
先日、フォーミュラカテゴリーに生まれ変わって初めてのレースが行なわれた新生KYOJO CUP。世界でも珍しい女性限定のシングルシーター選手権ということもあり、海外からの新規参戦もいくつかあったが、その中で一足先に日本で腕を磨いてきた海外出身選手がいる。それがバートン・ハナだ。
バートンはアメリカ出身で、レースに興味を持つきっかけとなったのはアメリカのHKSにSNSマーケティング等の仕事で務めるようになってから。そこからサーキットレースに魅せられ、2022年に母の母国である日本でレース活動をスタートさせた。
長くインフルエンサーとして活動してきたことから、アメリカを中心に多くのファンを抱えており、Instagramのフォロワーは50万人超えと、KYOJO CUP参戦ドライバーの中では頭ひとつ抜けている。さらに今では日本語も上達。「母は日本人ですが、英語を話して育ってきたので、日本語に触れることは少なかったです。でも今は周りが英語を話せない人たちばかりなので、日本語の良い練習になっています(笑)」とのことだ。
普段は人懐っこい笑顔がチャーミングなバートンだが、ひとたび口を開くと非常に大人な考えを持っている印象を受ける。昨年東京で行なわれたFIAガールズ・オン・トラックのイベントの際には、KYOJO CUPのような女性限定レースカテゴリーの有用性について「モータースポーツはスポンサーが極めて重要な競技ですから、女性向けのメイクアップブランドなど、これまでと違ったブランドから注目されるようになる点も業界にとって本当に重要」と鋭い視点を披露していた。
前述の通り、女性限定のフォーミュラレースは世界的にも珍しく、KYOJO CUPの他にはF1アカデミーしか存在しない。今後女性ドライバーの人口や市場がさらに拡大すれば、それに伴い日本のKYOJOに目を向ける海外のドライバーも一層増えるかもしれない。
そのためにはまずKYOJO CUPの存在を海外へと発信する必要があると言えるが、バートンの持つ発信力はその橋渡し的役割を持つかもしれない。これについて彼女は「そうなるといいですね」答え、さらにこう続けた。
「私のファンのほとんどはアメリカにいます。(インスタグラムの)ストーリーにレースのライブ配信のリンクなどを載せたら何人か観てくれた人もいて、それはすごく嬉しかったです」
「実際に日本まで足を運んでもらうのは難しいと思いますが、少なくともオンラインでは海外の人にも見てもらえたらいいなと思っています」
「欧米のメディアにとっても日本は遠く離れた国ですから、簡単ではないと思います。海外の人にリーチしてもらうにはこれまでと違うアプローチをトライする必要があるかもしれません。その方法が何かはまだ分かりませんが、KYOJOが盛り上がると良いなと思います」
ちなみにKYOJO CUPは今季からYouTubeでのレース配信のラインアップに英語実況も加えている。海外からの注目が集まれば、格好の受け皿となるだろう。
バートンのKYOJOフォーミュラ開幕戦は、雨の予選でタイヤ選択がハマって2番手に入ったものの、スプリント6位、決勝レース9位とポジションを落とした。かねてからフォーミュラでのレースを熱望していた彼女だが、念願のシングルシーターは以前までKYOJOで使われていたVITAとの感覚の違いで苦労しているという。
「自分の思った通りにクルマが動いてくれないところがあります。VITAの時とはタイヤの特性が全然違うし、フォーミュラカーとなるとスライドもさせられない。感覚がずれているというか、これまで正しいと思っていたことが実は違うのかもしれない気がしているので、そのイメージを少し修正する必要があると思っています」
そう語ったバートン。所属チームは名門TOM'Sであり、セッティングなどは規則によりほとんど変更できないとはいえ、かつてのトップドライバーである伊藤大輔監督から直接指導を受けられている。伊藤監督もチームの公式レポートの中で、今のバートンには「今何が起きているのか、どうしたら速く走れるのか? という思考を持つこと」が必要だとしていたが、それができれば次戦は良いレースができるはずだと期待を寄せていた。






