
ハンガロリンクで開催されたF1ハンガリーGP。レース大半をリードしたマクラーレンのオスカー・ピアストリは、最後のピットストップのタイミングでチームメイトのランド・ノリスに先行を許したものの、チームオーダーによるポジション入れ替えで勝利を掴んだ。
勝利を譲ったノリスは、チームのこの判断を“フェア”なモノと受け入れた。ただ、本来このチームオーダーは不要だったはずだとも考えている。
ノリスはハンガリーGPの予選でポールポジションを獲得したものの、決勝スタートではピアストリ、ノリス、レッドブルのマックス・フェルスタッペンの3台がターン1で横並びとなり、その中でノリスは勢いを削がれた。
ターン1でアウト側からマクラーレン2台を追い抜こうと考えたフェルスタッペンはコース外へと飛び出した。ただピアストリとノリスの間でコースに戻ってしまったことが、”コース外を通ってアドバンテージを得た”と裁定されかねないと考えてチームからポジションをノリスへ譲るよう指示を受け、渋々後退を受け入れた。
これでトップ2はピアストリ、ノリス。レース中盤のスティントでピアストリがコースオフしたことで、一時5秒近くあったふたりのギャップが2秒以内に縮まるタイミングがあったものの、マクラーレン勢が終始ワンツー態勢でレースを支配した。
そして迎えた最終ピットストップ。マクラーレンはまずノリスをピットに呼び込み、後方を走るメルセデスのルイス・ハミルトンやフェラーリのシャルル・ルクレールのアンダーカットを阻止しようと考えた。
ただフレッシュタイヤのアドバンテージは強力で、ノリスは逆に2周遅れてピットインを行なったピアストリをアンダーカットしてしまった。チームはピットストップ前の取り決め通り、ピアストリに首位を明け渡すようノリスに懇願するしかなかった。
F1での2勝目が欲しいノリスもただでは引き下がらず、ピアストリにポジションを譲ったのはレース残り3周と言う時点。ピットストップを終えて20周近く経ってからだった。
ピアストリを先行させることがどれほど難しい選択だったか? そう尋ねられたノリスは次のように答えた。
「タフだったよ。レースをリードしている時にそれを諦めるのは、誰にだって難しいことだと思う」
「見ての通り、僕はあのポジションに置かれた。彼らは僕を最初にピットへ入れて、レースをリードして後続を突き放すチャンスをくれた。僕は自分がやっていることをやったけど、そのチャンスは与えられたモノでもある。だからポジションを返したのはフェアなことだと思う」
「僕は“フェアじゃないヤツ”みたいに思われたくない。オスカーはこれまで、僕のために多くのことをしてくれたし、多くのレースで僕を助けてくれた。彼は僕よりも良いレースをした。彼は良いスタートを決めたけど、僕のは最悪だった」
「彼は勝利に値するし、ああするのが正しいことだった」
しかしノリスは、本来チームオーダーが必要な状況は回避できたと考え、実際に勝利を譲ってしまったことはドライバーズタイトル争いにおいて「痛手」と認めた。
マクラーレンはシーズン中盤以降、レッドブルを上回る速さを見せてきたが、ドライバーズランキング首位フェルスタッペンは序盤に稼ぎ上げた貯金により、ランキング2番手ノリスに対して76ポイントのリードを保ったままだ。
「勝利を手放す時は、そうするしかないんだ」とノリスは続けた。
「そもそも、僕はリードを手にするべきではなかったんだ。それが1番のポイントだと思う。レースをリードしていたのに、それを返さないといけないのは痛手だ。特にドライバーズランキングにおいては、全てのポイントが助けになるからね」
「僕はランキングでマックスからかなり離されている。誰かに言われなくても、それは分かっているよ。今回は7ポイントを諦めることになった。でもそれはポジション入れ替えではなく、またスタートが悪かったからだ。それが今回の敗因だ。タフなレースだったよ」
ノリスは直近のオーストリアGP、イギリスGPでも勝利を逃し、またしてもチャンスを逃してしまったことに苛立ちが隠せない様子だった。しかし2021年イタリアGPでダニエル・リカルド(現RB)と成し遂げて以来のワンツーフィニッシュという事実は、称賛に値するとノリスは強調した。
「チームとして、ワンツーフィニッシュを飾ったという事実を忘れてほしくない。モンツァ以来となるワンツーフィニッシュはみんなにとって信じられないような成果だけど、僕らのワンツーフィニッシュは純粋な実力によるモノだと思う。僕らは週末を通して速かったし、前日の予選でもワンツー、今回もワンツーだった」
「良いフィーリングだ。チーム全員にとって、これは本当に喜ばしいことだ。とても誇りに思うし、自分たちが道のり、そして前進していることが嬉しい。次もあるといいね」
ただノリスは、今年は何度もポールポジションからレースリードにつなげることができず、怒りをあらわにすることが多かった。
ハンガリーGPでの問題について、ノリスはこう説明した。
「見直す必要がある。2速へのシフトアップが悪かった……発進も反応も良かったのに、2速に入れた時に大きなカットがあった。よく分からないけど、見直してみるよ」
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