経年車オーナーの共通の悩みと言えばズバリ「ヘッドライトの黄ばみ」だろう。クルマのヘッドライトは紫外線や雨、飛び石や素材の経年劣化によって、徐々に黄ばみや白ボケが進行していくもの。とくに'80年代末から'00年代前半はガラス製レンズから現在のようなポリカーボネート製のレンズに変化していった言わば「過渡期」。当時のクルマは素材やトップコートの技術が現在に比べるとまだまだ不十分だったこともあり、特に黄ばみやコーティングの剥がれといったヘッドライトの劣化が目立つケースが多い。こうしたヘッドライトの経年劣化は見た目が悪くなるだけでなく、ライトの明るさが落ちて夜間走行時の視認性に大きく影響し、最悪の場合は車検で不合格となってしまう事もあるのだ。
そんな“劣化ヘッドライト問題”に効果的なのが、武蔵ホルツの「タフウレタン ヘッドライトオールインワンセット(MH11627)」だ。今回はヘッドライトが黄ばんで困っている編集部員の愛車を実際に製品を使用してピカピカに蘇らせる過程を詳しくレポートする。
ヘッドライト補修に必要なアイテムがすべて入ったオールインワンセット
メインのヘッドライト専用ウレタンクリア塗料はもちろん、サンドスポンジやマスキングテープ、マスキングシートまですべてオールインワンになった便利なセットだ。
今回使用する『タフウレタンヘッドライトオールインワン』はヘッドライトのリフレッシュに必要なおおよそすべてがワンセットになった便利なセットだ。
セットの内容は以下の通り。
セット内容
●本体「タフウレタンヘッドライト」(ヘッドライト専用2液ウレタンクリア塗料)
●サンドスポンジ#400
●サンドスポンジ#800
●サンドスポンジ#1500
●マスキングテープ
●マスキングシート
初めてDIYでヘッドライト補修を行う人でも安心して使えるよう、基本的な道具がパッケージ化されている点が魅力だ。作業の際はこれとは別に、シリコンリムーバーやマイクロファイバークロスといった用品も準備する事をオススメする。また、アルファードやフェアレディZなど、ヘッドライトが比較的大きなクルマに施工する場合は、付属のマスキングテープ・マスキングシートだと足りなくなる恐れがあるので、不安な場合は追加で購入しておくと安心して作業を進められる。特にマスキングテープはマスキングシートのバタつき防止などにも使用するので多めに準備しておくのがベターだ。
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2液ウレタン仕様の本格派‼2年耐久のタフなやつ
タフウレタンヘッドライトは、2液型のヘッドライト専用ウレタンクリア塗料で、ヘッドライトの表面に強靭な透明被膜を形成するのが特徴。その耐久性は、メーカーの社内テストで「2年以上のクリアな状態の維持」が確認されているほど。もちろん、使用環境や保管条件によって持続期間は異なるものの、市販の簡易コーティング剤とは一線を画す高いパフォーマンスを誇る。
施工はちょっと大変⁉でも仕上がりは新品レベル‼
さて、早速施工の様子をご覧いただこう。今回は特別に武蔵ホルト株式会社 マーケティング部にて、製品開発やプロモーションを行っている三木 伸朗氏に施工いただきながら製品について詳しく説明頂いた。


今回説明頂く、武蔵ホルト株式会社の三木氏。
●洗浄
「簡易的な黄ばみ落としもたくさんの種類が発売されていますが、しつこく黄ばんだヘッドライトだと十分に黄ばみ汚れを落とし切れないといったケースが多いのですが、時間を多少かけてでもしっかりと補修したいといったニーズに対応したのがこの『タフウレタンヘッドライト オールインワンセット』です。」
この製品の本体は2液性のヘッドライト専用クリアウレタン塗料だ。プロの本格的な補修にも使用される塗料で、我々一般ユーザーには少々敷居が高く感じるウレタン塗装。しかしきちんと順序を踏んで施工すれば失敗は少ないという。
「作業としてはサンドスポンジで研磨し、ウレタンクリアを拭いて仕上げるという流れになります。まずはヘッドライトの汚れを軽く落とします。これはサンドスポンジで研磨するにあたり、万一砂などが噛んでしまうとヘッドライトを傷付けてしまうので、それを防ぐためです。」
そう言いながらヘッドライトを拭き上げる三木氏。今回は硬く絞ったクロスで拭き上げたが、中性シャンプーなどで洗車をするのが確実だ。

