冬の嫌われもの、静電気との付き合い方
物質は必ずプラスとマイナスの微弱な電気を帯びている。通常はプラスとマイナスが安定したバランスを保っているため、いずれかの極性の電気がまとまって流れ出すことはない。
しかし、物と物がこすれ合うと摩擦により電気のバランスが崩れて偏りができ、静電気が発生する。これを「帯電」という。帯電は衣類の素材などによって性質が異なり、プラスに偏りやすい物とマイナスに偏りやすい物がある。こすれ合うことで偏りが大きくなり、プラス同士、マイナス同士が寄り集まるようになる。冬の重ね着は、静電気発生の温床になるというわけだ。
溜まった静電気は非常に不安定で、常にプラスやマイナスの電荷がどこかに逃げたがっている。そこへクルマのボディなど電気を通しやすい金属部分に指先が触れると、バランスを取り戻そうと一気に静電気が流れ出し、その衝撃でバチッとなる。
静電気の電圧(V=ボルト)は数千から数万Vもある。家庭用のAC電源が100Vなので、電圧の高さが分かるだろう。しかし、大きいのは電圧だけであり、流れる電気の量にあたる電流(A=アンペア)はきわめて小さい。電気が流れる速度が速いぶん衝撃は大きいが、感電するほどではないのはそのためだ。
帯電予防と衝撃緩和で電撃ショックを回避。静電気除去グッズの携帯がオススメ
静電気対策としてできることには、静電気の発生を抑える「帯電予防」と、体に溜まった静電気をうまく放電させる「衝撃緩和」がある。
帯電予防で効果的なのは、静電気防止スプレーと洗濯用の柔軟剤。いずれも衣類同士の摩擦を軽減できるため、静電気の発生を抑える効果が期待できる。冬は空気が乾燥しており、完全に帯電を防ぐのは無理だが、静電気に悩まされる可能性は少なくなる。また、加湿器を使って車内の湿度を適度に保つのも有効だ。
一方、体や衣類に溜まってしまった静電気を上手に逃がすには、静電気除去グッズを使うといい。これは適度な導電性を持つ素材を使い、静電気が体から本体へと流れて外部へ放電しやすくする。体に溜まった静電気の量を減らすことで、衝撃を和らげることができるのだ。いまでは定番のキーホルダータイプに加え、両面テープやマグネットで貼り付けるシートタイプ、アクセサリーとして身に付けられるブレスレットタイプなどもある。
グッズを使わないのであれば、ボディに触れるときは指先の点接触ではなく、手のひらなど広い面でタッチすることで衝撃を緩和できる。点よりも面のほうが静電気を分散して放電できるので、衝撃を小さくできるのだ。また、ドアを開けてクルマを降りるとき、シートに座ったままボディに軽く触れ、そのまま手を離さずに降りることで帯電した静電気を逃がすこともできる。

火災事故を引き起こす恐れも……。給油前には必ず静電気除去シートにタッチ
セルフのガソリンスタンドでは、給油機に静電気除去シートが備えられている。これは表面はプラスチックだが内部は金属製で、地面に通じてアースとなり体に溜まった静電気を放電するもの。冬場に限らず、必ずタッチしてから給油しよう。
というのも、クルマの給油口からはガソリンが気化した蒸気が立ち上がっており、その近くで静電気による火花が飛ぶと火災を引き起こす恐れがあるからだ。実際、静電気が原因による火災も起きている。
なお、静電気による火花は家庭内でも重大な事故につながる。留守中にガス管の劣化でガス漏れが起こり、部屋中にガスが充満した状態で来たく。知らずにドアに触れた瞬間、火花が飛んで大爆発……。これは過去に実際に起きた事故だ。静電気は決してあなどれない存在だと、肝に銘じてほしい。
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