
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは先日、自チームのドライバーのセルジオ・ペレスに対して人種差別的な発言を行なったことが批判を浴び、謝罪することになった。だが、レッドブルの対応にルイス・ハミルトン(メルセデス)は納得していない様子だ。
マルコは、ペレスがチームメイトのマックス・フェルスタッペンに匹敵するパフォーマンスを発揮できていないことについて、彼が”メキシコ出身”であることに起因していると示唆したのだ。彼のServusTVでの発言は以下の通りだ。
「ペレスが予選で問題を抱えていることは分かっている。彼は(予選順位に)バラつきがあるんだ。彼は南米出身(編注:実際は北米大陸)で、マックスやセバスチャン(ベッテル)のように完全集中している訳じゃない」
この発言は批判を浴び、マルコはServusTVの声明を通じて公式に謝罪。ペレスとも個人的に面会して謝罪しており、ペレス側はそれを受け入れると語った。
しかしF1における人種差別撲滅のために身を粉にして取り組んできたハミルトンにとしては、この一件を謝罪のみで済ますことは十分ではないと感じているようだ。
そしてハミルトンは、レッドブルが以前類似した差別的発言の問題が発生した際には厳しい措置を講じているにもかかわらず、今回のマルコの例では何の措置も講じていないことについて「興味深い」と語った。
「これは単に謝罪すればいいだけのことではないと思う。もっとやるべきことがあるはずだ」とハミルトンは言う。
「チームというのは、特にドライバーはそうだけど、それ以外のスタッフでもそういったコメントをさせた時には、大抵は解雇するか、少なくとも声明を出し、そうした発言を支持しないと言うものだ」
「だから今回のことで彼らがそういったことをしなかったのは、興味深いね」
「もちろん、僕のチームの出来事ではない。そして僕らはチームとしてそういう風には動かない。このことは僕やチーム、そしてこのスポーツとして取り組もうと動いていることを継続するのが、いかに重要かを示していると思う」
「この環境をより包括的なものとするために、僕らはまだまだするべきことが沢山ある」
■レッドブルは過去に差別的発言を行なった育成ドライバーを即解雇
こうしたハミルトンの発言の背景は、2022年に人種差別的な発言を行なったことで、即座にレッドブルから解雇された元育成ドライバーのユーリ・ヴィップスの存在もある。当時、レッドブルは「チームはいかなる人種差別も容認していない」と声明を発表していた。
それ以外にもレッドブルは昨年、SNS上で差別的発言を行なったスタッフを解雇している。同様にメルセデスも2019年に人種差別的ないじめを行なったとして、スタッフを4名解雇していたことがある。
ハミルトンは今回のヘルムート・マルコの差別的発言は、F1が推し進めているより包括的で差別をなくそうとしている活動にもダメージを与えるものだと厳しく非難している。
「彼の発言は全く受け入れられないものだ」
「僕らはこのスポーツ(F1)の中には、いかなる種類の差別も存在する余地はないと主張している。彼のような立場や、指導的なポジションにある人がこうした発言をするのは、前進していく上で良いことではないよ」
「だから、今回のことは第一に『まだやるべきことが残っている』というのを浮き彫りにしたと思う。こうした事態に立ち向かおうとしている人は、水面下にもたくさんいるんだ」
「でもトップに立つ人達を動かすのは大変だし、そのトップの人がそういった(差別的な)考えをしていると、それだけで進歩は止まってしまうんだ」
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