2024.7.27

雨予報の予選に、晴れの決勝……セットアップのジレンマに悩むF1チーム。最後尾スタートの角田裕毅にはチャンス?

Erik Junius

 2024年のF1ベルギーGPは、決勝レースはドライコンディションで行なわれる予報となっているが、土曜日は”スパ・ウェザー”で知られるスパ・フランコルシャンらしく、不安定で変わりやすい天候となっている。

 各チームはその分、セットアップに関してかなり悩まされることになりそうだ。

 ドライコンディションのスパ・フランコルシャンは、空力効率を優先したセッティングが要求される。全長6.976kmのサーキットに様々な中高速コーナーが点在しておりダウンフォースも重要なのだが、全開区間が長くトップスピードがタイムに大きく影響するのだ。

 そのため各チームは、フロアが生むダウンフォースを最大化する一方で、ウイングでは最低限のダウンフォースを確保しながら空気抵抗を削減するというコンセプトを追求する傾向にある。

 しかしながら、ウエットコンディションではまったく異なるアプローチが要求される。グリップの低いコンディションでタイヤに負荷をかけて温め、タイヤが路面に確実に接地できるようにすることが重要となる。

 一方で長いストレートエンドでスピードが頭打ちになることはほとんど無くなるため、空力効率ではなくダウンフォース量が重要になってくる。

 上位で戦うことが予想されるドライバーは、予選を犠牲にすることは望まないだろう。しかし、ダウンフォースが余分な状態でレースに参加する余裕もない。そのためドライとウエット、それぞれのモードの間で絶妙なバランスのセットアップに仕上げる必要がある。

 予選が始まり、パルクフェルメ状態となってしまうと、気象条件の変化によって許される変更を踏まえたとしても、調整の幅は大きくない。

 フロントウイングのフラップ角度を調整することはできるが、予選で使用した既存のボディワークを使用する場合に限られる。そのため、予選でハイダウンフォースのウイングを選択した場合、ペナルティなしで決勝に向けて仕様を変更することはできない。

 予報によると日曜日は雨が降らないようなので、ダウンフォースの高いセットアップに全力を注ぎ、予選でのベストを期待するのはあまり意味がない。スパでのオーバーテイクは他のサーキットに比べてはるかに難易度が低いため、ストレートで十分なスピードが出せないドライバーはレースで不利になる。

 ウェットコンディションでのタイヤ温度の向上は、グリッドポジションを獲得するためには重要な要素だが、レースではタイヤをオーバーヒートさせ、戦略を台無しにするリスクがある。

 したがって、ベストな妥協点を見つけられるかどうかはチーム次第だ。ダウンフォースを抑えたセットアップでウエットセッションを走れる自信があるのなら、あるいはセッション中のコンディションが変わりやすいと予想されるのなら、レース用のセットアップに集中し、予選でできることをやるという選択もある。

 レースに全力を注げるドライバーがひとりいる。RBの角田裕毅だ。彼はパワーユニット交換によるペナルティで最後尾スタートが決まっている。そのため、予選を無視してレースに向けて最適なセットアップをすることができる。

 その他のマシンに関しては、チームの競争力によってどれだけリスクを計算にいれるか、またはギャンブルするかの判断は分かれるだろう。

 もし予選で雨が降らなかったら? これまでの文章は無意味なものになり、チームは事前のプラン通りのセットアップでレースに臨めるだろう。

 しかし、ファンとしてはドラマがあったほうがいいのかもしれない。コンディションが変わりやすい週末こそ、エンジニアたちが真価を発揮する場なのだから……。

出典: https://jp.motorsport.com/f1/news/the-downforce-dilemma-facing-teams-ahead-of-spa-f1-qualifying/10639321/
この記事を書いた人 Jake Boxall-Legge

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