2023.9.18

レッドブルのシンガポール大苦戦は、ふたつの技術指令に関係あり? ホーナー代表は否定「事前のシミュレーションが、適切ではなかったかもしれない」

Mark Sutton / Motorsport Images

 2023年シーズンのF1で圧倒的な強さを発揮し、開幕戦バーレーンGPから第15戦イタリアGPまで開幕14連勝(第6戦エミリア・ロマーニャGPは開催中止)という新記録を樹立したレッドブル。しかしシンガポールGPでは初日から大いに苦戦し、予選では2台揃ってQ2敗退。決勝のレースペースでは多少持ち直したものの、表彰台には手が届かず、マックス・フェルスタッペンが5位に入るのがやっとだった。

 この苦戦の理由についてチーム代表のクリスチャン・ホーナーは、今回取り締まりが強化されたフレキシブルウイングとフロアに関する技術指令とは無関係であると主張した。

 今回のグランプリに向けては、ふたつの技術指令が出されていた。ひとつ目は、TD18として通達された、フレキシブルウイングの規則を厳格化するというモノだ。これにより、各チームが稼働機構を隠したり、ノーズ周辺が動くように賢いデザインを使うことを防いだのだ。これは、オランダGPの前に各チームに配布され、シンガポールGPまでに対策を施すように指示されたのだ。

 もうひとつは、あまり知られていなかった2022年のカナダGPで投入されたTD39のアップデート版だ。この技術指令は、元々ポーパシング対策として導入されたのだ。

 この技術指令のアップデート版に記された文言では、スキッドブロックの穴の周囲のフロアの柔軟性に関する許容値を悪用することを封じた。一部のチームはこの文言を使い、スキッドプロックが過度に摩耗するというリスクを冒さずにフロアを路面に近付け、大きなダウンフォースを発生させているのではないかという疑いがあったのだ。

 まさにこのふたつの技術指令が発効するまさにそのタイミングで、レッドブルは苦戦。しかしこれらの技術指令とチームの状況には全く関係がないと、ホーナー代表は言う。

「全てはエンジニアリングに関するものだ。この仕事に、特効薬などないんだよ」

 ホーナー代表はそう語る。

「みなさんが技術指令のせいにしたいのは分かっている。しかし残念ながら、そのせいではない。我々のマシンのコンポーネントは、何ひとつ変わっていないんだからね」

 チームがこの指令に対処する必要があったかと尋ねられたホーナーは「ゼロだ。まったくないよ」と語った。

 ホーナー代表曰く、今回の予選での苦戦はセットアップに関係したものだったと語る。

「ここで接戦が予想されることは分かっていた」

 そうホーナー代表は言う。

「しかし、金曜日に我々が大きく後れを取っていたことに、少し驚いた」

「特に1周のアタックに関しては、我々のマシンは適切なウインドウ内に入っていなかった。そしてウインドウ内に入れられなければ、タイヤのフィーリングは酷いモノであり、全てがうまくいかないことになってしまう」

 ホーナー代表曰く、この問題は間違ったコンディションでシミュレーションを行なってしまった可能性があると示唆した。今年はサーキットのレイアウトが変更され、さらにかなり多くの場所で路面が再舗装された。

 またレッドブルはアップデート版のフロアを持ち込んだが、レースに向けた準備を進めるにあたって複雑な状況になり、それがパフォーマンスが低下した原因かどうか判断することができなかったという。そのため、予選前にこのフロアを取り外すことにしたようだ。

「週末の前に行なわれたシミュレーションで、正しい結論に至らなかったのではないかと思う」

 そうホーナー代表は語った。

「そのため、そこから抜け出す方法を解明する必要がある」

「我々はただ間違った状況に陥ってしまい、このマシンが持つ弱点の一部を露呈させてしまった。しかしこれは、来年に向けての非常に有益な教訓となった。今回のことによってもたらされた洞察は、うまくいけばRB20(2024年用マシン)で対処すべきことを知らせてくれるはずだ」

 レッドブルの今季マシンRB19の強みの核となる部分は、様々な速度域で空力面のベースを維持できるということであり、様々なタイプのコーナーでより安定した空力効果を発揮することができることだ。

 またレッドブルは、車高を効果的にコントロール。マシンは路面にフロア底を打ち付けることなく、路面の近くを高速で走行することができ、最大量のダウンフォースを多くの場面で発生している。一方静止しているマシンの車高は比較的高くなっている。つまりレッドブルはかなり可動域の大きなサスペンションを使っているということを示唆しており、これにより多くのメリットがもたらされるという。

 一方で凹凸の激しい路面には苦戦する傾向にあり、ベルギーGPではオー・ルージュ〜ラディオンの上り坂でアクセルを一度離しているのが確認できた。

 レッドブルのチーフエンジニアであるポール・モナハンは、シンガポールではRB19の弱点が露呈したと語る。この弱点については、チーム内では既に知られているモノだったという。

「本質的な問題がいくつかある。それは、週末の間に解決できないこともあるんだ」

 そうモナハンは語った。

「我々はいくつかのミスを犯したが、その全てが最高潮にまとまってしまい、 Q2敗退を喫したのだ」

「それらは根本的な問題ではない。週末の途中でいくつかのミスもあったが、来季に向けても修正できる問題がいくつかあった。前に進むだけだ」

出典: https://jp.motorsport.com/f1/news/red-bull-f1-flexi-floor-wing-clampdowns-had-zero-role-in-singapore-struggles/10521955/
この記事を書いた人 Jonathan Noble

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