2024.6.4

名門フェラーリ復活だ! でもチーム代表には言わないで……「自分たちが好調だと思うなら、死んでいるのも同然」とバスール冷静

Ferrari

 ここ2年、他を圧倒し続けてきたレッドブルに対して、今季のフェラーリはかなり接近している。しかしチーム代表のフレデリック・バスールは冷静。束の間の栄光に浸っている場合ではないと語った。

 今シーズンは開幕から8戦を消化。開幕当初こそレッドブルが1-2フィニッシュを続けて今季も圧勝かと思われたが、フェラーリがオーストラリアGPとモナコGPで優勝し、マイアミGPではマクラーレンが優勝……レッドブル、フェラーリ、マクラーレンの三つ巴という状況になりつつある。その勢力図はサーキットの特性やチームとしての仕上がりに左右される部分が大きく、ここ数戦はレースごとに優勝最有力候補が入れ替わる、そんな状況だ。

 スペインGPを開催するカタルニア・サーキットのようなハイダウンフォースが求められる特性のコースでは、レッドブルが依然として有利と見られている。

 しかしモナコの狭い市街地サーキットは特異な存在でがあるものの、レッドブルが特に苦戦。フェラーリやマクラーレンに全く歯が立たなかった。つまり、RB20が100%の力を発揮できない低速レイアウトやバンプや縁石が多いサーキットでは、レッドブルが軽々と優勝をさらう余裕はもはやないとも言える。

 ドライバーズランキングではフェラーリのシャルル・ルクレールがレッドブルのマックス・フェルスタッペンまで31ポイント差に迫り、コンストラクターズランキングではフェラーリがレッドブルに24ポイント差まで接近。ティフォシとイタリアメディアは活気づき、バスール代表はフェラーリの救世主として称賛を受けている。

 ただ当の本人は、フェラーリ復活という話題を聞きたくないようだ。バスール代表は、今は喝采を浴びて浮足立つ時ではなく、むしろ攻め時だと冷静だ。イタリア・マラネロのファクトリーでの改革は、スクーデリア・フェラーリのあらゆる部門をより効率化するため、バスール代表は計画通り続けるだろう。

 バスール代表はmotorsport.comイタリア版を含むメディアに対して次のように語った。

「調子が良いと思い始めたら、もう死んでいるのと同然だ」

「つまり同じアプローチを続け、部門ごと、ドライバーもピットウォールも何もかも、全ての領域で継続的な改善が必要だということだ」

「良い仕事をしていても、次の週にはもっと良い仕事をしなければならない。自分たちのやっていることが良いと確信し始めたら、それは終わりの始まりだ。あらゆる分野で、我々は少しずつ限界に挑戦する必要がある」



バスール代表の加入で変わったフェラーリ

Erik Junius


 高望みしすぎず、寡欲にもなりすぎない。こうした考えは、バスール代表ならではのフィロソフィーであり、フェラーリに大きな貢献をもたらした。ミスには対処するものの、前体制で蔓延していた責任の押し付け合いや非難の文化はない。

 バスール代表の就任1年目となった2023年は、カルロス・サインツJr.がシンガポールGPで優勝を収めたことでレッドブルにシーズン唯一の土をつけたが、システム的に改善すべき点が多く見つかったシーズンだった。

 その改善作業は終わっていないものの、フェラーリは既に別チームのように生まれ変わった。変な緊張感はなく、自信を持っている。

「彼は自分が何を達成したいのか、どうすれば達成できるのか、明確なビジョンを持っている」とバスール代表についてルクレールは語る。

「彼は時間を無駄にしないし、それは間違いなく彼の強みだ。チームに加入した初日から、彼はチームを本来あるべき場所、つまりワールドチャンピオンに戻すために全てを捧げてきた」

 レッドブルが射程圏内に入ったことで、フェラーリは目標をレース勝利からタイトルへとシフトしているが、バスール代表は長期的な夢を抱くことをすぐに否定する。

「長期的な将来のことを考え過ぎるのは間違いだ」とバスール代表は語った。

「3チームが勝利を争い、5〜6台がポールポジションを争う、非常にエキサイティングなシーズンを展開している」

「先週末のマックスのように、週末ごとに1位から6位まで変動する可能性がある。戦略的に言えば、シーズンの終わりを考えるのは間違いだ」

「次のレースのカナダに向けて開発に集中し、持てる力を最大限に発揮して良い仕事をする必要がある。最終的にどうなるか見てみよう」

モナコGPでの勝利は「正しい方向に突き進んでいるという事実確認」

Erik Junius


 サインツJr.のオーストラリアGPでの勝利に続き、ルクレールはモナコGPで40戦連続未勝利という不名誉な記録を乗り越えた。オーストラリアは、フェルスタッペンがトラブルに見舞われるフェラーリにとっては追い風という状況だったが、モナコでの勝利はそれ以上に大きな自信となった。しかし、フェラーリの今季2勝目が重要な起爆剤になったという訳ではない。

「チームにとっては、自分たちが正しい方向に突き進んでいるという事実確認でもあり、みんなに自信を与えている」とバスール代表は言う。

「誇りに思う必要があるのかどうかは分からない。しかし少なくともチームの自信や雰囲気、リスクを冒す能力を感じることができるのは良いことだ」

「シャルルの自信にも繋がると思う。何年もモナコでの優勝を待ち望んでいたし、1年半も勝利から遠ざかっていたからね」

 またバスール代表は、来年はルイス・ハミルトン(現メルセデス)にシートを譲らなければならないにも関わらず、好調さを見せるサインツJr.への称賛も惜しまなかった。

「彼は2月にマシンを発表した時と全く同じマインドセットを持っていると思う」とバスール代表は言う。

「2月の最初の反応は『よしフレッド、厳しい決断だけど、シーズン最終ラップの最終ラップまでプッシュしよう』というモノだった」

「彼は本当にプロフェッショナルで、全力を尽くし、素晴らしい仕事をしている。2024年末までこの状態が続くと確信している。そのアプローチは非常にプロフェッショナルで、献身的だ。カルロスには本当に満足している」

 なおバスール代表は、モナコGPでの勝利を受けてマラネロで行なったスピーチは、他との違いを生む原動力となる全てのスタッフと部門を奮い立たせるべく、メディアに語ったのと同じような内容を話したと明かした。

「私は彼らに、メンバーのひとりひとりがパフォーマンスの差別化要因だと話した」とバスール代表は語った。

「社内の誰もが役割を担っていて、空力主任やチーフエンジニアだけの問題ではない。生産スピードや品質の向上という点で、パフォーマンスというのは全員から生まれるモノだ」

「私は彼らに、結果が芳しくない時の責任の所在も彼らだが、勝っているときの結果も彼らのモノだと言った。誰のモノでもない、彼らのトロフィーなのだ」

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出典: https://jp.motorsport.com/f1/news/ferrari-is-back-but-dont-tell-vasseur-if-you-think-you-are-good-you-are-dead/10618197/
この記事を書いた人 Filip Cleeren

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