
南アフリカ政府は、同国でのグランプリ復活を目指しており、どの誘致計画を支持するのかという決断の時期を間近に控えている。そんな中、南西海岸沿いにある港町ケープタウンでのグランプリ誘致を支えるオーガナイザーが、市街地レース計画について詳細を明かした。
1993年を最後にF1カレンダーから外れたキャラミ・サーキットでの南アフリカGP復活を目指した以前の誘致計画は失敗に終わったものの、同国政府はアフリカにグランプリを呼び戻すためにバックアップを約束し、2025年はじめに誘致プロセスを開始した。
そしてキャラミを改装してF1を呼び込む案と、ケープタウンで市街地レースを開催する案が、2大候補になると見られており、誘致委員会は4月末までに決定を下すこととなっている。
ケープタウンでのグランプリ誘致計画は、都心でのF1開催がコンセプト。2010年FIFAワールドカップのために建設されたDHLスタジアムの周辺施設を活用し、ティルケが手掛ける5.7kmの市街地サーキットがグリーンポイント港に設置される。
ケープタウンGPのCEOであるイグシャーン・アムレイはmotorsport.comに対し、次のように説明した。
「最新のデザインには、あらゆる要素が盛り込まれている。一部は海辺を走り、サッカー・ワールドカップで使用された施設も使用する」
「サーキットから15分から20分のところには空港があり、施設内には一流の病院がある。ホテルも徒歩圏内にたくさんある。ロベン島、海辺、テーブルマウンテンといった自然の背景も大きな役割を果たしている。ケープタウンは、我々にとって最高のリゾート地だ」
「F1の歴史があるキャラミが相手だから、市街地レースVS常設サーキットということになる。どのような決断が下されるのかを見守りたい。ここでは25万人を簡単に収容できるので、より多くの人がアクセスしやすくなる」
これまでの計画案とは異なり、最新の計画でサーキットはDHLスタジアムを通過することなく、パドックやメディアセンター、ホスピタリティエリアとしてスタジアム設備を使用することとなる。
「スタジアムを通る目的は、最大7万人を収容できることであり、F1レースを観戦する経済的余裕がない人たちにもアクセスしやすくすることだった」とアムレイは説明した。
「しかしサーキット設計者と話した結果、いくつかの障害があり、実際はサーキットが(スタジアム脇を)沿って走るほうが良いということになった」
「DHLスタジアムはパドックとメディアセンターに使用される。サッカーワールドカップのために設置されたモノは全て再開発され、スタジアム内に既に存在しているので、それをフルに活用する。豊かな遺産があるグリーンポイント陸上競技場もそのまま使用する」
政府がケープタウンかキャラミのどちらかを支持するとしても、南アフリカでのF1復活の見通しはまだ不透明。2028年以降のF1カレンダー入りをめぐり、タイ、ルワンダ、韓国などと招致レースを戦うこととなり、F1を納得させるためには全ての条件を満たす魅力的な活動が必要になる。
また南アフリカ政府の誘致計画承認を待つ企業スポンサーが存在する可能性もあり、民間や公的な手段でどれだけ資金を集めることができるのかにも疑問符がつく。
「F1はアフリカ大陸でのレース開催を常に検討してきたと思うし、ルイス・ハミルトンも賛成を表明している。本当に彼らが世界選手権を目指すなら、アフリカ大陸でのレースが必要だ。それがケープタウンであれ、キャラミであれ、他のアフリカ諸国であってもね」とアムレイは言う。
「ケープタウンだけでなく、国全体にとっても経済や観光部門にプラスの影響を与えるはずだ」
アムレイはこれまで20年以上にわたって、ケープタウンにF1を誘致するというプロジェクトに取り組み、当時F1の最高責任者を務めたバーニー・エクレストンとも話し合いを持ったが、実現には至らなかった。
しかしF1人気が新たな高みに達した今、ついに彼の夢を実現させる勢いがあるとアムレイは感じている。
「我々はどんな批判からも逃げなかった。批判されるたびに、我々はそれを真摯に受け止め、いくつかの変更を加えてきた」とアムレイは続けた。
「2016年にこのアイデアを提案した時、様々なスポンサーや投資家が興味を持ってくれた。我々が抱えていた大きな問題は、政府の後押しが得られなかったことだ。しかし今では大きな後押しがあり、F1を見続けてきた若い世代から大きな支持を得ている」
「1999年にこのコンセプトを思い描いて以降、我々は長い道のりを歩んできた。何かを信じ、忍耐強く続ければ、必ず実現するんだ」