2024.5.2

別格ゆえに5億円! メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン スターリング・モス」の特別仕様カラーは新車時の約5倍の値段に

別格ゆえに5億円! メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン スターリング・モス」の特別仕様カラーは新車時の約5倍の値段に

往年の名レーサー、スターリング・モスの名を冠したSLRマクラーレン

先ごろRMサザビーズ欧州本社の中東およびアフリカ地域への進出が発表されたことを記念して、2024年3月8日に、アラブ首長国連邦ドバイにて初のオークションが開催されました。ドバイらしい現代のハイパーカー/スーパーカーをはじめ、クラシックカーやオートモビリアなど多彩な出品が見られた中から、今回は事前告知などでとり上げられる機会の多かったメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン スターリング・モス」を紹介します。

メルセデスSLR史上最強にして最後のモデル

メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン スターリング・モスは」、SLRマクラーレンとそのファミリーたちが栄光の歴史に幕を閉じようとしていた時期。2009年1月の北米デトロイト・ショーにてワールドプレミアに供された、世界限定75台のみのファイナルモデル。伝説の英雄スターリング・モスOBEが1955年の「ミッレ・ミリア」で勝利を収めた伝説の「300SLR」へのオマージュとして、それまでデリバリーされた一連のSLRマクラーレン一族のオーナー限定で販売された。

フロントミッドシップに搭載されるスーパーチャージャーつき5.5L V8ユニットは、高性能版「SLRマクラーレン 722エディション」と共通のチューニング。最高出力650psをマークし、0-100km/hは3.5秒。トップスピードは350km/hに達するという超ド級ハイパーカーであること自体は、ほかのSLRマクラーレンたちと大差ない。

しかし、ボディは一連のSLRファミリーとは一線を画したもので、ウインドスクリーンおよびサイドのスクリーンも省略した、いわゆる「バルケッタ」スタイルを採る。また、ボディワークやアンダー/サイドの新しい空力パッケージにカーボンファイバーを多用することで200kgの軽量化を実現。くわえて、左右のシート後方にはドライバー/パッセンジャーの頭部にあわせて隆起した「エアロダイナミックロール」が設けられるなど、モス/ジェンキンソン組が1955年のミッレ・ミリアで優勝した300SLRにいっそう近いフォルムとされた。

そして300SLRのごとく、パフォーマンスや美学、究極のドライビングの楽しさを追求するために、ベースとなるSLRマクラーレンの持ち前の快適さはほぼすべて犠牲にされたものの、視覚的なドラマが増すだけでなく、ドライビング体験の激しさも10倍にも高められたといえよう。

実際、2009年に『CAR』誌がロードテストを行った際、ジャーナリストたちはフルスロットル加速の体験を「ボーイング747の翼端に立っている」ことになぞらえ、このクルマを乗りこなせるのは「首の筋肉が耐えられる人」限定と謳ったそうだ。

SLRマクラーレン一族ではとびぬけたマーケットプライス

このほどRMサザビーズ「Dubai 2024」オークションに出品されたSLRマクラーレン スターリング・モスは、2009年12月にヨーロッパ仕様車として工場をラインオフ。いったんはルクセンブルクに新車として納車された直後に中東に移され、以後はずっと中東の現オーナーのもとにあるとのことである。

ボディペイントは「クリスタル・アンティモン・グレー」と銘打たれた特注カラー。ブラックのカーボンファイバーと「アンスラサイト(濃灰色)」のレザーによるスパルタンながらラグジュアリーなインテリアを組み合わせ、さらに「シルバーアロー300SLレッド」と名づけられた赤いトリムと差し色が、モノトーンの内外装に華やかなアクセントを効かせている。

新車以来のマイレージは、オークションのために製作された公式ウェブカタログの作成時点で9233km。この種のハイパーカーとしては比較的伸びている部類に属しながらも、エクステリア/インテリアからメカニズム系に至るまで、全体的に良好な状態を保っていると申告されていた。

また走行距離と同じ背景から、一度納車されてしまったら秘匿されがちな中東のハイパーカーの中では、これまでの車歴を通じてかなり表舞台にも登場してきた部類に属するようだが、とくに2012年のイタリア本国版ミッレ・ミリアと随走した「メルセデス・ベンツ1000ミリア」チャレンジに参加した25台のSLRマクラーレンの中の1台であることは、この個体についての注目に値するヒストリーといえるだろう。

今回のオークション出品に際しては、専用のゴーグルをはじめとする多数の純正アクセサリーが付属されているそうで、次のオーナーがこのバルケッタを存分に楽しむことができるようになっているとのことだった。

RMサザビーズ「Dubai」オークションは、舞台はドバイながら売買はすべて米ドル建て。また、この種の分かりやすくて派手なハイパーカーがコレクターズアイテムとして格別の人気を誇る中東マーケットを考慮してか、300万ドル〜350万ドルというなかなか強気のエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。

そして迎えた2024年3月8日の競売では321万1250ドル、日本円に換算すると約5億円に相当するビッグディールとなったのだ。

新車として登場した当時、2010年には日本国内に2台だけ(シルバーとブラックが1台ずつといわれる)が正規輸入され、その販売価格は1億1000万円に達したというが、為替レートはさておき今回のハンマープライスは約5倍にも相当することになった。

とはいえ、ハイパーカーとしては最もリーズナブルなモデルともいわれるスタンダードのSLRマクラーレンの相場価格の5〜8倍、SLRロードスターの相場に対しても3〜5倍にも相当する価格を決定づけている理由は、SLRファミリーの中でも「スターリング・モス」がもっともエクストリームなモデルであること、そして格別の限定モデルであることに、異論を挟む余地はないだろう。

出典: https://www.automesseweb.jp/2024/05/02/1560208
この記事を書いた人 武田公実(TAKEDA Hiromi)

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