
今シーズンのF1で、レッドブルは圧倒的な強さを見せており、開幕戦からイタリアGPまで14連勝。昨年の最終戦でも勝利を収めているため、シーズンをまたいで15連勝ということになった。またドライバーのマックス・フェルスタッペンもイタリアGPで10連勝と、新記録を樹立してみせた。
この勢いからすれば、レッドブルが今季全勝を達成してもおかしくはない。レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコ博士は、今では今季全てのレースに勝つことが「目標になりつつある」と認めた。
F1の70年以上に及ぶ歴史の中でシーズン全勝を達成したチームはなく、1988年のマクラーレン・ホンダが達成した16戦15勝というのが最高記録である。当時のマクラーレンはモンツァで唯一勝利を逃したが、今年のレッドブルはそれも乗り越えて見せた。
そのレッドブルはシーズン全勝を目指すことについてはこれまでは明言を避けてきたが、マルコ博士は今では全勝という”ニンジン”が目の前にぶら下がっていることを認めた。
「まず第一に、我々の目標はチャンピオンを獲得することだ」
マルコ博士はmotorsport.comのインタビューにそう語った。
「しかし、(次戦)シンガポールで勝つことができれば、全てのレースに勝てるチャンスがあると言えるだろう。もちろん、それが今の目標になりつつある」
「シーズン最初の頃には、全レース勝つなんていうことは現実的ではなかった。そんなことは今まで一度もなかったんだからね」
「(1988年の)マクラーレンはここ(モンツァ)で止まってしまった。だからマスコミの皆さんは、その呪いが我々にも襲いかかるだろうという話を組み立てた。しかしその呪いが我々を襲うことはなかった」
モンツァでは地元のフェラーリ勢が速さを見せたものの、レースペースではレッドブルの方が圧倒的に強く、フェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが2位と1-2フィニッシュを達成してみせた。
ただシンガポールGPは市街地コースが舞台であり、超低速。しかもコースとウォールの距離が近く、リタイアの危険性も十分にある。全勝を達成するためには最大の障壁であるとも言える。
しかしマルコ博士は、それでもレッドブルが勝つだろうと自信を見せる。
「どのレースでもそうだ。我々にはどこでも競争力があるマシンがあるのに、なぜシンガポールではそうではないと言えるのか?」
そうマルコ博士は語った。
「しかしフェラーリ、特に(シャルル)ルクレールはそういうコースのスペシャリストだと言わざるを得ない。もし彼らが予選で速ければ、シンガポールでのオーバーテイクは非常に難しいので、我々にとっては問題になるかもしれない」
「しかし我々がシンガポールに持ち込むパッケージは、勝利するのに十分なモノであると、私は楽観視している」
今年のレッドブルの強さについて、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、様々な部分でレベルの高い仕事ができているからだと思うと語った。
「信頼性、運、戦略、ピットストップなど、非常に多くの要素がある。ペースや天候にしてもそうだ。たくさんの要素があるんだ」
そうホーナー代表は語った。
「自分たちの戦いの中で、最高のモノを維持しなければいけない。そのことが私にとって、今年これまでの最も注目すべき成果だと思う。我々はボールを落とさなかったんだ」
「我々は信じられないほど高いレベルで仕事を続けることに成功した。こういうことは、これまでに見たことのない」
シーズン全勝が現実味を帯びつつあることが、チームの鋭さと集中力を維持する力になっていると語った。
「チーム全体にとって、我々が現在行なっていることが全て、歴史を作っていると思う」
そうホーナー代表は説明する。
「そんなチャンスは滅多にないよ」