
12月6日〜8日、鈴鹿サーキットでスーパーフォーミュラの合同テスト兼ルーキードライバーテストが実施され、レギュラー、新顔合わせて総勢32名が参加した。その中には、ちょうど4年前に同じく鈴鹿の地で夢を追いかけ、しのぎを削った4人のドライバーが顔を合わせていた。
2019年11月27日、鈴鹿サーキットでは鈴鹿サーキット・レーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F/現在はホンダ・レーシングスクール鈴鹿に改称)のスカラシップ最終選考会が行なわれていた。そこに参加したのは、岩佐歩夢、木村偉織、小出峻、大草りきの4人。最終的にスカラシップを勝ち取ったのは岩佐で、そこからフランスF4、FIA F3、FIA F2とステップアップしていき、今や次期F1ドライバー候補の筆頭と呼ばれているのは周知の通りだ。
そんな岩佐は2024年からスーパーフォーミュラに参戦することが決定しており、TEAM MUGENから今回の鈴鹿テストに参加した。そして木村と小出はB-Max Racing Team、大草はTCS NAKAJIMA RACINGからこのテストに参加。テストとはいえ、SRSの“2019年組”が国内トップフォーミュラの舞台に揃ったのであった。
「友人としても、全員と仲が良いですし、人間性もよく分かってもいます。友人でもありライバルでもある彼らと今回テストに参加できるということで、個人的に燃えています」
そう語るのは、今季スーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)とスーパーGT・GT300クラスに参戦した小出。スーパーフォーミュラは初体験となったが、「今まで乗ってきたものはレーシングカーではなかったんじゃないかと思うくらい、すごいマシンでした。そのグリップやパワーによって、モノコックから身体にビリビリ伝わってくるエネルギーがありますね」と目を輝かせていた。
最終選考に残った4人は仲が良かったと話した小出だが、スクール生時代の裏話として「この4人が仲良過ぎて、講師の人から『仲良くし過ぎだ』と怒られたくらいでした」と明かした。大草からも同じエピソードが飛び出し、「『お前らライバルなんだろ、そんなに仲良くていいのか?』みたいに言われるくらいでした。みんなでカラオケに行ったりご飯に行ったり、サーキット以外の思い出の方が多いかもしれません」とのこと。一方で木村にSRSの同期が揃っていることについて話題を向けると「全く考えていませんでした。今言われて『あ、そうなんだ』という感じで……(笑)」と苦笑する。この辺りはキャラクターの違いか。
もちろん仲が良いとは言えど、スクール時代からライバルとして切磋琢磨してきた4人。岩佐はF2で結果を残し、F1まであと一歩というところまで迫っている。他の3人は苦労人という印象も強いが、木村は今季のSFライツ王者となり、SFへのステップアップも期待される存在。2022年のGT300でタイトルまであと一歩に迫った大草も、近年の活躍からGT500クラスへのステップアップの噂が挙がるほどで、小出もSFライツとGT300で共に王座戦線に食い込むなど、最高峰カテゴリーのすぐ下で存在感を見せている。
4人はスクール卒業後に歩んだ道こそ異なれど、4年の歳月を経て全員がスーパーフォーミュラのテストに参加できるほどの実績を残したということだ。2019年のSRS-Fは非常にレベルが高かったと言われていたという話は、本人たちからも口々に聞こえてくる。
大草は、SFテストの舞台に4人が揃ったことは感慨深いと感じているという。
「僕はメーカー系の枠に入れなかった身なので、悔しくて負けたくないという思いでいましたが、みんなでスクールを終わった後に『いつかみんなでSFを走れたらいいね』という話をしていたので感慨深いです」
「それぞれの方向は違っていても、こうやって何年か経って一緒に乗れたということは、すごく嬉しいですね」
一方の小出は、トップカテゴリーへと羽ばたこうとしている“戦友”の姿を見て悔しさを隠していない。
「僕としては悔しいですよ」
「自分としては、他を見たら自分より活躍しているように見えるので、彼らに負けたくないという一心ですね」
近年では、F1ドライバーの角田裕毅、SF&GT500で活躍する大湯都史樹と笹原右京、そしてSFライツチャンピオンでGT300に参戦中の名取鉄平がスカラシップを争った2016年のSRS-Fが最も“当たり年”と言えるが、近い将来に『華の2019年組』と言われる日も遠くないだろう。
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