
22歳とは思えぬ落ち着いた雰囲気に、フランス語訛りの強い英語——。今季PONOS RACINGからスーパーGTにフル参戦することになったリルー・ワドゥーは、シリーズにとっても久々となるフル参戦女性ドライバーだ。
ワドゥーは、15歳からレースを始めると、ツーリングカーの世界でめきめきと頭角を現し、21歳となった2022年にはリシャール・ミル・レーシングのWEC(世界耐久選手権)LMP2クラスのドライバーに抜擢された。そして昨年は女性として初めてフェラーリのファクトリードライバーに選出されると、WECではリシャール・ミル・AFコルセからLM-GTE Amクラスに参戦してスパでクラス優勝。数多の女性ドライバーの中でも突出した実績を残している。
そんなワドゥーは今季、アメリカのIMSAでLMP2クラスに参戦する傍ら、日本ではベテランのケイ・コッツォリーノと共にスーパーGT初投入となるフェラーリ296 GT3をドライブすることになる。彼女は既にWEC等で何度か日本を訪れているが、その印象を次のように語った。
「ヨーロッパ、例えばフランスとは全然違いますね。東京は大きな街でなんでもあって、パリが小さく見えてしまうくらい! それに日本の人たちは“ノーマル”で礼儀正しくて、良い人たちです」
「今回(富士公式テスト)は私にとって観客の入る初めてのスーパーGTイベントでしたが、たくさんの人たちが色んなマシンを応援しているのがとても良いですね。これからも色んな発見がありそうで楽しみです」
スーパーGTでは初登場となる296 GT3については「1年間開発してきて、とても力強いマシンになってきています。特にコックピットの中では、全く疲れることなく、楽に何でもできるというのが良いところ。誰にとっても走らせやすくて全体的に良いマシンなので、今年は良い結果が残せると思います」と評するワドゥー。富士テスト初日はあいにくの雨となり、ワドゥーはアクアプレーニングでクラッシュしてしまったが、幸い本人は無事で、翌日には届いた新車で快調に周回を重ねていた。
そんなワドゥーに、今後数年間、そしてキャリア全体の目標は何かと尋ねた。すると彼女は耐久レースの世界で結果を残したいとの思いを明かし、フェラーリのハイパーカードライバーになることが夢だと語った。
「まずは、フェラーリドライバーとして生き残ることですよね(笑)。とても良い仕事だと感じていますし、気に入っています」
「今年に関しては、表彰台に乗って、できるならばチャンピオン争いがしたいと思っていますけど、どうなるでしょうね。IMSAのLMP2に関しても同じで、今年は表彰台を目指したいです。その先の夢は、フェラーリでハイパーカーに乗ることです」
レース界ではフォーミュラカテゴリーでのステップアップを目指す女性ドライバーも多く、最近ではWシリーズやF1アカデミーといった女性によるシングルシーターカテゴリーが行なわれている。外国人ドライバーという点で言えば、日本でもタチアナ・カルデロンがスーパーフォーミュラにやってきてシーズンを戦ったりしたが、ワドゥーはシングルシーターでのレース経験はなし。現状あまり関心も高くないようだ。
「私は耐久レースに集中していますから」とワドゥー。
「それに、私がレースを始めたのはかなり遅くて、その時にはもう15歳になっていました。シングルシーターをやるには遅すぎることも分かっています。正直なところ、こんなに短いキャリアでファクトリードライバーになれたこと自体が幸運だと思っています。私は今の人生が楽しいですし、それに尽きます」