
F1ハンガリーGPでは、マクラーレン勢が1-2フィニッシュ。圧倒的な強さを見せ、オスカー・ピアストリがF1初優勝を手にした。しかしその勝利と強さも霞んでしまうような、バタバタなレースをマクラーレンは演じてしまった。
それは、何を隠そう最後のピットストップのタイミングのことだ。
それまで首位にピアストリ、2番手にはチームメイトのランド・ノリスが走っていた。ふたりの間隔は2秒。3番手のマックス・フェルスタッペンは10秒近く遅れていたため、普通に走り切れば1-2フィニッシュは当然……そんな状況だった。
しかしマクラーレンは、なぜか2番手のノリスを先に2回目のピットストップに呼び込んでしまう。今回のハンガリーGPは気温と路面温度が高かったこともあり、タイヤの性能劣化が比較的激しかった。そのため、新しいタイヤに履き替えたノリスは、一気に2秒以上ペースを上げることになった。
タイトル狙いでノリスに勝たせることも不思議ではない

このグラフは、レース中のマクラーレン2台、フェルスタッペン、そして最終的に3位になったルイス・ハミルトン(メルセデス)のレース中のペース推移を表したものだ。この赤丸の部分を見ていただけると一目瞭然、ノリス(オレンジ色の実戦)のペースが一気に2秒早くなっていることがよく分かる。
そして前述の通り、ピアストリとノリスの差は2秒ほどだった。つまりその差はノリスが早くピットストップをしたことで帳消しになってしまう。しかもあろうことか、マクラーレンがピアストリをピットに呼び込んだのは、ノリスから2周後。結局ピアストリは、コースに戻った時にはノリスに先頭を譲ったばかりではなく、4秒の差をつけられてしまった。
この判断については、「フェルスタッペンとチャンピオンを争うためにノリスにできるだけ多くのポイントを獲得させよう」ということであれば、十分納得できる。ノリスは現在ランキング2番手につけており、今後の行く末によっては、フェルスタッペンとタイトルを争える可能性もある。
ただ、ピアストリに露骨にポジションを譲らせたのならば後々遺恨が残るかもしれない……そのため何らかの理由をつけ、「ノリスを先にピットに入れる必要があったんだから、仕方ないじゃないか!」とピアストリに2位を納得させる、という流れだ。こういうことは、これまで度々行なわれてきたことであり、なんら不思議ではない。そして何らかの理由をつけるとすれば、ノリスが「ハミルトンにアンダーカットされるのを避けるため」ということだろう。
ピアストリを先にピットに入れていれば……

一方でこちらのグラフは、レース中の各車のタイム差の推移をグラフ化したものだ。ハミルトンは比較的早めに2度目のピットストップを行ない、前を追っていた。そして44周目(赤丸で示した部分)にノリスの25秒後方まで迫っていた。
なお今回のハンガリーGPでは、ピットストップを行なうことで失うタイムは20.5秒ほどだった。この頃のハミルトンのペースは、ノリスよりも1秒程度速かったため、あと数周ピットインを遅らせていれば、アンダーカットを許してしまう可能性は確かにあった。なので安牌として早めにノリスをピットに入れた、それで順位が逆転した……ということにした方が、ピアストリは不満だったとはいえ、理解はできるかもしれない。
しかしあろうことか、マクラーレンは一度首位に出たノリスに、ピアストリに順位を譲るよう指示した。ピアストリを勝たせるつもりなら、44周目にピアストリをピットインさせ、その次の周にノリスをピットインさせる……そうすれば、何の遺恨も残らなかったはず(コース上でふたりが大バトルを繰り広げた可能性はあるが)。ノリスも「そもそも、僕はリードを手にするべきではなかった」と語っている、まさにその通りだ。
タイトル争いから長く離れていたマクラーレン。今回のバタバタ劇も、”勝ち方を忘れた”からなのかもしれない。