
F1日本GPのFP2は、雨に見舞われ実に微妙なコンディションに。予選・決勝が晴れ予報となっていることや、雨用のタイヤを温存しようという思惑もあり、各車はあまり積極的に走行を行なわなかった。
そのため、各チームはFP3で予選に向けた準備だけでなく、ロングランにも取り組んだ。
最初のチェック走行が終わると、ほとんどのチームが燃料を多めに積んで、ドライバーをロングランに送り出した。摩耗が激しく、タイヤマネジメントが難しい鈴鹿で、どんな走りができるのかチェックを行なったのだ。
今季のトップランナーであるレッドブルとフェラーリは、同じような走行プランを立てており、決勝レースに向けた勢力図を予想しやすい状況となった。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、FP1でシャルル・ルクレール(フェラーリ)のペースを「少し苛立たしい」と警戒していたが、FP3のアベレージタイムを見る限り、フェラーリは今回もレッドブルを悩ませるようなペースを持っているようだ。
決勝はフェラーリ速い? レッドブルが警戒するミディアムタイヤのロングラン

このグラフはFP3でミディアムタイヤでロングランをしたマシンのラップタイムを並べたモノ。上に行けば行くほどペースが速く、逆に下に行くほどペースが遅いということを示している。
赤い実線で示されているルクレールはミディアムタイヤで13周のスティントを平均1分36秒204で走っている。赤い点線のカルロス・サインツJr.も同等のペースであることが分かる。
レッドブルのマックス・フェルスタッペン(紺の実線)はアンダーステアを訴えていたため、セルジオ・ペレス(紺の点線)のペースをルクレールと比べると、10周のスティントで0.482秒遅いペースだったのだ。
各車の燃料搭載量とエンジンモードが分からず、チームの勢力図をどこまで反映しているかは不透明だが、レッドブルが警戒するに足るペースをフェラーリが持っているのは間違いなさそうだ。
メルセデスはこの2チームとはかなり走行プランが違っていたようだ。FP3ではラッセルが14周を走り、1分35秒301の平均ペース。フェラーリ勢をさらに上回る速さを見せたが、これまでのフリー走行や予選での速さを見るに、このロングランでは燃料搭載量がレッドブルやフェラーリと大きく違っていたと見る方が妥当ではないだろうか。
ソフトタイヤはデグラデーションが激しい傾向

ソフトタイヤを使ったロングランも比較してみよう。メルセデスのルイス・ハミルトン(若草色実線)はソフトタイヤで走行。アベレージは1分35秒985だったが、スティント序盤の1分34秒台後半から終盤には1分37秒台前半までペースダウンしていた。
マクラーレンはオスカー・ピアストリ(オレンジ実線)がソフトタイヤでロングラン。アベレージは1分36秒975と遅かったが、ペースの落ち込みは少なかった。なお、ランド・ノリスはロングランを行なわなかった。
RBの角田裕毅、ダニエル・リカルドは1分34秒台から35秒のところで走行したが、5周ほどと短い走行に留まった。
ハードタイヤでロングランしたのはアストンマーティンのみ

アストンマーティンは、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールのふたりにハードタイヤを履かせて周回を重ね、アロンソは11周で1分35秒692のアベレージを記録している。タイヤのデグラデーションがほとんどないこともグラフから確認できるだろう。
今回のハードタイヤはC1コンパウンドで、昨年秋の日本GPで上位チームのほとんどがレースで2回使用したタイヤだ。ただフェルスタッペンは例外で、2度ミディアムタイヤを使い、ノリスに19秒差をつけて勝利している。
FP3は走行プランがチームによって異なったため、各車のペースから見えてくるロングラン・パフォーマンスは複雑なものとなっている。
しかしこのFP3のデータや今週末についてのピレリの発言を踏まえると、日曜日の決勝レースは、2023年と比べて、レース戦略にばらつきが生じる可能性が高いと見ていいかもしれない。