
2009年にF1世界チャンピオンに輝いたジェンソン・バトン。F1引退後は日本のスーパーGTや世界耐久選手権(WEC)、NASCARカップシリーズなどに参戦してきた。
そんなバトンが2024年に向けて、WECやIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦することになるかもしれない。実際、彼は「いくつかの選択肢がある」と明かした。
その選択肢のひとつだと言われているのが、WECハイパーカークラスにハーツJOTAが2台目のポルシェ963を投入し、バトンとセバスチャン・ベッテル、ロバート・クビサという豪華トリオで参戦するというモノだ。
バトンはこの週末、JDCミラー・モータースポーツの963を駆り、マイク・ロッケンフェラー、ティへメン・バン・デル・ヘルムと共にロードアトランタで開催されるIMSA最終戦プチ・ル・マンでIMSA GTPデビューを果たす。
バトンのIMSA参戦は、共にガレージ56プロジェクトでNASCARをル・マンで走らせたロッケンフェラーと、IMSAのジョン・ドゥーナン代表との話し合いによって実現したモノ。彼は現時点でJDCでの走行は今回だけだと認めており、1戦限りの挑戦となる。
しかし963でのバトンのドライブは来季に向けた“足慣らし”だとも言われている。
「正直わからないよ。IMSAにフル参戦してエンデューロも走る選択肢がいくつかあるし、WECに参戦する選択肢もいくつかある」とバトンは今後について語った。
「まずはこの週末のレースを楽しめるかどうか確認する必要がある。妻からは承諾を得ているし、今後も得られると思う……それも重要なことだからね!」
バトンは家族のために十分な時間を設けたいと考える一方で、2024年にはもっとレース出場数を増やしたいと語った。
「僕にはふたりの子どもがいるし、家族ともあまり離れたくないから、人生においてこれまでと全く異なる段階にいるんだ」とバトンは言う。
「でもレースをしている時の方が良い父親でいられると思うし、妻も同じことを言ってくれている」
「来年はレースをするつもりで、後はどこでどれくらいやるかだね」
またバトンとしては、今回のプチ・ル・マンが2018年にSMPレーシングからLMP1で出場して以来のプロトタイプマシンでのドライブとなった。
そのため、この週末はまず963に慣れることから始まった。
「問題は、今年走らせたのがNASCARカップカーとル・マンのガレージ56だけだったということだ」とバトンは言う。
「ステアリングを大きく動かすのは、ハイダウンフォースマシンではできない。横方向の荷重がかかるとコントロールを失ってしまうからね」
「このマシンは信じられないほど正確でなくてはならないが、ドライバーからはポジティブなこともネガティブなことも聞こえてきていたから、ちょっと懐疑的だった。でも1日運転してみると、これはダウンフォースを備えたレーシングカーそのものだった」
「(ドライバーによっては)気に入らないモノもあれば、気に入るモノもあると思う。このマシンはメカニカルグリップがないから、低速で走るとロックさせてしまうんだ」
「ダウンフォースを効かせるためにクルマ(の車高)をできるだけ低くしていて、常にそのことについて作業を行なっている。車高を上げれば足回りがソフトになって、低速域では飛ぶように速くなるが、高速域では役立たずになる」
「ダウンフォースのあるレーシングカーなら何でも同じだ。それは良いことなんだ。やるべきことが僕には分かるからね!」
なお、963はLMDh規定で作られたハイブリッドマシン。バトンはこのシステムについても慣れが必要だったが、これまで問題を感じたことはないという。
「ハイブリッドが搭載されていることさえ分からないほどで、期待通りにいかなかった瞬間はないよ。F1で走っていた時に小さなレバーを使っていたところからは全く違うね」とバトンは言う。
「回生システムによってブレーキングでプッシュされるような瞬間もないし、とても安定しているね」
「この手のクルマを走らせるのに慣れる上でやらなきゃいけないことは沢山あるし、スイッチ操作が必要だ。僕としては、初めて乗った時に切り替えなきゃいけない操作系が沢山ありすぎたね!」
「みんなには『切り替えることで僕に一番効果のあるシンプルなモノだけ教えてくれ』と言ったんだ。細かいことは今の僕に必要ない。レースの中で見つけていくよ」
「でもドライバーが設定を変更できることは沢山あって、ドライバーのマニュアルは58〜60ページもある。マシンをドライブしたことがないのに、それを学ぶのはとても難しいことなんだ!」
「だけどそれは、色々とやりようがあるということだし、努力して変化をもたらすことができるというのはエキサイティングなことなんだ」