この記事をまとめると
■ガソリンスタンドの屋根「キャノピー」は平らで四角い形が主流
■平坦な構造はコスト効率と設計のしやすさが理由で選ばれていた
■豪雪地帯ではヒーター設置など環境対応も考慮されている
ガソリンスタンドを眺めていると生まれる気づき
ガソリン車を利用していれば必ず給油は必要です。その場合はガソリンスタンドのお世話になることになります。ガソリンスタンドの敷地内には、給油機のほかにもトイレを含む事務棟や洗車機、整備施設などがありますが、ドライバーならご存じのように、ガソリンは激しく燃焼するため、危険物に分類される扱いの規制が厳しい液体です。
ガソリンは、細かくは第4種の引火性液体で、「第一石油類」、軽油は「第二石油類」に指定されています。そのため、それを扱うための設備についてはかなり細かく基準や規制が設けられています。そういわれてガソリンスタンドの姿を思い浮かべると、その屋根がどれも平らでシンプルなものだということに気づきませんか?
ここではそのガソリンスタンドの屋根について、ちょっと掘り下げていきましょう。
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ガソリンスタンドの屋根についての決まりは?
実際に「ガソリンスタンド 屋根」で画像検索すると、一部を除いてそのほとんどが四角く平らな構造のものが並びます。ごく稀に円形のものやアーチ状のものなど、四角く平らなではないものもあることから、形状に関してはある程度自由が認められていることがわかりますが、なぜその多くは四角く平らなのでしょうか?
ガソリンスタンドの屋根は、公式には「キャノピー」と呼ばれています。建築用語で「キャノピー」とは、「天蓋」を意味するようです。英語で「庇」を意味する「canopy」という言葉がもととなっています。スタジアムや病院、空港などの大型の施設で見られる広めの庇もキャノピーと呼ばれているようです。住宅などの屋根との違いは、周囲が壁に囲まれていないという点です。
ガソリンスタンドの設備に関する法律上の決まりは、扱う危険物が漏洩したり、引火して火災になったりした際に、その被害を最小に留めるために定められています。たとえば、隣接する施設との境の壁は耐火性を有する2m以上のものとか、4辺のうち2辺は解放することなどです。
キャノピーについては、支柱は自動車等の給油または出入りに支障のない位置であることや、給油機の周囲60cm以内の設備は耐油性を有すること、建築部材は難燃性であることなどが決められています。高さについての決まりではありませんが、吊り下げ式の給油機のホースは5mまでと決められていて、ノズルが地上60cm以上あることとなっているので、その場合は5.6m+給油機の高さが最高となるでしょう。
そうでない場合の高さの制限はありませんが、ガソリンを運搬するタンクローリーの出入りに支障がないことが最低ラインになるでしょうし、あまり高くすると、せっかくの庇の効果がなくなってしまうことや、支柱の強度が必要になるなど、メリットは少なくなるでしょう。
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なぜほとんどの屋根が四角く平らなのか?
多くのガソリンスタンドが四角く平らなキャノピーを採用している理由は、ずばり「効率がいいから」ということのようです。形状や構造の制約はないので、そこで特色を出したいなら自由な形状にすることも可能ですが、凝った構造にするほどコストや工期がかさみます。
たとえば、四角く平らなキャノピーなら500万円の費用で2週間で済むところ、アーチ型のキャノピーでは1000万円以上で1カ月を要するという例もあるようです。また、設計が容易さという面も無視できないでしょう。キャノピーの面積は総敷地の3分の1以内(屋外型の場合)と定められています。しかしその土地の形状はさまざまなので、シンプルな四角い形状なら、強度や構造の計算もカンタンです。
しかし、日本は地域ごとに天候などの環境が大きく違う国なので、さまざまな地域で同じ四角く平らなキャノピーでいいのかという疑問も湧きます。とくに雪深い地域では、雪の重さで家屋の庇やカーポートの屋根などが倒壊することもあり、ガソリンスタンドのキャノピーも例外ではないでしょう。
もちろんその点は考慮されていて、ある程度の重量に耐える構造になっていることや、雪かきが容易におこなえるようになっていたり、あるいは常に吹雪くような豪雪地帯では溶雪ヒーターが備えられているところもあるようです。
そのように、いまではほとんどのガソリンスタンドが四角く平らなキャノピーを採用していますが、なかには特色を出そうとおもしろい形状のキャノピーを備えているところもあるようです。そういう個性的なスタンドを巡るスタンプラリーのような遊びも楽しいかもしれません。
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