
またピット作業……そう思ったファンも少なくないだろう。スーパーフォーミュラ第4戦富士で、KCMGにスーパーフォーミュラで初めてのポールポジションをもたらした福住仁嶺(Kids com Team KCMG)は、レースをリードしていた中でピットインした際にタイヤ交換作業でタイムロスがあり、それが響いて4位に終わった。
KCMGは、小林可夢偉が優勝争いに絡んだ際にピット作業のロスで勝利のチャンスをフイにしたというレースが何度かあった。トップ独走状態からタイヤ交換のロスで勝利を逃した2017年のもてぎ戦がその最たる例で、昨年のもてぎ戦でも、優勝争いからピットロスにより脱落し、レースを終えた小林から引退をほのめかすようなコメントが出たことも記憶に新しい。
今回の決勝前にも、土居隆二チーム代表は「不安材料がないと言ったら嘘になる。我々はタイヤ交換などをたくさんミスしてきて、可夢偉の優勝のチャンスを奪ってしまったということは事実としてあります」と認めつつも、クルーは気負うことなくそのプレッシャーを楽しんでほしいと激励のコメントをしていた。
そして迎えた決勝レース。14周目にピットインした福住の左フロントタイヤはなかなか外れなかった。やっと外れたタイヤは、左リヤ担当のスタッフと彼が持っていたインパクトレンチによって締められた。推定10秒ほどのロスを被った福住は、見た目順位で13番手、事実上の7番手〜8番手あたりまで落ちてしまった。
「その時、ピットレポーターの英美里さんが近くにいたんですけど、彼女の『あー!』みたいな表情が気になって(笑)。その顔になるよね〜、俺もなってるよって(笑)」
そう笑顔で振り返る福住。気持ちを切り替えるには2周ほどかかったという。確かにSFgoで当時の無線記録を見ると、福住はピットアウトから3周が経った18周目に「ここから頑張るよ!」と無線を入れている。
ただレース後にインタビューに答える福住からあまり悲壮感のような雰囲気が感じられなかったのは、レースで戦えるという手応えを得たからか。予選後の会見ではロングランに不安があることを匂わせていた福住だったが、実際の決勝レースでは高水準のペースを見せ、自力で4位までポジションを上げて見せた。最終的には3位の野尻智紀(TEAM MUGEN)の背後まで迫り、優勝の坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)とは11.6秒差の4位フィニッシュだった。
今回のレースで“勝てるペース”があったと思うかと尋ねると、福住はこう答えた。
「実際に(タイヤ交換作業で)10秒ほどロスしていて、レースが終わって(優勝ドライバーと)10秒差くらいですよね。前でクリーンエアで走れていたとしたら、分からなかったなと」
「ペースとポテンシャルだけで言うと坪井選手の方がありそうですが、一番前から走ることで築けるギャップを考えたら、ギリギリ行けたんじゃないかなと言う気はしますが、結果論なので。もしかしたら坪井選手は終盤にコントロールしてたんじゃないかと思うので、なんとも言えないです」
レース自体は悔しい結果に終わったが、チームの確かな前進は実感している福住。今回のような高いパフォーマンスを続けることができれば、チームもプレッシャーのかかる場面に対応できるようになるのではないかと語った。
「チームのエンジニアの方々に感謝ですし、スタートも不安な中でうまくいったので。少しずつ良くなっていると思います」
「こういうもの(好調さ)を続けていれば、今後チームとしても、もっともっと余裕が出てくるはずです」
「(調子の)アップダウンがあると、チャンスが来た時にどうしても普通でいられないです。レースはメンタルスポーツですから。常に速いチームになっていれば、全部が普通になっていくと思うので、そういうところを目指したいです」
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