
F1は2022年から新たなテクニカルレギュレーションを導入し、2023年シーズンで2年目を迎えた。レギュレーション刷新から1年半を経て、マクラーレンF1のアンドレア・ステラ代表は高評価を下す一方で、モンツァのような低ドラッグサーキットではオーバーテイクの機会が意図せず減ってしまったという結論を出している。
2022年からF1に新たなテクニカルレギュレーションが導入された理由は、マシンの後方に発生する乱気流を減らすとともに、こういった乱気流の影響を受けにくくすることで、マシン同士がより接近して走ることができるようにするためのモノ。そのため、マシン下面でより多くのダウンフォースを生み出すことを意識したグラウンドエフェクトカーが復活した。実際に後方乱気流は30%低減したと言われており、コース上でも接近戦が繰り広げられるようになった。
ただ2023年シーズンになり、各チームの空力開発が進んだことでコーナーでの追従性が再び低下したとの報告もある。このことは、F1がシーズン前半にDRS区間を短縮したことに加え、レッドブルとマックス・フェルスタッペンが敵なしの独走状態を築いていることで、レースの盛り上がりが欠けるという見方に拍車をかけている。
とはいえレギュレーション刷新の効果は減少したものの、変更は成功したというのが概ねの評価だ。
これについてマクラーレンのステラ代表は、新世代マシンではコーナリング時の追従性は確実に向上したと考えている。
「レギュレーションの限界について話すつもりはない」とステラ代表は言う。
「コーナーでの追従性が間違いなく向上したのは、昨年の段階で分かっていたはずだ」
「そのため、例えばハンガリーのようなオーバーテイクが非常に難しかったコースでも、今では接近して走ることができるようになった」
「複合コーナーや最終コーナーを抜けると先行車との距離が近くなり、DRSのおかげでアタックすることができる」
「レースのこの側面は、新世代マシンによって大いに助けられている」
ただ、ウイング類が簡素化されたためマシンの空気抵抗は低減。コーナリングでの追従性能が向上した弊害として、スリップストリーム(トウ)の有効性が顕著に低下しているとして、現行グラウンドエフェクトカーには”2面性”があるとステラは考えている。
「スパやモンツァのようなレイアウトでは、オーバーテイクするためにはトウの効果がかなり必要だが、この世代のマシンでは先行車からの“吸引力”が弱くなっていると思う」とステラは言う。
「そういったサーキットでは、オーバーテイクが少し難しくなっている」
「つまり、2面性のあることなのだ。でも前世代のマシンで可能だったことよりも、より簡単に前を行くマシンを追従することができるようになったことは歓迎したい」
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