
時代は変わり、 “ペイドライバー”をF1チームが起用するということはなくなったとチーム代表たちは考えている。
かつては多額の私財を持つドライバーや大手スポンサーの支援を受けるドライバーが、資金にあえぐ下位グリッドのチームのレースシートを事実上購入する形でF1に参戦するということが珍しくなかった。
しかし現在は、他カテゴリーで十分な成績を残さなければ、F1参戦に必要なFIAスーパーライセンスを取得できない。F1自体も好景気に沸いていることから、資金を持ち込む必要も少なくなっている。
ウイリアムズF1のチーム代表を務めるジェームス・ボウルズは、F1カレンダーや予算制限、フリー走行が1回しかないスプリントフォーマットの導入によってルーキードライバーの起用が難しくなっている現状は“再考”の余地があるとする一方で、F1で才能よりも資金力が優先されることがなくなりつつあると語っている。
「コンストラクターズランキングで、チーム間のギャップは1000分の1秒になることもある」とボウルズは言う。
「だから実力主義で最高のパフォーマンスを発揮するドライバーをマシンに乗せたいんだ」
「これは単に収益を上げるために数百万ドルを持ち込むという話ではないんだ」
「その数百万ドルは、コンストラクターズランキングで直近のライバルを一歩出し抜くことで得られる。これはスポーツにおいて、ポジティブな変化だと思う」
またボウルズは、資金力に乏しいドライバーたちにF1へのチャンスを与えるため、育成プログラムに投資を行なうことで、チームはF1がペイドライバーモデルから脱却する手助けをしてきたと考えている。
「現在我々を含め、F1チームがカートのレベルまで投資を行ない、ドライバーに報酬を支払っている」
「しかし重要なのは、実力主義を形成するためにチームからジュニアレベルまで投資が行なわれているということだ。そうすることで、我々のところにたどり着く頃には経験豊富なドライバーになっている」
「だから、ルーキードライバーがダメだという訳ではなく、想像の域は出ないけど、数百万ドルを受け取って誰かをマシンに乗せるというコンセプトは最近の我々の在り方にはそぐわないと思う。そうでなければ後退することになる」
そしてF1王者のセバスチャン・ベッテルやマックス・フェルスタッペンを輩出してきたアルファタウリのフランツ・トスト代表は、ペイドライバーにパフォーマンスを求めることはできないと考えている。
「ペイドライバーはいない」とトスト代表は言う。
「まず、ほとんどの場合、ペイドライバーは最速のドライバーではない。FIAはスーパーライセンスでこれを止めたんだ」
なお2022年シーズンに先立ち、タイトルスポンサーのウラルカリとその御曹司ニキータ・マゼピンとの関係を経ったハースのギュンター・シュタイナー代表は次のように語っている。
「昔は財政的に安定していないチームがあった」と彼は言う。
「今はF1がいい状態にある。10チームがとても安定しているから、ペイドライバーに頼る必要はない」
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