
2023年のF1前半戦の終盤にパフォーマンスを大きく引き上げたマクラーレン。しかし依然として最高速不足に悩んでいるようだ。
マクラーレンは今季、ダウンフォースと空力効率が全体的に不足したマシンで開幕を迎え、低調なパフォーマンスに苦しめられていた速。つまりダウンフォースレベルに対して、空気抵抗(ドラッグ)が大き過ぎたのだ。
その後、新任チーム代表のアンドレア・ステラがマシンパフォーマンスを改善するためのリカバリープランを展開。チームの哲学を変え、包括的なアップグレードパッケージを投入した。
その結果が現れたのは7月。マクラーレンはパフォーマンス面で大きくジャンプアップし、ランド・ノリスがイギリスGPとハンガリーGPで2度の表彰台を獲得、ルーキーのオスカー・ピアストリもベルギーGPのスプリントで2位を獲得するなど、しばしばレッドブルに次ぐ速さを見せた。
しかしその一方で、スパで行なわれたベルギーGPは、マクラーレンMCL60が未だ直線スピード不足に悩まされていることが露見したレースとなった。最高速は他より15km/hほど劣っており、ノリスは「DRSゾーンが始まる前に抜かれてしまう」と不満をこぼしていた。そしてステラ代表はレース後、マクラーレンが9月のイタリアGPに向けて“緊急の”解決策を模索すると語った。
スパでストレートスピードが劣っていた理由について尋ねられたステラ代表は、マクラーレンはマシンをBスペックに全面的に変更する必要があったため、その中で単にドラッグの問題を解決するためのリソースを確保できていなかったのだと答えた。
マクラーレンはこれまで、ウイングの角度を最適なレベルよりも少し大きくして走っていたという。もちろんウイングを寝かせた方がドラッグは少なくなり直線スピードの向上が期待できるが、そうした場合はコーナーで失うタイムがストレートで稼げるタイムよりも大きくなってしまっていたようだ。
「マシンの再設計にはシーズン当初からかなり取り組んできた」とステラ代表は言う。
「その結果、まだ取り組めていなかったのが、ドラッグレベルの低いマシンにするという点だ。そのためウイングを寝かせることで得られるものがあまりなく、我々として最も効率的なところ(ウイング角度)で走るしかなかった」
「コーナーで速く走りたいとか、ストレートは遅くてもいいとか、そういう話ではない。このマシンがリヤウイングのレベルに応じてどのように機能するかが重要なのだ。そして現時点では、今(のウイング角度)が最もパフォーマンスを発揮するんだ」
「ここは将来的に対処しようと計画しているところだ。そうでないと、マシンが必ずしもレースしやすいとは言えない状態になってしまうからね。特にドライコンディションになってオールージュを全開で走れるのであれば、(その先で)他のマシンに抜かれてしまうことになる」
ステラは夏の間に弱点に対処するための主な手段は、低ドラッグ仕様のリヤウイングを投入することだと語る。これはモンツァだけでなく、要求されるダウンフォースレベルの低いラスベガスのようなストリートサーキットでも優位に働く可能性があるという。
「我々はリヤウイングに取り組んでいるが、全体的なドラッグによる影響はマシン全体が司っている。例えばレッドブルはリヤウイングに関係なく低ドラッグなマシンを作り上げた」
「モンツァに向けては、まだ間に合っていない解決策について取り組んでいるので、より良い状態になると期待している。そしてベガスに向けてさらに(ウイングを)削る必要があるとしたら、さらに時間をかける必要がある。それも我々のToDoリストに入っているが、そこには至っていない」