2023.9.12

野田樹潤、ユーロフォーミュラ・オープン後半戦の参戦を断念。突然の決断の裏に何が……?

Euroformula Open

 14歳から海外のシングルシーター選手権に参戦し、17歳になった今年はユーロフォーミュラ・オープン(EFO)への挑戦を開始した“Juju”こと野田樹潤。しかしその挑戦も、志半ばで終了という形になった。

 野田はEFO参戦1年目ながら、6月にポール・リカールで行なわれた第4ラウンドではレース1で初優勝。上り調子の状態で後半戦最初のラウンドとなるレッドブルリンク戦を迎えるはずだったが、レースウィーク直前に、彼女の父で彼女の所属チームであるNODA RACINGを率いる野田英樹氏(以下:英樹氏)がFacebookを更新し、「今週のユーロフォーミュラ選手権の参戦を断念するしかない状況に追い込まれた」と報告したのだ。

 野田の突然の出走断念は大きな話題となったが、そこには様々な背景があったことが取材によって分かった。

 まず、野田を取り巻く環境の中で注目を集めたのが、いわゆる「女性ドライバー最低車両重量ルール」の存在。実は開幕ラウンドであるポルティマオのレース1前日、EFOは「ドライバーと装備品を含めて580kg」とされていた車両の最低重量について、女性ドライバーのみ560kgに修正する旨を通達した。つまり野田は、ライバルの男性ドライバーよりも20kg軽い状態でマシンを走らせることが可能となっていたのだ。

 このレギュレーション変更にあたり、シリーズ側とNODA RACINGが事前に協議をしたという事実はなかったとされ、女性ドライバーの体格的・体力的ハンデを考慮しての、シリーズ側の決定だったようだ。ただこのレギュレーションは、シーズンが進むにつれて二転三転していくこととなる。

 スパ・フランコルシャンでの第2ラウンドの直前には、通常の最低重量が580kgから586kgに引き上げ。野田のマシンもこれに合わせて追加で6kg搭載している。そしてポール・リカールでの第4ラウンドの予選直前には、今度は女性ドライバーの最低車両重量が15kg引き上げられた。野田はこの突然の変更にも対処し、同ラウンドのレース1でついに初勝利を飾ることになったが、続くレッドブルリンク戦の4日前にはまたも変更が通達され、今度は全車の最低重量が586kgに統一。男女がイーブンという、開幕前の状況に戻ることとなった。

 シーズン中のレギュレーション変更が繰り返される中で、野田は最終的に男性ドライバーと女性ドライバーの最低車両重量が同じになるタイミングでの参戦取り止めとなったが、このレギュレーション変更が欠場の理由になったのかとチームに問い合わせると、「確かにそれもゼロではないが、それ自体はさほど大きな問題ではなかった」との回答が返ってきた。

 つまり、彼らにとっては車両重量以上に大きな“問題”があり、それが今回の参戦終了に大きく関係したということになる。チームはその詳細についてのコメントを控えたが、オフィシャルに公示されているもの以外にも、NODA RACINGの参戦体制に関わるいくつかの要求がシリーズ側からあり、それがチームにとって合意しかねるものだったようだ。実は車両重量の他にも、野田に関わるレギュレーションの変更が開幕時に行なわれていたが、そこにも水面下で急遽メスが入れられたのでは……そんな話もある。

 英樹氏のFacebookには、「さすがに今回は、この短時間の中で対応して参戦するのは物理的に無理がありすぎると判断しました」というコメントの後に、「無謀な参戦を決行すると、現在選手権リーダーのZinoxシリーズ(F2000 フォーミュラ・トロフィー)を断念しなくてはならなくなってしまいます」「そして現在応援してくださっている、あるスポンサーさんを裏切る行為にも至ります」と続いていた。文脈から察するに、これもEFO側からのアンオフィシャルな要求を示唆した記述であるように思える。

 結局野田は、今シーズンのEFOに関しては残りレースも含めて参戦を断念することになるという。しかもEFO参戦に想定を上回るコストがかかったということもあり、来季以降のレース参戦計画も全くの白紙のようだ。

 なお、レッドブルリンク戦の出走を取り止めた野田は、同週末にチェコのブルノで行なわれたドレクスラーカップに急遽出場。2連勝を挙げ、同時にフォーミュラ・ルノー3.5のテスト走行の機会を得て初めてのビッグフォーミュラを経験するなど、充実した週末を過ごした。

 ブルノでの週末を終えた本人はFacebookの中で、「プラクティス、予選、決勝全て1位でした。色々ある中で理解して応援してくださるスポンサー、ファンの皆様、急遽エントリーを受付けてくれたドレクスラーカップの関係者の皆さん、素晴らしいマシンに仕上げてくれたチームに感謝の気持ちをお伝えします。F2と同等レベルのマシン、フォーミュラルノー3.5にも乗れる機会を頂けましたし、素晴らしい週末でした」と綴った。

 海外の様々なフォーミュラカー・カテゴリーに挑み、大いに話題を提供してきた野田だけに、今後の動向にも注目が集まる。

出典: https://jp.motorsport.com/euroformula-open/news/why-juju-quit-efo/10518798/
この記事を書いた人 戎井健一郎

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