のリザルトとなった。
しかし、レース後はどちらのドライバーにも祝賀ムードはなく、特にエンジニアのリカルド・アダミと無線で緊張感のあるやり取りをしていたハミルトンは明らかに無口で元気がなかった。そのためチーム側も、どこかその火消しに追われているような雰囲気であった。
ハミルトンは予選で4番手を獲得しながらも、Q1でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の走行を妨害してしまったことで3グリッド降格ペナルティを受けた。これはチームの誤った情報伝達が原因だったが、これが尾を引いてか、決勝レースでもハミルトンとアダミの間で気まずそうなやり取りが続いた。
レース後、フェラーリのフレデリック・バスール代表は、両者の間に軋轢はないと否定。次のように語った。
「ターン1からターン3の間にドライバーが何かを尋ねてきたら、我々はトンネル区間まで返答するのを待つことになっている。コーナー中に話しかけるのは避けているんだ」
「ピットウォールでビールでも飲んで寝てたわけじゃない。彼に話しかけるタイミングは事前に話し合ってある」
「正直なところ、テンションが高まったというよりは、300km/hのスピードでプレッシャーに晒されながら壁と壁の間を走っているドライバーが、単に集中しているだけなんだ。全く問題ではないし、レース後に彼(ハミルトン)と話したが怒っている様子は全くなかった」
バスールのこうした説明はもっともらしく聞こえる。実際、多くのドライバーは難しいコーナーを走っている途中に無線で質問や情報伝達をされることを嫌がるからだ。しかし、最も奇妙なやり取りはレース中ではなく、レース後のクールダウンラップ中に起きた。
まずアダミが無線でこう伝える。
「5位だ。トラフィックで多くのタイムを失ったけど、その他については後で調べる必要がある。(タイヤかすの)ピックアップもよろしく」
それに対してハミルトンは「(フリー走行のクラッシュから)マシンを直してくれたみんなに感謝したい。楽なレースウィークじゃなかったけど、また次に向かって戦っていこう」と返し、しばしの沈黙の後、こう尋ねた。
「僕に怒ってたりする?」
ただ、これに対する返答はなかった。
またレース中に遡っても、ちぐはぐなやり取りはあった。終盤にハミルトンが、前を走るマクラーレン勢やフェルスタッペン、ルクレールが「まだ1分くらい前にいるの?」と尋ねた時、アダミは「シャルルはミディアム(タイヤ)、マクラーレンはハード(タイヤ)を履いて、接近したところで走っている」と返答。ハミルトンは「質問の答えになってないよ。まあどうでもいいけど……僕が1分後ろにいるかどうか聞きたかっただけだよ」と返したところ、そこでようやくアダミが「48秒だ」とだけ答えた。
ハミルトンは特にレース後半はほとんどひとり旅状態となっていたため、そういったレース展開からは上記のような緊張感ある無線のトーンは説明がつかない。ただ優勝したランド・ノリス(マクラーレン)から51秒、チームメイトのルクレールから48秒離されての5位となったことは、チームの伝達ミスによって7番グリッドからのスタートとなったことが遠因であるだけに、ハミルトンにとっても納得しがたい展開だったのだろう。バスールの「全く怒っていなかった」という言葉を信じるならば、ハミルトンは記者からのインタビューに答えるメディアペンの後に機嫌を戻したのかもしれない。
レース序盤にアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)らに引っかかったこと、そしてスロー走行する周回遅れの集団に遭遇したことなどもロスに繋がったが、それでもハミルトンが純粋なペースでルクレールに遅れていたのも確か。本人はフェラーリ特有の挙動にまだ十分慣れていないことが原因と語っているが、このペース不足もハミルトンにとって課題となっている。
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