
先日行なわれたF1イタリアGP。多くのマシンが1ストップ作戦で決勝を走り切ったが、2ストップ勢で最上位だったリアム・ローソン(アルファタウリ)のレース中のペースを分析すると、やはりこの戦略は失敗だったように見える。また、アストンマーチンのフェルナンド・アロンソはこのレースで9位に沈んだが、それでも彼らの今季の強さの一端も垣間見える。
F1イタリアGPでは、優勝したレッドブルのマックス・フェルスタッペンから、10位入賞を果たしたアルファロメオのバルテリ・ボッタスまでの10台全てが1ストップで決勝レースを走り切った。一方、2ストップを選んだローソンは11位。自身初のF1での入賞を逃す結果になった。
このローソンのペースをボッタスのそれと比較すると、2ストップを選んだが故に入賞を逃した感が強い。
ローソンとボッタスは、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)やランド・ノリス(マクラーレン)、そしてアロンソといったドライバーたちにはペースの面で大きく差をつけられていたものの、入賞の最後の1席を争う関係性だった。
■レースペース推移から見る、中団グループの勢力図

このイタリアGPの7位(アルボン)から11位(ローソン)までのレースペース推移を折れ線グラフにすると、上のような感じになる。
ボッタス(赤線)とローソン(グレー線)は、第1スティントでは前述のように他の3台とはペースが大きく異なっており、真っ向勝負するのは難しかったと思われる。しかもボッタスとローソンのペースは、走れば走るほど下落。つまり、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きかったように見える。
そんな中、ローソンは13周を走ったところでピットインし、ミディアムタイヤからハードタイヤへと履き替えている。一方でボッタスはステイアウト。するとボッタスのペースは復活し、タイヤを交換した直後のローソンとそれほど差のないペースに戻っている。
実はこれには、グラフには表現されていないもう1台のマシンが関係していた。それが、ハースのニコ・ヒュルケンベルグである。ヒュルケンベルグはペースが上がらなかったが、ローソンはこれを抜きあぐね、その後方にボッタスらも詰まっている状況となっていたのだ。ボッタスのペースが回復したのは、ヒュルケンベルグがピットインし、前が開けたからである。
さらにボッタスは、ローソンとは異なりハードタイヤを履いてスタートしており、この時点でピットストップすることは、タイヤ交換義務のことを考えれば是が非でも避けたかったはずだ。ボッタスとしては、これが逆に功を奏したと言えよう。
実はローソンは、ピットインする直前にヒュルケンベルグを追い抜いていた。その証拠に、ローソンのピットインの直前のラップタイムが跳ね上がっているのがわかる。そのままステイアウトしていれば、前を行くアロンソとの間には3秒ほどの空間があったため、フリーエアでもっといいペースで走ることができた可能性がある。しかしローソンはこの好機を捨てて、ピットインしてしまったのだ。
もしここでピットインせずステイアウトを選択し、1ストップで走り切っていれば、ローソンはF1デビュー2戦目にして入賞できていた可能性はかなり高いだろう。
さて、このグラフでもうひとつ気になることがある。それはアロンソのペースだ。
アロンソはこのレースで、前回のオランダGPのようなパフォーマンスを発揮することができず、9位に入賞するのが精一杯だった。ただ上のグラフを見ると、今回のライバルとなった1ストップのマシンとは、明らかに傾向が異なっているのが分かる。
アルボンやノリスは、周回を重ねるごとにペースが下がっていっているのがよく分かる。それはミディアムと履いた第1スティントも、ハードを履いた第2スティントも同様だ。しかしアロンソは、第1スティントでも第2スティントでも、スティントの後半にペースを上げているのがお分かりいただけるだろう。
つまりアストンマーチンは、ウイリアムズやマクラーレン、そしてアルファロメオと比べて、タイヤに優しい、もしくはタイヤを滑らせることなくしっかり使えていたという証拠であると考えられる。
ストレート成分の多いモンツァのコース特性が合わなかったため、絶対的なペースで厳しい戦いを強いられた。しかしタイヤマネジメントという面では、抜群の強みを持っていることを示すデータだと言えるだろう。
つまり、彼らのマシンの適したサーキットでは、速さを発揮しつつ抜群のタイヤマネジメントで上位を狙うことができる……テクニカルな市街地戦となる次戦シンガポールGPは彼ら向きのコースだと言われており。その活躍が注目される。