●マスキング(1回目)
「次にマスキングをします。ここでのマスキングは研磨の際にヘッドライト周りに不用意な傷を防ぐ目的です。塗装のマスキングは別途行うので、現段階だとボンネットの中などはマスキングする必要はないでしょう。」
ボンネットを開け、ヘッドライト周辺をマスキングする。これから製品付属のサンドスポンジで研磨するにあたり、ボディの塗装面などへのキズ付きを防ぐのが主な目的だ。この際、マスキングテープがもったいないからと養生テープやクラフトテープで代用する人が居るが、絶対にNG。マスキングテープに比べ粘着力が強いそれらは劣化した塗装を剥がしてしまう恐れもあるので、しっかり専用のマスキングテープを使用するようにしよう。


●研磨
「今回使用するのは付属のこちらのサンドスポンジです。P400、P800など数字が書いてありますがこちらが番手となります。基本的に数字が小さいものが粗く、数字が大きいものが細かい仕上げ用と覚えてください。今回は400、800、1500の順に研磨してゆきます。」
バケツに組んだ水の中でサンドスポンジを揉み、水をたっぷりと含ませてから研磨を開始する三木氏。付属するサンドスポンジは、一般的なサンドペーパーに比べると耐久性もあり、曲面も本体がクッションとなる為、均一に磨くのに適しているとのことだ。バケツの水は番手を変えるごとに交換すると安心だ。


まずはセットの中では一番粗い400番から研磨を開始する。研磨を開始すると「えっ⁉こんなに黄ばんでいたの⁉」というくらい黄ばんだ水が流れ出てくるが、頻繁にスポンジをすすぎながら、この水が透明になるまで研磨してゆこう。地味で根気の必要な作業ではあるが、全ての仕上がりは下地にかかっていると言っても過言ではない。まず初めの400番に関しては、納得いくまで時間をかけて研磨する事をお勧めする。この際必要以上に力を入れる必要は無く、むしろ手数=前後する回数を増やした方が綺麗に仕上がるとの事。また、研磨の際はワックスがけのように丸く丸く研磨するのではなく、タテタテ、ヨコヨコと研磨していくと綺麗に仕上がる。

400番の研磨を十分に行ったら、バケツの水を取り替えて800番のサンドスポンジで研磨をする。
「真っ白になって驚いてしまう方も居るかもしれませんが、これは最後にウレタンクリアー塗装をするとしっかり透明になるのでご安心ください。ここでも隅々まで研磨するのが大切です。」
「400番でついた磨き傷を800番で消す・・・といったイメージです。磨きのこしが無いようにしてください。」
そう言いながらひたすら研磨してゆく三木氏。磨き初めに比べるとだいぶ黄ばみが消えて白くなっているのがわかる。この後更に仕上げの1500番で研磨して表面を滑らかにしてゆく。
1500番での研磨。黄ばみもスッキリ取れたがまだ表面は白く曇っている状態。

●マスキング(2回目)
「研磨が完了したらマスキングを外し、一度洗浄します、この際水気が残っていると後々の塗装に影響を与えてしまうので十分に乾燥させるか、エアブローなどで水気を飛ばしてあげてください。」
今回は時間の都合で硬く絞ったタオルで拭き上げたが、実際DIYで行う際はカーシャンプーを用いて洗浄するのがベター。特にスキマの汚れなどもこの際に掻き出しておくと最後のクリアコーティングの段階で汚れを閉じ込めてしまった・・・‼といったミスも起こりにくい。

さて、洗浄後しっかりと乾燥させたら再びマスキングテープを用いてマスキングをしてゆく。このマスキングは最終塗装のマスキングなので、塗料がはみ出さないよう丁寧に作業するのを心掛けよう。また、塗料は思ったよりも広く拡散するもの。拡散した塗料は「ミスト」とも呼ばれ除去が非常に厄介。ちょっと大げさかな、というくら広い範囲をマスキングするのが良いのだとか。



先程も述べたように塗料は思ったより飛散するので、広い範囲をマスキングするよう意識しよう。また、クルマだけでなく地面や周りの壁、車などにも注意が必要。集合住宅の場合は塗装の工程は施工場所を改めるなど周りへの配慮も必要だろう。
●塗料の下準備
マスキングが完了したらいよいよ塗装‼・・・と思うが、まずは塗料の準備をしよう。本製品のヘッドライト専用ウレタン塗料は2液タイプの本格的なもの。一般的なアクリルラッカー塗料が溶剤が揮発する事によって乾燥するのに対し、本製品は主剤と硬化剤を混ぜ合わせ、化学反応で硬化してゆく。ゆえに強靭でクリアな被膜を得られるということだ。まずは製品のフィルムを剥がし、缶底のネジキャップを外す。次に逆方向(ネジが切ってある方)を本体のネジに差し込み、突き当たるまで回してゆく。この工程で缶内部で主剤と硬化剤が混ざり合うという仕組みだ。
ネジを奥まできちんと差し込んだら30回程度よく振り、10分間放置する。この放置は缶内部で主剤と硬化剤が混ざり合い、反応するのが狙い。この反応待ちの時間を取りすぎると缶内部で塗料が硬化してしまい、ザラつきやダマの原因となるのできちんとタイマーなどで計測するようにしたい。3~4分毎に振って、よく撹拌するのがポイント。


