2025.7.2

日本三名園のひとつ、岡山後楽園をめぐる!季節の輝きに満ちた江戸時代を代表する大名庭園

岡山後楽園は約三百年の歴史を持つ壮大な日本庭園。石川県金沢市の兼六園、茨城県水戸市の偕楽園とともに、日本三名園のひとつとして知られています。

岡山市内を流れる旭川を挟み、岡山城の対岸に広がるこの大名庭園は、江戸時代の姿を大きく変えることなく今に伝えられています。この庭園を歩いて、歴史ある建築群と、豊かな自然が織りなす景色を楽しんできました!

目次

アクセスは岡山駅から市電が便利

岡山後楽園へのアクセスには、路面電車が便利です。岡山駅から東山行きに乗車すると、わずか4分で最寄り駅の「城下」に到着します。ここから後楽園へは徒歩で10分ほど。

途中、旭川沿いに広がる出石町には和の雰囲気が漂い、雰囲気の良いカフェやショップも並んでいて、寄り道したくなります。

鶴見橋を渡って岡山後楽園へ
<鶴見橋を渡って岡山後楽園へ>

旭川に架かる堂々たる鶴見橋を渡ると、後楽園に到着します。

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT

藩主の居間、延養亭は後楽園の中心

鶴見橋を渡り右手へ歩くと、正門と入園券売り場があります。チケットを購入して早速中へ入ると、目に飛び込んでくるのは築山を戴いた緑の草地と大きな池。

芝生に覆われた園内。端午の節句の間近に訪れたら、池でこいのぼりがお出迎え
<芝生に覆われた園内。端午の節句の間近に訪れたら、池でこいのぼりがお出迎え>

岡山後楽園は、日本庭園には珍しく、全体が芝生で覆われているのです。庭園の面積は14.4ヘクタールで、東京ドームの約3.5倍。緑豊かな園内は、風情ある亭舎が園路や水路で結ばれており、歩きながら起伏に富んだ景色を楽しめる回遊式庭園となっています。

広大な庭園の散策は、園内西部にある「延養亭(えんようてい)」から反時計回りに歩くと、見どころを余さず満喫できます。この庭園は、2代目岡山藩主・池田綱政によって、江戸時代初期に造営されたもの。

水路も風情がある延養亭
<水路も風情がある延養亭>

後楽園の中心的建築物である延養亭は、藩主が庭園を訪れた時の居間として使われていました。座敷に座ったときに、築山である唯心山(ゆいしんざん)や、その正面に水を湛えた沢の池が一望できるように造られたそう。

水路と植栽に囲まれた堂々たる建物を見ていると、ここから庭園を眺める時間は、心休まるひとときだったのだろうな...と伝わってきます。

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT

花葉の池に立つ大立石が迫力

木橋が架かる花葉の池。シダレザクラが咲く晩春の眺め
<木橋が架かる花葉の池。シダレザクラが咲く晩春の眺め>

延養亭の南には、端正な木橋が架かる「花葉の池(かようのいけ)」が広がっています。

これぞ大名庭園...という雰囲気の巨大な大立石
<これぞ大名庭園...という雰囲気の巨大な大立石>

こちらのふちに立つ「大立石(おおだていし)」は、目を見張るほどの迫力。元禄時代初期に、巨大な花崗岩を九十数個に割って運び、もとの姿にくみ上げたものです。どっしり構えた風格のある庭石は、大名庭園にふさわしい姿。

風情ある池では、狩りをするアオサギの姿も見られましたよ。6~8月には白いハスが見頃になるそうです。

廉池軒で優雅なお茶を楽しみ、ニシキゴイを愛でる

池に面して建つ廉池軒
<池に面して建つ廉池軒>

花葉の池をぐるりと回って東へ歩いていくと、この庭園を造った2代目藩主の池田綱政が最も好んで利用したという亭舎の「廉池軒(れんちけん)」があります。

水路で繋がれた池に面して建っており、どっしりした茅葺屋根と、こけら葺き屋根の庇(ひさし)が印象的。

石橋も往時の姿を留めている
<石橋も往時の姿を留めている>

こちらは戦災を免れた建物の一つで、池に架かる切石の石橋や対岸の小島なども往時の姿を留めているそうです。築庭当時の様子を想像し、感慨を覚えます。

さざなみ茶屋
<さざなみ茶屋>

廉池軒のすぐ隣には、お茶や和菓子を楽しめる、「さざなみ茶屋」があります。綱政公が愛した景色を眺めながら、縁台に座ってゆっくりお茶を楽しめるのが魅力。

廉池軒のニシキゴイ(左)とお抹茶セット
<廉池軒のニシキゴイ(左)とお抹茶セット>

こちらの茶屋では、コイの餌も販売しています。目の前の池に餌をまくと、見事なニシキゴイがどんどん寄ってきて、周囲の来園客にも大ウケ。歴史ある建築物に、優美なコイたちが絵になります。

