この記事をまとめると
■軽自動車は日本における独自規格の車両だ
■輸入車のなかにも一部モデルが軽自動車として登録可能だ
■軽サイズに収まる旧車もあるが製造年時の法規で登録となるので合致しない場合もある
輸入車から軽自動車を探せ!
軽自動車という日本独自の規格がある。アメリカからは、「ジャパンの自動車マーケットに参入する際の“非関税障壁”になっている」といった指摘を受けることもあるようだが、たしかに本邦においては新車販売のおおよそ4割が軽自動車であり、日本で自動車ビジネスをする上では重要なカテゴリーであり、日本の自動車メーカーの独壇場となっている。
最近ではそうした状況に対して、中国系メーカーとしてリーズナブルなEVを投入しているBYDが、「日本専用にEV軽自動車を開発、2026年頃に市場投入」といったアナウンスをして日本市場を驚かせた。ユーザーの多くは、「ついに日本独自の軽自動車にも黒船到来だ」と色めき立っているようだ。
とはいえ、もっとも自動車ファンであれば、輸入車の軽自動車がこれまでも存在していたことはご存じだろう。
現時点で、販売されているのがケータハムの「スーパーセブン600」と「セブン170」の2台。いずれも800万円を超える価格だが、85馬力までチューンアップしたスズキの3気筒ターボエンジンを積んだ、れっきとした軽自動車だ。
スズキの軽自動車用エンジンを調達して載せていることから、商品企画として軽自動車枠に収めることを前提に開発されたモデルであることは明らかだ。それでいて、国内メーカーにおける軽自動車の最高出力自主規制である64馬力を悠々と超えているのは輸入車だからこそといえるだろう。
その意味では、BYDが日本向けに開発しているという軽EVも64馬力(47kW)の最高出力に縛られないモーターを搭載してくる可能性もありそうだ。
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偶然が生み出した軽自動車も
それはさておき、商品企画の最初から軽自動車として作っていなかったのに、結果として軽自動車として販売することができた輸入車も存在している。
まず紹介したいのは、ダイムラー(現・メルセデス・ベンツ)が正規輸入した「スマートK」だ。もともと腕時計ブランド「スウォッチ」とコラボレーションしたシティコミューターとして誕生した初代スマート・フォーツーは、名前の通り2名乗車のコンパクトカー。総排気量600cc未満の3気筒ターボをリヤに積み、後輪を駆動するというメカニズムだった。
そして、初代スマートが誕生したのと時を同じくして日本の軽自動車規格が、現在のそれに改正された。全長3.4m・全幅1.48m・全高2.0mまでボディサイズが拡大されたのだ。
初代スマートは2人乗りゆえ、全長2.5mとコンパクト。全幅が1.51mとなっている以外は軽自動車規格に収まるボディサイズだった。そうした追い風を受けて、日本向けにリヤフェンダーをナロータイプとして、軽自動車規格に収めたのが「スマートK」だ。もともとの商品企画としては欧州向けシティコミューターだったが、わずかな手直しで軽自動車規格に合致するという偶然が生み出した輸入・軽自動車といえる。
似たような経緯で、軽自動車として販売されたのが「フィアット126」だ。
1972年に生まれたフィアット126のボディサイズは全長が3mちょっと、全幅が1.4m弱といったもので、エンジン排気量は594cc、652ccとなっていた。
しかし1970年代、日本の軽自動車規格は全長3m・全幅1.3m・全高2.0m以下で、エンジン排気量は360cc以下となっていた。当然ながら誕生した当時のフィアット126は軽自動車規格をわずかに上まわっていたのだった。
ただし、軽自動車規格が改正されていくと状況は変わる。1990年には全長が3.3mまで拡大され、エンジン排気量も660cc以下となった。つまり、フィアット126は軽自動車枠に収まるモデルとなったのだ。
ただし、原則として生産時の軽自動車規格に収まっていなければ、日本で軽自動車として黄色いナンバーをつけることはできない。1970年代に生産されたフィアット126を日本にもち込んだところで、軽自動車としては認められないのだ。
つまり輸入車の場合、軽自動車として認められるかどうかは製造年と、その年代の規格が合致している必要がある。
しかしながら、イタリア本国での生産はとうに終わっていたフィアット126は、ポーランドでは2000年まで生産されていた。つまり、1990年以降に生産されたフィアット126については、日本で軽自動車として販売することができた。実際、少量ながら“軽自動車のフィアット126”として輸入された個体があったのだ。
冒頭で触れたBYDの軽EVはガチで日本市場をターゲットにして開発されているものと予想されるが、そうではない『偶然の産物』としての輸入軽自動車は生まれることはあるのだろうか? シティコミューター的EVへのニーズが世界中で高まっていることを思えば、軽自動車でもさまざまな輸入車を選べる時代が来るかもしれない。
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