
元F1ドライバーのフェリペ・マッサは、不正の隠蔽によって2008年のF1タイトルが奪われたとして、FIAを相手に法的措置行なうことを模索している。これについてマッサは、「スポーツのための正義」を実現することが目的だとして、賠償金を得ることは重要ではないと説明している。
先週マッサは、F1のステファノ・ドメニカリCEOとFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長に「請求前書簡」を送付。法廷闘争開始に向けて、状況を一歩前進させた。
2008年シーズン、当時フェラーリのドライバーだったマッサは、わずか1ポイント差で当時マクラーレンのルイス・ハミルトンにタイトル争いで敗れたが、物議を醸したシンガポールGPの結果を除外して考慮すべきだと彼は考えているのだ。
そのシンガポールGPでは、ルノーのネルソン・ピケJr.が、チームメイトのフェルナンド・アロンソに優勝のチャンスを与えるべく故意にクラッシュしたいわゆる“クラッシュゲート”が起きた1戦だ。このレースではハミルトンが3位で6ポイントを獲得しているのに対して、マッサは13位ノーポイント。この一戦の取捨選択次第で、同年のチャンピオンシップの結果は大きく変わることになる。
今年3月、当時のF1最高責任者であったバーニー・エクレストンは『F1-insider』のインタビューで、クラッシュゲートに関して早期に事態を把握していたのにも関わらず「当時、何もしないことを決めた」と明かした。もしエクレストンが事態を把握した直後に調査が開始されていれば、シンガポールGPの結果が破棄された可能性があり、そうなればマッサがチャンピオンに輝いていたことになる。
motorsport.comが入手した書簡の中でマッサの弁護団は、マッサは“陰謀の犠牲者”であり、損害は“数千万ユーロ”に相当すると主張している。この件はイギリスの裁判所で提訴される見込みだ。
ただmotorsport.comブラジル版の取材に応じたマッサは、賠償金を得ることが主な動機ではないと語っている。
「スポーツの正義のため、僕らは正しい結果が出た時にこの件を終わらせるつもりだ」とマッサは言う。
「だからこそ、かなり大規模で強力な弁護団を集めることにしたんだ。僕はスポーツのため、(結果を)操作するのはスポーツの一部ではないと示すために行なっている」
「僕はお金のためにやっている訳じゃない。スポーツの正義のためにやっているんだ。だから、お金について書こうとしている人は完全に間違っている」
「賠償金は間違いなく存在する。例えば、現在この件について僕は大金を費やしている。でも、その(お金を得る)ためにやっている訳じゃないよ」
マッサは自身の主張に自信を持っており、シンガポールGPで起きたことが彼からF1タイトルを“奪った”ことを「理解してもらうことが重要」だと語っている。
「間違いなく、僕はかなり楽観的だ」とマッサは続ける。
「2008年のシンガポールGPで起きたこと……あのレースは(チャンピオンシップから)除外されるべきだった」
「結局、誰も罰せられなかった。起こった全てが受け入れらなかったよ」
「あのレースで何が起こったのかを、みんなが正確に知ることが重要だ。そして、その年のドライバーズランキングの結果が、あのレースのせいで操作されたことを理解してもらうことが重要だ」
なお、motorsport.comの取材に対してマッサの広報担当者は、どの裁判所でこの件が扱われるのかについて「現時点で答えるつもりはない」と返答している。