筆者も抹茶にきびだんごが付いてくる「お抹茶セット」(税込600円)を注文しました。美しい景色の中で、香り高い抹茶と岡山名物のきびだんごを食べて、すっかりお殿様の気分です。

唯心山からの眺めは最高

廉池軒の後は、園内を見渡せる後楽園のシンボル的存在の築山、「唯心山(ゆいしんざん)」へ向かいます。

沢の池の対岸に見える唯心山。奥には岡山城がそびえる
<沢の池の対岸に見える唯心山。奥には岡山城がそびえる>

高さ約6mのこの巨大な築山は、3代目藩主の継政公が造営したもの。広い庭園に立体感を与え、劇的な空間にしています。

頂上への階段。左手の斜面には咲き始めたツツジが.
<頂上への階段。左手の斜面には咲き始めたツツジが...>

階段で頂上へ登ると、豊かな緑と優美な曲線を描く沢の池が眼下に迫ります。雄大な眺めに「さすが大名庭園...!」と感嘆。斜面にはツツジやサツキが植えられ、季節には紅白の花でびっしり彩られるそうです。

唯心山の頂上からの眺め
<唯心山の頂上からの眺め>

この日は少し時期が早かったですが、一部で咲き始めたマゼンタピンクのツツジを見ることができました。きれいに丸く刈り込まれた緑に良く映えています。

花交の滝
<花交の滝>

唯心山の南東には「花交の池(かこうのいけ)」があり、園内をめぐってきた曲水の水が流れ込んでいます。勢いよく水が流れ落ちる「花交の滝(かこうのたき)」もあり、水音が涼しげ。


滝沿いの木々を飛び回るヤマガラ
<滝沿いの木々を飛び回るヤマガラ>

周辺には木立が緑の葉を茂らせており、多くの野鳥が見られます。この日は「ニーニーニー!」とにぎやかに鳴く、ヤマガラたちを見かけましたよ。長い時間をかけて手入れされた、水と緑が豊かな庭園は、野鳥にとっても楽園であることがわかります。

藩主の休憩所、流店で靴を脱いでひと休み

建物の中を水路が通る流店
<建物の中を水路が通る流店>

花交の池をまわり、北へ歩くと、一風変わった亭舎の「流店(りゅうてん)」があります。壁を造らず柱で支えた建物の中央に水路を通し、水の中に趣のある石を六つ置いたこの亭舎は、藩主の庭廻りの際に休憩所として使われたもの。

水を眺めながら憩いの時間を過ごせる板の間
<水を眺めながら憩いの時間を過ごせる板の間>

水路の両側にある板の間では、来園客が靴を脱いでくつろぐことができます。こちらも戦災をまぬがれた建物の一つであり、当時の藩主の気分になって、ゆっくり庭を眺められるのが魅力。水面を渡る風が心地よく、海外からの観光客も靴を脱いで、足を伸ばしながら憩いの時間を過ごしていましたよ。

井田を埋め尽くす可憐な花

流店から北を見渡すと「井田(せいでん)」が広がっています。これは、昔は園内に広く田畑が作られていたことを受けて、当時のなごりを伝えるもの。

レンゲの花が広がる井田。奥に見えるのは新殿
<レンゲの花が広がる井田。奥に見えるのは新殿>

晩春の井田には、一面にレンゲの花が咲いていました。芝生に覆われた園内で、鮮やかなピンク色のレンゲの絨毯が広がる様子は印象的。上空には何羽ものツバメが飛び交い、虫を探していました。

沢の池に並ぶ小島と岡山城を眺める

井田の西には、「沢の池(さわのいけ)」が悠々と水を湛えています。こちらは園内で一番大きい池。中の島、御野島(みのしま)、砂利島の三つの小島が並んでおり、池の広さを際立たせています。

