
中国人初のF1ドライバーとして、2022年にアルファロメオからF1デビューを果たした周冠宇。ここまでの2シーズン合計で10ポイントを獲得し、来季の契約も掴み取った。
周曰く、中国でのモータースポーツの歴史は、F1中国GPが初めて開催された2004年に始まったようなモノだという。それから約20年をかけ、ようやく初の中国人F1ドライバーが誕生した。
まだF1で優勝するドライバーを輩出できていないとはいえ、中国の隣国である日本は、1976年にF1を初めて開催し、多くのメーカー、ドライバーがこれまでF1に挑んできた。そういう意味では、アジアの中では最も長く深いF1の歴史を持っている国だと言えるだろう。
中国から見て日本のモータースポーツはどう見えているのか? そう周に尋ねると、彼は次のように語った。
「中国から来た僕にとって、日本は間違いなくモータースポーツの文化が長く根付いていて、モータースポーツに対する情熱が強い国だと思う」
そう周は言う。
「中国では、2004年に初めてF1が行なわれたんだけど、当時は誰もF1がどんなレースなのか理解していなかった。でもこの20年でモータースポーツが理解されるようになり、それに憧れる子どもたちが増えてきたんだ」
「でも日本ではずっと前からF1ドライバーが誕生しているし、F1の歴史の中で最も成功したエンジンサプライヤーのひとつでもあるホンダもある。そういうのは、本当に励みになるんだ」
「ホンダには、フォーミュラ・ドリーム・プロジェクトのような育成プログラムがあり、F2やF1にステップアップしていくルートがある。中国にはそういうアカデミーもないし、カートやF4、F3への参加をサポートするようなプロジェクトはないんだ。ちょっと羨ましいと思う」
「それに日本からは多くのF1ドライバーが誕生している。そういう憧れの存在とも言える選手がいるということは、モータースポーツに興味を持ってもらうということにつながるから、素晴らしいことだと思う」
周は、中国でF1を目指すには、自分で切り開いていかなければいけないと明かす。
「中国には、モータースポーツを目指す人たちに向けた教育プログラムのようなモノは存在しないんだ」
「モータースポーツに興味がある人は、中国で始めて、ヨーロッパに行かなければいけない場合がある。彼らはF1チームや自動車メーカー、エンジニアリング関係の学校で学ぶんだ」
「中国には、モータースポーツに関連するアカデミーはない。だから自分自身で道を切り開くしかないのだ。エンジンメーカーやシャシーサプライヤーなど、F1に関わっている企業は中国には存在しないからね」
ただ周がF1にたどり着いたことで、中国におけるモータースポーツへの関心が高まるのは必至。周本人も、F1で中国人ドライバーが走ることが、中国におけるモータースポーツの未来に大切だと考えている。
「僕自身にとっても、F1に参戦するのは重要なことなんだ。そしてもちろん、中国人初のF1ドライバーが誕生することは、中国に大きな影響を与えると思う」
そう周は言う。
「先ほども言ったように、中国のモータースポーツの歴史が始まったのは、20年前だから」
「自分がF1にデビューしたことで、既にゴーカートを始めたがっている若い世代がたくさんいると感じている。自分がそうだったようにね」
「僕は純粋にF1を見て、ゴーカートを楽しんでいた。でも、中国人のF1ドライバーはいなかったから、憧れの存在というモノはなかった。だから多くの若いドライバーたちがヨーロッパに渡ったり、あるいは日本に来てカートを学んだりして経験を積むことは、素晴らしいことだと思う。ヨーロッパは当然だけど、日本はアジアで最もレベルが高いからね」
「多くの若い子たちがカートに夢中になっているのを目撃するのは素晴らしいことだし、その数も年々増えている。中にはリスクを負って、子どもたちに夢に挑戦させるチャンスを与えている家族もある」
「F1が初めて開催されてから20周年となる来年、中国でグランプリが開催されること、そしてそのグランプリを中国人ドライバーが走るのはとても重要なことなんだ」
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