塗料の反応を待っている10分間の間にもう1工程を挟む。いわゆる脱脂だ。「シリコンリムーバー」を毛羽立ちの無いクロスに吹き付け、レンズ表面を拭き取ることで油分を除去する。この工程を踏まないと見えない油分が塗装を弾いてしまって今までの苦労が台無しに・・・!といった事にもなりかねないのだ。

●塗装
さて、10分経ち塗料の反応が完了したらいよいよ塗装だ。20~30cm程度ヘッドライトから離して、並行かつ均一にスプレーしてゆく。最初の1回目は「捨て吹き」といって、全体に軽く塗料を乗せてあげる感覚で塗装するのがコツだ。
「この段階ではまだザラつきも残り、白っぽいですがこの後の工程でしっかりとツヤも出ますのでご安心ください。今回は3度塗りで仕上げます。」
ここでもヘッドライトのキワから塗り始めるのがポイントだという
「よく初心者の方は中央付近は厚塗りされているのですが、キワ付近は塗装が甘く、そこからはがれてしまう・・・といったケースをよく見聞きするので、注意してみてください。」最初の1回目は「捨て吹き」と呼ばれる、いわば下地作りの段階だ。いきなり厚塗りをすると失敗してしまうので気を付けよう。
1回目の塗装が完了した状態。まだまだ白くボヤけた印象だが、この後の工程でしっかりと透明度を得られるので安心してほしい。
5~10分ほど経過したら2度目の塗装を開始する。ここでも厚塗りは厳禁、薄めに、薄めにを意識しながら均一に塗り重ねてゆく。ここで厚塗りをしてしまうと塗装が十分に乾かないばかりか塗装タレの原因などにもなるのでじっくり慌てず作業をしよう。


いよいよラストの3回目!この3回塗りで仕上げるのが一番きれいに仕上がるとか。
「中身がまだ残っているからと塗り重ねるとタレてしまったり、缶の内部で硬化してしまうので、特に初心者の方は3回塗りまでにする事をお勧めします。3回塗りでも十分透明感・ツヤを得られますし、耐久性もございます。」

『タフウレタンヘッドライト』はヘッドライト用に成分を調整された特殊なウレタン塗料だ。通常のウレタンクリアに比べ、ポリカーボネート素材への食いつきが強く、耐久性が向上しているとの事。また内容量もヘッドライト3度塗りに丁度良い量となっている為、不用意に塗り重ねない方がキレイに仕上がるとのことだ。

●マスキングの除去
「次の工程としてはマスキングを剥がすのですが、まず10~15分程度経ちましたらヘッドライト周辺のマスキング部分を触り、表面が乾燥したか確かめます。完全に塗料が乾燥・硬化してからですとマスキングの境目が荒れてしまうので表面のみ乾燥した時点でマスキングを剥がします。」
つまり、塗装後何時間も置いてからマスキングを剥がすのはNGということ。この表面のみ乾いた状態=指触乾燥(ししょくかんそう)状態でマスキングを剥がしてゆく。



●完成
マスキングを除去したら完全乾燥(約12時間)するまでは洗車などは避け、なるべく車の運転を控えるのがベター。下地処理から仕上げまで、慌てずに1つ1つの作業を進めることで、まるで新品のヘッドライトに交換したかと思う程、透明感のある美しい仕上がりとなった。作業開始からここまでで約3時間。プロの手でもそれなりに時間がかかってしまう作業なので、時間がある時にじっくりと向き合いたいDIY作業だと言える。


それだけヘッドライトは見た目の印象を左右する部品という事だ。


まとめ
ヘッドライトは、いわば車の「目」とも言える重要なパーツ。その透明度ひとつで、車全体の印象が大きく変わるのがお分かりいただけただろう。今回は比較的ヘッドライトの劣化が軽いケースだったが、それでもかなり印象が変わったことが確認できた。(※ヘッドライト内部の劣化やポリカーボネート樹脂自体が劣化・変色・黄変している場合などは充分に効果が得られない場合があります。)
「最近クルマが古く見える」「中古で購入したクルマをキレイにしたい」と感じている方にも、オススメできる商品だ。ただし、その作業は簡易的なヘッドライトクリーナーに比べると少々手間のかかるもの。まとまった時間の取れる週末などに、せひどっしり構えて作業したい。
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