太鼓橋で渡る中の島
<太鼓橋で渡る中の島>

井田の正面には、中の島へ渡る太鼓橋が架かっています。カーブを描く橋を渡ると、なんとも風流な気分。渡った先には情趣のある「島茶屋」が建っています。

沢の池の右には釣殿のある御野島、奥に唯心山や岡山城が見える
<沢の池の右には釣殿のある御野島、奥に唯心山や岡山城が見える>

池の北側へ回ると、釣殿のある御野島がくっきりと見えます。池に浮かぶ釣殿の屋根が、水面に映る様子は優雅そのもの。ここで代々のお殿様も涼んだのかな...などと親しみを覚えます。

沢の池の南岸から眺めた岡山城
<沢の池の南岸から眺めた岡山城>

さらにこの一帯から南へ目を向けると、御野島の奥には唯心山や岡山城の天守が一望でき、「これぞ岡山後楽園!」という眺め。細部まで整えられた、端正な庭園に見とれてしまいます。大名庭園の風格を存分に楽しめる、絶好の撮影スポットです。

格子窓からの眺めが粋な五十三次腰掛茶屋

五十三次腰掛茶屋
<五十三次腰掛茶屋>

沢の池に沿ってさらに歩くと、格子窓が美しい「五十三次腰掛茶屋(ごじゅうさんつぎこしかけぢゃや)」が建っています。ここは幕末から明治初期に建てられた休憩所。かつては東海道五十三次を描いた扁額が掲げられていたそうです。

格子窓越しに見る沢の池と岡山城
<格子窓越しに見る沢の池と岡山城>

この格子窓から見える景色が絶景。竹と木の枝を交互に組んだ格子自体がしゃれており、さらに縦に区切られた視界の先には、池越しの岡山城がそびえています。まるで浮世絵のような眺めが粋で、見入ります。

タンチョウたちにご挨拶

岡山後楽園では、江戸時代から鶴が飼育されていました。戦後途絶えていた時期もありましたが、現在では8羽のタンチョウを飼育。園内北部には鶴舎があり、白と黒の羽が優美なタンチョウたちを見ることができます。

水を飲む鶴舎のタンチョウ
<水を飲む鶴舎のタンチョウ>

毎年秋から冬にかけては、タンチョウを園内芝生に放す「園内散策」が行われています。池と水路がめぐる芝生の上をタンチョウが歩く姿は、匠が描いた屏風絵のように優雅だろうな...想像してとうっとり。

ケージの中で長い首をしなやかに動かすタンチョウたちを見ながら、「次はぜひタンチョウが散策する時期に来よう!」と強く思いましたよ。

まとめ

日本三名園のひとつとして名高い岡山後楽園は、壮大な大名庭園です。見どころのひとつひとつを楽しめるよう、以下の点をお心に留めながら散策してみてくださいね。

  • 岡山後楽園へは、路面電車の東山行きを使うと便利です。最寄り駅「城下」への乗車時間は4分、駅から後楽園へは徒歩で約10分です
  • 岡山後楽園の面積は14.4ヘクタールと広大です。歩きやすい靴で行くことをおすすめします
  • 園内の散策は、延養亭から反時計回りに歩くと、見どころを余さず楽しめます
  • 廉池軒は築庭当時の姿を留めた貴重な亭舎。すぐ横のさざなみ茶屋では抹茶や甘味を楽しめます
  • 高さ約6mの築山である唯心山の頂上からは、広大な園内全体を見渡せます
  • 中央に水路が流れる流店では、靴を脱いで板の間でくつろげます
  • 沢の池の北岸からは、池に浮かぶ島や唯心山、岡山城の天守が一望できます
  • 鶴舎では8羽のタンチョウを見られます

それでは、歴史ある建築群と自然美を楽しむ素敵な散策を!

岡山後楽園

  • 住所:岡山市北区後楽園1-5
  • 開園時間:7:30~18:00(3月20日~9月30日)/8:00~17:00(10月1日~3月19日)
  • 休園日:なし
  • 入園料:大人500円/高校生以下 無料/シニア(65歳~) 200円
  • 公式サイト:岡山後楽園 

※2025年6月現在。最新情報は公式サイトをご確認ください

関連記事

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT

出典: https://tabicoffret.com/article/82751/
この記事を書いた人 朝茶

SHARE

FAVORITE

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT